GIGAスクール端末の更新需要は、複数年に分散する見通し

「GIGAスクール端末と法人PC市場の3カ年出荷台数予測」

2024年04月17日

  • GIGA端末の更新需要は2025年度に474万台、2026年度に455万台を見込む
  • 法人PCは OSの更新需要が2025年度に集中し、1000万台超の市場規模へ
  • PC価格の上昇が続く中で自治体は価格競争原理が働くOSやメーカー選定を検討すべき
  • 同系機種の複数年供給が可能かも自治体の端末メーカー選定の要点となる

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、GIGAスクール端末と法人PC市場規模を予測し、その結果をまとめた。それによると、2024年度から2026年度にかけての今後3年間のGIGAスクール需要は、累計で1060万台となると分析した(データ1)。前回GIGAの出荷台数は、2020年度に915万台と単年度に集中したが、今回は2024年度に130万台、2025年度に474万台、2026年度に455万台程度と複数年に分散することが予想される。 

2020年度から政府が開始したGIGAスクール構想で配備された学習用端末は、累計1200万台を超える。うち小中学生向け※1は、耐用年数の関係から政府財源で2024年度以降、順次更新となっている。これに加え、パソコンの主力OSであるWindows 10の延長サポートが2025年10月に終了する予定で、2025年度は企業や政府自治体が利用するPCの大型更新需要が予想される。業界では同年度にGIGAスクール端末の更新需要が一斉に集まるのではないかと懸念されていた。
※1 1200万台のうちおよそ950万台が公立小中学校向け、その他が国公私立および高校向けである。高校での私物端末持ち込みは含まない

【データ1】GIGAスクール端末および法人PCの出荷台数予測(単位:万台)

法人PCとGIGAスクールの年間需要は2025年度に1519万台を予測

法人PC市場は、2019年度のWindows 7の延長サポート終了を理由に大型の更新需要期を迎えたが、それに匹敵する規模の需要が2025年度に発生すると予測する。現在企業や官公庁自治体で稼働する法人PCの主力OSであるWindows 10の延長サポートが終了するためである。自社向けに構築した業務用アプリの安定稼働を目的に、企業や政府自治体はパソコンOSの更新に慎重だ。サポート終了まで最新OSであるWindows11への移行を十分検証したうえ、順次OS更新を進める傾向がある。OSのみの更新は工数負担も大きく、ハードウエアの刷新と合わせて行うことが主流となっている。以上のことから2025年度に法人PC市場は2019年度以来の1000万台超となり、GIGAスクール端末と合わせて1519万台となると予測する。

 

自治体は価格競争原理が働くOSやメーカー選定を検討すべき

法人PC需要の高まりが予想されるなか、足元のパソコン価格は上昇が続いている。法人市場でのパソコンの出荷平均単価は、2019年度の8万円から2023年度第3四半期には12万5千円と4万5千円上昇した(データ2)。上昇率は50%を超える。円安の影響に加えハイブリッドワークなどでパソコンの高機能化が進んだ。GIGAスクール構想でもこれらの背景を踏まえ端末予算は4万5千円から5万5千円と20%超の増額となっているが、市場平均の上昇率を下回っている。自治体は共同調達で数量をまとめたうえ、さらにOSやメーカー間の競争原理が働く調達手法、メーカー選定を検討していくことが重要となろう。

【データ2】法人PCの出荷平均単価の推移(単位:万円) 

GIGAスクール端末は調達手法を変更し、都道府県が主体となり共同調達を実施

2024年度以降、GIGAスクール端末の更新は都道府県単位での共同調達を予定している。前回は公立小中学校の運営主体である市町村単位での調達となり、事務手続きや調達仕様策定の煩雑さ、個々の自治体運用負担の軽減などの課題が残った。 

これらを踏まえ、文部科学省は更新財源を県単位の基金として複数年運用し、基金下に市町村のデジタル教育環境整備責任者が参加する協議会の設置を求めている。デジタル庁は4月18日に協議会関係者とOS(ChromeOS、iPadOS、Windows OS)メーカーや端末機器メーカーを集め自治体ピッチを開催し、OSメーカーや端末メーカーからは共同調達仕様に基づく具体的な製品・サービスの提案が予定されている。その後、各協議会内部でのOSや端末の比較検討などを通じ、夏以降、協議会ごとの共同調達仕様が策定されていくとみられる。

需要予測にあたり、MM総研は、各種文献調査や都道府県への電話調査などを実施した。

需要期は文部科学省が2022年8月に実施した端末の更改期限と財政措置年の見通しを参照した。前回のGIGAスクール端末は出荷こそ2020年度に集中したものの(データ1)、実際の配備は複数年に分散したことがわかる(データ3)。財政措置は、2025年度に必要となる自治体が44.8%にとどまることが明らかとなっている。

 【データ3】自治体の端末更新時期に関する調査


出所:文部科学省「令和4年3月30日 端末・ソフトウェア等の整備導入に関する状況」よりMM総研作成

 

直近である2024年度の需要量は、各都道府県の予算書や予算案も参照した。都道府県ごとの2023年度補正予算、もしくは2024年度予算額を参照したうえ、補助率などを勘案し、2024年度にGIGA端末更新にかかる予算で入れ替えを実施できる台数を推定した(データ4)。これによると現時点では最大総需要量の19%程度を執行できるとみられるが、詳細の需要調査や共同調達によるコストメリット(納入時期をまとめて、1回当たりの調達数を増やしてボリュームディスカウントを狙う手法)交渉は今後本格化するとみられ、調達仕様書の作成や実際の調達には一定の時間がかかる可能性もあるとみられる。

 【データ4】都道府県のGIGAスクール端末調達基金の2024年度分予算化状況※2

※2 47都道府県のうち、2023年度補正、もしくは2024年度分として予算開示されている39都道府県を対象に金額を集計し、1台当たり金額(5万5千円/補助率3分の2)で総額を除して台数を推定。対象自治体の児童生徒数を100として構成比を算出。

 

予算額の確からしさ(概数であっても県下の自治体への聞き取りなどに基づくか)を検証するため各自治体へ電話調査を独自に実施した(データ5)。これによると調査時点(2024年2月10日より3月11日まで)で、需要調査を行っている都道府県は79%となった。自治体が見込む予算には、一定の裏付けがあると認められる半面、OS選定や仕様の取りまとめを実施する調達協議会の設置は34%にとどまっていた。協議会が立ち上がった段階で、改めて詳細な需要調査や調達候補製品の調整が行われる公算もあり、現時点の予測は一定の幅で今後修正が必要となるとも考えられる。

【データ5】都道府県の共同調達準備状

今回予測したGIGAスクール需要のうち、小中学校向けは2024年度85万台、2025年度は419万台、2026年度は365万台程度と2025年度がやや多くなるとみている。最需要期はWindows 10の更新に重なるため、配備人材の不足も懸念される。納入事業者は、今回調達で基本パッケージに含まれるMDM(モバイル・デバイス・マネジメント)ソフトウエアなどを活用し、端末の配備や運用の自働化を推進し、効率向上に努める必要があるだろう。

さらにいえば、今回のGIGAスクール端末調達は、複数年にわたることが想定される。自治体の共同調達協議会はOSや端末メーカーに対し、周辺機器の買い直しや運用の変更を極力減らせるように同系統の製品を複数年供給する計画があるか、また価格面も含め安定的に後継機種を提供する計画はあるかなどを確認したうえで端末選定をする必要があろう。

以上

 

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