海外のライドシェア利用経験者の8割超が導入に賛成
「ライドシェアに関する社会受容性調査」(2023年10月)
2023年10月26日
■海外の営利型ライドシェアサービス利用経験者は導入賛成が84.1%、未経験者は35.6%
■安全性の担保や事故時の補償制度の確立が課題
■ドライバーになることを「検討したい」とした人は11.8%
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、全国の15~79歳の男女3000人を対象にWebアンケート調査を実施し、ライドシェアに関する社会受容性を調査した。ライドシェアとは自家用車のドライバーが他人を運送するサービスで、無償あるいはガソリン代など実際にかかったコストのみ払う「非営利型」や、対価として移動にかかった費用以上を払う「営利型」が挙げられる。今回は国内で議論が活発になっている「営利型」について調査している。
調査結果によると、営利型ライドシェアサービスを日本で導入することに「賛成」「どちらかといえば賛成」とした人は39.2%、「反対」「どちらかといえば反対」とした人は60.8%だった。海外で営利型ライドシェアサービスの利用経験がある人とない人で分けたところ、利用経験がない人で「賛成」「どちらかといえば賛成」とした人は35.6%となり、利用経験がある人の84.1%と大きな差があった(データ1)。
【データ1】営利型ライドシェアサービスの日本への導入賛否
安全性の担保や事故時の補償制度の確立が課題
営利型ライドシェアサービスのメリットを聞いたところ、利用経験がない人は「タクシーと比べて料金が抑えられる」(37.5%)が最も多く、「地方などの交通課題解決の一助になる」(37.4%)が僅差で続いた(データ2)。一方、利用経験がある人は「乗降車がスムーズ」(38.2%)が最も多く、「乗車前に目的地までの料金がわかる」(36.8%)が続いた。「乗降車がスムーズ」と「キャッシュレス決済が中心となりトラブルが発生しにくい」を選択した人は、利用経験がない人より利用経験がある人の方が約20ポイント高く、「乗車前に目的地までの料金がわかる」でも9ポイント高かった。
【データ2】営利型ライドシェアサービスのメリットと考えるもの(複数回答)
同様にデメリットを聞いたところ、利用経験がない人は「犯罪などに巻き込まれる可能性がある」(46.4%)が最も多く、利用経験がある人は「運転の質や安全性が担保されない」(36.8%)が最も多かった(データ3)。犯罪に巻き込まれる可能性やドライバーの質・安全性、事故発生時の制度については、利用経験の有無にかかわらず比較的多かったが、「犯罪などに巻き込まれる可能性がある」「接客の質が不安」を選択した人は、利用経験がない人より利用経験がある人の方が15ポイント以上低かった。
【データ3】営利型ライドシェアサービスのデメリットと考えるもの(複数回答)
日本で営利型ライドシェアサービスが導入された場合、ドライバー側になることを検討するかどうか聞いたところ、「検討したい」とした人は11.8%だった(データ4)。
【データ4】営利型ライドシェアサービスのドライバー側になることへの検討意思
ライドシェアの定義の整理と自動運転の取り組み加速を
岸田文雄首相は今月23日、臨時国会の所信表明演説でライドシェア導入の検討を表明した。ここ数カ月、ライドシェアの議論が活発になっているが、取り上げられているのは主に営利型ライドシェアサービスにあたる。これはライドシェアの中の1つの形態にすぎない。ライドシェア導入を議論するにあたっては、定義を今一度整理する必要があるだろう。営利型ライドシェアサービスの導入で、今ある交通課題の解決に利するところも当然出てくるが、特に解決が待たれる過疎地域などでは、すべてが解決するわけではないことを認識する必要もある。
その上で、海外の営利型ライドシェアサービス利用経験の有無で導入の賛否に大きな差が出た。利用経験者のうち、利用したサービスに「不満がある」と回答した人は約8%にとどまる。犯罪などに巻き込まれる可能性やドライバーの質・安全性、事故発生時の対応については、利用経験の有無にかかわらずデメリットとして挙げる人も比較的多かった(データ3)ことから、導入に向け、安全性を担保する制度などを整備し、サービスへの不安を払しょくさせていくことがカギとなる。
今回の調査では完全無人の自動運転タクシー・バスの導入についても受容性を調べたが、営利型ライドシェアサービスと比べて賛成の割合が高かった(参考1,2,3)。日本国内でも自動運転の実証実験が各地で実施されているものの、実装化並びに普及には程遠い。海外ではすでに実装化されている都市もあり、交通課題の解決が待ったなしの現状を踏まえれば、実装化に向けた取り組みを一段と加速させなければならない。
「地方の交通課題解決に効果的と考えるもの」についても聞いたところ、「完全無人の自動運転タクシー・バス」が「営利型ライドシェアサービス」を大きく上回り、「AIオンデマンド交通」も「営利型ライドシェアサービス」を上回った。営利型ライドシェアサービス導入ありきで議論を進めるのではなく、地方の交通課題解決を主眼とし、完全無人の自動運転タクシー・バスやAIオンデマンド交通、営利型ライドシェアサービスなどの在り方を俯瞰的に考えていくべきだろう。
【参考1】完全無人の自動運転タクシー・バスの日本への導入賛否
※四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
【参考2】完全自動運転の無人タクシー・バスのメリットと考えるもの(複数回答)
【参考3】完全自動運転の無人タクシー・バスのデメリットと考えるもの(複数回答)
■調査概要
調査対象:全国15~79歳の男女3000人
調査方法:Webアンケート
調査期間:2023年10月6~10日
■注意事項
1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析から一部または全部を抜粋したものです。2. 報道機関が引用する場合は、出典を「MM総研」と明記してください(MMは全角)。数値などは表ではなくグラフ化して掲載してください。
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。
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