RPA活用有無がビジネスプロセス自動化に格差を生む

「RPA国内利用動向調査 2022」(2022年9月時点)

2022年10月03日

■ RPA活用による「ビジネスプロセス全体の自動化」が加速

■ 自動化範囲を広げるためAI-OCRの導入が本格化、プロセスマイニングはお試し段階

■ RPA導入率は年商50億円以上で45%、年商50億円未満で12%

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、国内企業1,530社(年商50億円以上:1,012社、同50億円未満:518社)を対象にWebアンケート調査を実施し、2022年9月時点のRPA(Robotic Process Automation)の利用状況をまとめた。RPAは主にデスクワークなどで発生する定型作業を、ソフトウェア型のロボットが代行・自動化する技術だ。国内で利用されている主なRPA 18製品(※1)を対象に導入率推移、活用動向、今後の利用意向などを分析した。

RPA活用を進めるほど「ビジネスプロセス全体の自動化」を志向する

調査結果によると、年商50億円以上の企業ではRPAなどを活用して自動化範囲を広げる企業が増えている。RPAの活用方針を導入当初と導入後の現在(2022年9月時点)で比較すると、「ビジネスプロセス全体の自動化を目指している」との回答が大きく増加していることが明らかとなった。この傾向は導入期間が長くなるほど顕著に表れる。例えば2017年度以前に導入した企業は、導入当初の29%から現在は54%と、全体の25%の企業が新たにビジネスプロセス全体の自動化に取り組むようになった(データ1)。導入当初は特定業務の自動化を進めたが、効果を実感し、部門や業務の垣根を越えてプロセス全体を自動化するようになったとみられる。

 【データ1】RPA活用方針と導入時期の関係

実際に早い時期に導入している企業の方が、より幅広くRPAを活用している。2017年以前に導入した企業は、4割以上が「大きな効果が見込める業務にRPA適用を終え、より細かな業務へ活用」を進めている。一方、同じ項目について2018年度~2019年度に導入した企業は約3割、2020年度以降では約2割となった(データ2)

 【データ2】RPAの活用状況と導入時期の関係

また、早くからRPA導入している企業ほど、経営層がRPA活用に対して積極的であることも分かっている。業務プロセス全体を自動化していくには、人材やスキルなどの体制面やコスト面での課題が大きい。RPAの推進部門は必要に応じて経営からもサポートを得られるため、細かな業務への適用にも耐えうる体制や予算を持っており、業務や部門を跨いだビジネスプロセス全体の自動化まで踏み切りやすいのだろう。

自動化範囲を広げるためAI-OCRの導入が本格化、プロセスマイニングはお試し段階

自動化するうえでRPAと他のツールを組み合わせる動きも出ており、代表例はAI-OCRだ。年商50億円以上の企業においてAI-OCRの導入率は23%であった(データ3)。2021年1月時点では約7%であったことから、この1年9か月の間に導入率を大きく伸ばした。特にRPAユーザーの導入率は44%と、RPA未導入企業と比べ大きな差がある。RPAのツールベンダーや販売パートナーもAI-OCRとRPAを組み合わせたプロモーションや事例などの情報発信をしたほか、コロナ禍でデジタル活用やペーパーレスの機運が高まったことなどが要因とみられる。

【データ3】AI-OCRの導入状況

RPAの活用範囲を広げるうえで注目を集めているのがプロセスマイニングツールだ。導入率は12%だが、ほとんどはお試しで利用している。準備中・検討中も21%のため、徐々に認知され、導入が進むとみられる。主要どころでは、Celonis、SAPに買収されたSignavio、IBMが買収したmyInvenioなどがある。また、外資系RPAベンダーのUiPathやAutomation Anywhereも買収でプロセスマイニングの機能を獲得している。現状では国産のプロセスマイニングツールは数少なく、外資系のツールの輸入が主体となっている。ベンダーは2022年に入ってからプロモーションを強化し始めており、今後の普及に期待がかかる。 

【データ4】プロセスマイニングツールの導入状況

RPA活用は年商50億円以上と50億円未満で大きな格差

RPA導入率は年商50億円以上で45%と、前回調査の2021年1月時点から8ポイント伸びた。準備中・検討中企業も約20%いるため、今後も伸びるとみられる。活用度合いに濃淡があることはデータ1で示した通りで、年商50億円以上の企業では徐々に自動化範囲を広げ、効率化を図っていく流れができている。

一方、年商50億円未満の企業では導入率12%と、前回調査から2ポイントしか伸びていない。年商50億円以上と比べると33ポイントの差があり、その差は広がっている。ビジネス活用が進むMicrosoft 365に付属するRPA機能、クラウド型RPAなど、安価に始める方法はあるが、なかなか活用は進まないようだ。これまでの調査で判明している通り、RPAを活用している企業ではデジタル化(※2)やビジネスプロセスの自動化が着実に進んでいる。企業の生産性という点では、RPAの活用有無が将来的な企業の生産性に大きな差となって現れるであろう。

※2  RPA活用状況とデジタル活用状況の相関は、「RPA国内利用動向調査2020」など過去調査を参照

【データ5】RPA導入率の推移

本調査の詳細については、市場分析レポートとして近日中に発売予定です。詳細についてはお問合せください。

■調査概要

  1. 調査対象・件数:国内企業1,530社(年商50億円以上:1,012社、同50億円未満:518社)
  2. 調査方法:Webアンケート
  3. 調査期間:2022年9月

 ※1 調査対象としたRPA(18製品)
①BizRobo!
②WinActor
③UiPath
④BluePrism
⑤Advanced Process Automation
⑥Autoジョブ名人/Autoブラウザ名人/Autoメール名人
⑦Automation Anywhere
⑧PegaRPA
⑨CELF
⑩SynchRoid
⑪FUJITSU Software Interdevelop Axelute
⑫NEC Software Robot Solution
⑬Nice Robotic Automation
⑭Verint RPA
⑮ipaS
⑯RPA Express(WorkFusion)
⑰Robo-Pat
⑱Microsoft Power Automate
(順不同)

※導入率の算出について
導入率は社数ベースで算出している。「導入」の判定についてはRPAを「本格的に活用している」「テストまたは部分的に活用している」と回答した企業をカウントしている。

※調査対象範囲の拡張について
2020年の調査までえは調査対象を年商50億円以上の企業としていた。2021年以降、年商50億円未満にも調査範囲を広げた。従来調査との比較の観点から、従来の対象と50億円未満の企業は区別して導入率を算出、分析している。

■報道に際しての注意事項

  1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。
  2. 出典を「MM総研」と明記して下さい(MMは全角)。
  3. 数値等は表ではなくグラフ化して掲載して下さい。
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀近くにわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供して

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