FTTHの上期純増数は41.6万件、2003年度以降で過去最低

「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2023年9月末時点)

2023年12月07日

■2023年度上期のFTTH純増数は41.6万件(前年同期比34.7万件の減少)

■NTTドコモグループ再編により、FTTHのISP別シェアはNTTドコモとして初の首位

■FTTHのサービスブランド別シェアでもNTTドコモが首位を維持

■2023年度通期のFTTH年間純増数は100万件を割り、2003年度以降では過去最低に

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年度上期(2023年4~9月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2023年9月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は3995.2万件で、上期の純増数は41.6万件(前年同期比で34.7万件の減少)となった(データ1)。半期の純増数としては2003年度以降で過去最低となった。2020年度から2021年度にかけて発生したテレワーク需要などでFTTH未利用層への普及が一気に進んだが、需要の一巡もあり2021年度下期以降、純増数の減少が続いている。

2023年度下期のFTTH市場は、ADSLユーザーからの乗り換え需要が一部あるものの、上期と同様の傾向が続き純増数は37.5万件と予測する。年間純増数としても100万件を割り、2003年度以降では過去最低になる見込み。一方でFTTH間での顧客の乗り換えは増加傾向にあり、新規顧客の獲得競争が一層激化するとみられる。高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込まれる。

【データ1】 FTTH契約数の純増数推移

※一部の数値は遡及修正している

NTT東西のシェアは徐々に低下、NURO光は拡大が続く

FTTH事業者の契約件数シェア(2023年9月末)では、NTTの光回線(フレッツ光およびコラボ光)契約数が東西合計で2363.2万件(シェア59.2%)となった(データ2)。シェアは2023年3月末の59.6%から0.4ポイント減と徐々に低下している。

事業者がNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2023年9月末の総契約数は1697.4万件でFTTH市場全体に占める割合は42.5%、NTTの光回線に占める割合は71.8%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモがシェア首位を維持した。

光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。今年に入り宮城県でエリアを拡大し、4月に広島エリアで10Gbpsサービスに対応したNURO光などの純増が貢献し、シェアは3.7%(前年同期比0.2ポイント増)を獲得。市場全体の純増数が大きく落ち込むなかで、高品質・大容量の回線を前面に打ち出した積極的な販促施策を展開している。

アルテリア・ネットワークスは、主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が継続的に進みシェア1.9%を維持した。10Gbpsをはじめとする高品質サービスの訴求で新築分譲物件への導入案件を安定的に獲得している。また、賃貸物件向けも継続的に注力している。

【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2023年9月末)

※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる

FTTHのサービスブランド別シェアはドコモ光が首位を維持

2023年9月末のサービスブランド別のFTTH契約数では、NTTドコモの「ドコモ光」が724万件で首位を維持した(データ3)。2023年7月から新プラン「ahamo光」を提供したが、微減となった。

2位のフレッツ光はコラボレーション光への転用が進み減少傾向。3位のSoftBank光はモバイルとのセット販売により純増傾向である。ビッグローブ光が契約者数を伸ばしコミュファ光を抜いて7位となった。

【データ3】FTTH契約数・サービスブランド別シェア(2023年9月末)

※auひかりには沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)が含まれる
※NURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectの件数が含まれる

FTTHのISPシェアはNTTドコモが初の首位を獲得

2023年9月末のISP事業者のFTTH契約数では、NTTドコモが792万件(シェア19.8%)で首位を獲得した。2023年7月のNTTグループの事業再編効果が大きく、NTTドコモにはOCN、ぷらら、ドコモnet、ahamo光が含まれる(データ4)。2位はソフトバンクでシェア12.8%、「NURO光」が好調なソニーネットワークコミュニケーションズのほか、ニフティも堅調に顧客を増やした。

【データ4】FTTH契約数・ISPシェア(2023年9月末)

※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

固定ブロードバンド市場全体ではNTTドコモがシェア1位を奪取

固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場においても、NTTドコモがグループ再編により、ソフトバンクを抜き首位を獲得。ソフトバンクはシェア2位となった(データ5)
*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

【データ5】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2023年9月末)


※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

FTTH市場は成長鈍化、ワイヤレスは拡大継続

固定ブロードバンド市場は緩やかに成長が続く見込みである。サービス終了予定のADSLや光化が進むCATVアクセスが減少していく一方で、FTTHやワイヤレスの市場は継続的に拡大。固定ブロードバンド市場の2023年3月末から2026年3月末までの年平均成長率は1.7%と予測する(データ6)

【データ6】固定ブロードバンド契約数の推移・予測

※2024年3月末以降は予測値。2021年~2023年の数値は一部遡及修正している
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

2023年度(2023年4月~2024年3月)のFTTH市場は79.1万件の純増を予測する。2023年度中に終了するADSLユーザーの乗り換え需要が一部あるものの、純増数としては前年度の133.1万件から54万件の減少となる見込みである。年間純増数が100万件を割るのは黎明期の2002年度以来で、2003年度以降では過去最低となる。一方でFTTH間での顧客の乗り換えは増加傾向にあり、事業者各社が純増数確保を目指して獲得競争が一層激化するとみられる。高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込まれる。中期的にはCATVインフラの光化や集合住宅の全戸一括型導入、ワイヤレスからの移行需要を中心に継続的な成長がみられ、2023年度以降の3年間の年平均成長率は1.6%と予測する。

ワイヤレス市場は、工事不要で手軽に導入できるメリットを背景に単身世帯などのニーズを取り込み、堅調に拡大。2023年度以降の3年間の年平均成長率は9.3%で、引き続き拡大が続くと予測する。ワイヤレス利用者がより安定的な通信を利用するためにFTTHへ移行する動きが継続的に見られ、ワイヤレスサービス提供事業者は引き続き5G対応のホームルーター端末の普及やエリアの拡大をはじめ、より高品質な通信サービスが求められている。


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