インボイス制度に対応完了している事業者は3割以下

「インボイス制度への対応実態調査」(2023年6月末時点)

2023年08月21日

■適格請求書発行事業者の登録やソフトウエアの導入などを完了した事業者は26.8%
■導入ソフトウエアのベンダーシェアは弥生が1位
■免税事業者との取引方針では「消費税分の減額・取引をやめる」が2割

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、企業の経理/会計関連システムの導入決定権者1931人を対象にWebアンケート調査を実施し、2023年6月末時点のインボイス(適格請求書)制度への対応※1実態をまとめた。2023年10月1日よりインボイス制度が施行される。国税庁によると、全国でおよそ300万の課税事業者のうち「適格請求書発行事業者の登録」を済ませた事業者は256万ほどと8割を超えるという(2023年6月末時点)。「登録」事業者は増加しているものの、インボイス制度への対応は登録だけでは済まない。本調査結果によると、登録だけでなく、「ソフトウエアの導入」「帳票フォーマットの変更」などを実施し、「インボイス制度への対応は完了している」と回答した事業者は26.8%と3割以下にとどまった※2。現在「対応中」と答えた19.4%を合わせると46.2%(データ1)で、約170万事業者にあたると推計される※3。また、従業員規模別※4に対応状況をみると、企業規模が大きくなるほど対応が進んでいる結果となった(データ2)

【データ1】インボイス制度への対応状況(n=1925)

【データ1】インボイス制度への対応状況

※1. 対応とは「ソフトウエア・機器の検討・導入」「帳票フォーマットの変更」など適格請求書発行事業者の登録申請にとどまらない業務内容の更新を指す
※2.令和3年経済センサス活動調査における企業等数・従業員数をもとにウェイトバック集計を行った
※3.令和3年経済センサス活動調査における企業等数をもとに拡大推計を行った


【データ2】従業員規模別インボイス制度への対応状況

【データ2】従業員規模別インボイス制度への対応状況
※4.小規模企業:従業員20人以下の法人、中小企業(小規模企業を除く):従業員21人以上300人以下の法人、大企業:従業員301人以上の法人

 

◆導入ソフトベンダーシェアでは弥生がトップ

インボイス制度への対応を機に新規・追加・入替導入したソフトウエアベンダーのシェアでは弥生(東京都千代田区)がトップとなった。2位はオービックビジネスコンサルタント、3位はミロク情報サービスと続いた(データ3)。パッケージ版とクラウド版では、パッケージ版を新規もしくは利用継続するユーザー企業が5割以上を占めた。今後ソフトウエアを新規・追加・入替導入を予定している企業は41.8%(データ4)で、インボイス制度に対応するソフトウエアの導入は続くとみられる。

 【データ3】インボイス制度対応を機に新規・追加・入替導入したソフトウエアベンダー別シェア(n=257)
【データ3】インボイス制度対応を機に新規・追加・入替導入したソフトウエアベンダー別シェア

【対象ソフトウエア】
 ・弥生                      ・・・「弥生販売22/23」「やよいの見積・納品・請求書 23」など
 ・オービックビジネスコンサルタント・・・「OBC奉行シリーズ」「奉行クラウド」など
 ・ミロク情報サービス       ・・・「MJSかんたん!シリーズ」「かんたんクラウド会計」など
 ・マネーフォワード        ・・・「マネーフォワード クラウド請求書」など

【データ4】インボイス制度対応ソフトの導入予定(n=557)
【データ4】インボイス制度対応ソフトの導入予定

※小数点第2位を四捨五入しているため合計値が100%とならない

 

◆免税事業者との取引方針では「取引をやめる」声も

インボイス制度開始後の免税事業者との取引方針では、49.9%が「登録事業者になってもらう」としており、免税事業者にもインボイス制度への対応を求める傾向がみられた。「今までと変わらず消費税分を負担する」と回答した事業者は2割にとどまり、これまでと同様の取引方法を続けたい免税事業者には厳しい結果が浮き彫りとなった。「消費税分の取引価格の減額」を求める事業者が17.6%あったほか、「取引を一部または完全にやめる」との回答も1割近くあった(データ5)

【データ5】インボイス制度施行後の免税事業者との取引方針 (n=559、複数回答)
【データ5】インボイス制度施行後の免税事業者との取引方針

 

課題は制度理解や導入後の負担軽減

現在対応中で、施行までに対応を完了すると回答した約2割の事業者の駆け込み需要だけでなく、施行後もソフトウエアの導入に関してはインボイス対応へのニーズがしばらく続くとみられる。国はIT導入補助金にデジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)を用意するなどコスト面で援助し、インボイス制度への対応をきっかけにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めようとしている。

しかし「インボイス制度対応への課題」を、個人事業主、小規模企業、中小企業、大企業に分けて聞いたところ、個人事業主の31.7%が「どのような準備が必要かわからない」と回答したまた、どのセグメントでも「業務フローの変更による負担増」を課題とみる回答がトップ5に入っている(データ6)

各省庁、ソフトウエアベンダーにはこうした不安要素を軽減できるような、よりわかりやすい最新情報の提供、公的支援制度の活用訴求、ソフトウエアの機能追加などが求められる。2024年1月には改正電子帳簿保存法が本格施行される。国が提示する行政手続きのデジタル化を、個人事業主や企業がどのように受け止め対応していくのか、引き続き注視したい。

【データ6】従業員規模別インボイス制度対応への課題(複数回答)

【データ6】従業員規模別インボイス対応への課題01

【データ6】従業員規模別インボイス制度対応への課題02

 

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当該調査についての詳細は、市場分析レポートを販売しております
市場分析レポート「インボイス制度・改正電子帳簿保存法への対応実態調査(2023年6月時点)」

 

■調査概要
1.調査対象:経理/会計関連システム導入決定権者
2.回答件数:1931件(個人事業主:794人、法人:1137人)
3.調査方法:Webアンケート
4.調査時期:2023年6月29日~7月3日
※【データ3】【データ4】【データ5】については、令和3年経済センサス活動調査における企業等数・従業員数をもとにウェイトバック集計を行った
※本調査では、免税事業者と課税事業者との区別をせずに聴取している

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