独自サービス型SIM市場はサブブランドに押され微増に

国内MVNO市場調査(2023年9月末時点)

2023年12月20日

■2023年9月末の独自サービス型SIMの回線契約数は1315万回線(前年同期比2.4%増)

■インターネットイニシアティブ、オプテージの2社がシェアを拡大

■携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの比率は6.2%で微減

■2024年3月末の独自サービス型SIMの回線契約数は1305万回線と予想(前年比0.5%減)

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は国内MVNO(仮想移動体通信事業者)市場の2023年9月末時点での実績を発表した。調査結果によると、独自サービス型SIM(※1)の回線契約数は1315万回線となり、前年同期比で2.4%増となった。IoT向け用途の好調で4半期連続のプラス成長を記録(データ1)。携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの契約数比率は、前年度同期比0.1ポイント低下し6.2%となった(データ2)

2023年3月末時点での事業者シェア1位は「IIJmio」などを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)。カメラ接続・GPSトラッカーなどのIoT向けなどの法人用途で回線数を伸ばし純増となった。2位はNTTレゾナント(※2)。3位はオプテージだった(データ3)

MM総研では2024年3月末の独自サービス型SIMの回線契約数を1305万回線(前年比0.5%減)と予測する。スマートフォン向け用途では、移動体通信事業者(MNO)から流出する顧客はMNOのサブブランド、オンライン専用プランなどが受け皿になっており、MVNO市場への流出は少なくなる見込み。また、IoT向け用途においては今後急速に市場が拡大すると予想する(データ4)。

※1独自サービス型SIM=MVNOがSIMカード(契約者情報記録カード)を活用して独自の料金プランで提供する回線サービス(プリペイドは含まない)

※2 NTTレゾナントは2023年7月1日、事業再編によりNTTドコモに吸収合併されたが、本調査ではNTTレゾナントが提供していたOCNモバイルONEおよびNTTコミュニケ―ションズが提供する一部法人回線を含んでNTTレゾナント提供分として定義する

【データ1】 独自サービス型SIMの市場規模

独自サービス型SIM比率は6.2%と微減した一方、サブブランド比率は拡大

2023年9月末時点の携帯電話(3G、LTE、5G)契約数は2億1361.3万回線。独自サービス型SIMの回線契約数は携帯電話市場全体から見ると構成比6.2%で、2021年9月末以降横ばいで推移していたが、2023年9月末は0.1ポイントの微減となった(データ2)※3

同年7月にはNTTドコモが「OCNモバイルONE」を提供していたNTTレゾナントを吸収合併し、OCNモバイルONEの新規受付を停止するとともに、ドコモブランドのプランとして「irumo」の提供を開始。MNOによる囲い込みが顕著になり、MVNOへの流出が減少を続けている。

このような市場環境で個人向けSIMの回線数が伸び悩む中、IoT向けSIM市場は活況で、法人向け回線がMVNO市場の伸びをけん引している。

また、サブブランド(Y!mobile + UQ mobile)は大手キャリアのメインブランドからの移行ユーザーを効率よく獲得しており、引き続き大幅に回線数を増加させた。2023年9月末時点のサブブランドの契約比率は携帯電話(3G、LTE、5G)契約数の8.7%(前年同期比1.7ポイント増)まで拡大した。

また、大手キャリア各社のオンラインプラン(NTTドコモの「ahamo」、KDDIの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」)の契約数比率も約4%にまで拡大しており、独自サービス型SIMの対抗軸となるサービスが好調を維持している。

※3 2020年9月末より楽天モバイルを全体回線数に含め算出し直した。

【データ2】携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの契約数比率

首位のIIJはIoT向けが好調でシェアを拡大

2023年9月末時点で独自サービス型SIM市場の事業者シェア1位は「IIJmio」「BIC SIM」などを提供するIIJ。2位は「OCNモバイルONE」などを提供するNTTレゾナント。3位は「mineo」を提供するオプテージ。

シェア1位のIIJは、主にカメラ接続やGPSトラッカーなどのIoT用途の法人向けSIMが1年間で50万回線超の伸びを見せている。個人向けサービスにおいても堅調に契約数を伸ばしてしており、個人・法人ともに順調だ。

2位のNTTレゾナントは、2023年7月にNTTドコモに吸収合併されており、OCNモバイルONEは新規受付を停止した。その影響で、9月末時点のシェアは3月末に比べて微減となった。OCNモバイルONEの代替プランとしてメインブランドのドコモから「irumo」が提供されており、MVNOとしての同社のシェアは減少していくことが確実である。 

3位のオプテージは、個人向けモバイルサービス「mineo」で必要な容量を最適に選択することが可能なプラン「マイピタ」が好調だった。2023年から新しく提供を始めた広告の通信量をカウントしない「広告フリー」や夜間の通信が無制限になる「夜間フリー」など新オプションを続々と提供しており、全国規模のテレビCMも放映するなど積極的に広告展開をして契約数を伸ばした(データ3)

シェア上位事業者のサービス終了や新規受付停止などで業界構造が大きく変動している中、特に下位事業者は新規獲得のための投資はせずに既存顧客の維持に努め、縮小均衡路線をとるケースが多い。

今後、MNOからMVNOへの流出は減少する可能性がある。MNOは「マネ活」「ペイトク」といった金融サービスと融合した新たなプランの展開で囲い込みを強め、「irumo」などMNOブランドでありながら安価に利用できるサービスの提供を始めるなど、MNOはサブブランドやMVNOへの流出を抑えようとしているため、個人向けMVNO市場は厳しさを増している。

なお、2023年12月には電気通信事業法の関連省令の改正が予定されている。端末の値引き上限が4万円までに変更され、これまで端末値引き・継続値引きの規制対象事業者であったオプテージやIIJは規制対象から外れるため、値引き額の自由度が高まる。今後に控える2024年春商戦の動向に注目が集まる。

【データ3】独自サービス型SIMの事業者シェア

IoT向けSIM回線比率は今後50%を超える見込み

2024年3月末時点の独自サービス型SIM市場は1305万回線になると予測する(データ4)。IoT用途では引き続き市場が拡大する見込みであり、2025年3月末時点のIoT向け回線比率は従来型SIMを抑え、過半数の51.3%に達すると予測する。

【データ4】独自サービス型SIM市場予測


 

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