GIGAスクール端末を毎日利用する生徒は2割に留まる、教員の利活用支援や授業時の通信環境に課題

「小中学校のGIGAスクール端末の利活用動向調査」(2021年10月時点)

2021年11月25日

■ 授業でGIGAスクール端末を「毎日利用している」生徒は20%

■ 自治体の63%がGIGAスクール端末の「利用頻度向上に課題あり」と回答

■ 教員研修の継続実施率は54%にとどまり、自治体の教員支援体制に課題

■ 「通信環境が1人1台接続に耐えられない」自治体は44%も、改善予算を確保できず

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2021年10月末時点の「小中学校のGIGAスクール端末の利活用動向調査」と題する調査結果をまとめた。市区町村が設置する教育委員会1,740団体に電話アンケートを実施し、2020年度に小中学生に1人1台整備したGIGAスクール端末の活用状況について尋ね、1,136団体(65%)から回答を得た。今回は各自治体の教育委員会で、学校の教員などに対して利活用を推進する「指導主事」を主要なヒアリング対象者とした。

授業で1人1台端末を「毎日利用している」生徒は20%

調査結果によると、授業でのGIGAスクール端末の利用頻度について、全校生徒が「毎日活用している」と回答した自治体は307団体で、生徒数ベースでみると、回答を得た自治体の生徒約521万人のうち約102万人(構成比20%)と推測される(データ1)。最も多い回答は、「週に2~3回程度」で40%を占めた。一方、教育委員会が授業での利用頻度を「把握していない」とする回答が37%にのぼり、利用状況の把握が進んでいないことがうかがえる。自治体は、端末整備と並行してOS事業者が提供するクラウド導入が進んでいる。デジタル活用向上を目的とした情報収集のため、端末へのログイン状況をクラウドで自動的に把握するといった機能の利用促進や環境整備を進めていく必要がある。

 

【データ1】授業における1人1台端末の利用頻度(生徒数ベース、※1)

※1 生徒数ベースの利用頻度は、回答を得た1,136自治体の生徒数(5,206,297人)を分母、各回答をした自治体の生徒数を分子として集計した。

教員研修の継続実施率は54%にとどまり、自治体の教員支援体制に課題

授業で毎日利用している生徒が20%に留まることから、利活用度合いの向上に課題があると想定される。そこで端末の利用頻度向上に向けた課題の有無を聞くと、「課題あり」が63%、「課題なし」が37%という結果となった(データ2)。

具体的な課題としては「教員のICTスキルに課題がある」が41%、次いで「教員の意識に課題がある」が13%となった。しかし、今回の調査ではICT活用研修を継続的に実施できている自治体は54%に留まり、まったく実施できていない(検討中、まだ考えていない、必要ない等)と回答する自治体も1割弱あった(データ3)。民間事業者などが提供する対面・オンラインでの研修や、校務でのデジタル活用など、総合的な対策が必要と考えられる。授業時の端末運用など、困りごとに対応する「ICT支援員」の活用も重要だろう。MM総研が2021年7月に実施した教育委員会への調査(※2)では、ICT支援員を利用している自治体は59%に留まっている。

※2 MM総研「小中学校GIGAスクール構想に関する基礎自治体調査(2021年7月時点)」

【データ2】授業における1人1台端末の利用頻度向上にむけた課題認識(自治体数ベース)

【データ3】教員向けの研修実施状況(自治体数ベース) 

通信環境が1人1台端末接続に耐えられない自治体が44%も、改善予算を確保できず

通信環境の整備でも課題が残る結果となっている。授業などでGIGAスクール端末を一斉にインターネット接続する際の通信環境に「課題あり」とする回答が44%となった(データ4)。なかでも「特定の人数を超えて一斉に端末を利用すると接続できない、接続しにくくなる」との回答が68%を占めた。今後さらに授業で端末やインターネット、クラウドの活用を進めるには、安定した通信環境の構築が必要となろう。しかし、こうした課題解決のために予算を確保できている自治体は9%に留まり、予算化を計画している自治体が15%、残る7割以上の自治体は予算化のめどすら立っていない現状が浮き彫りになった(データ5)。

通信環境の改善には、利活用現場とICT整備担当の情報連携が必要と考えられる。しかし、双方の課題認識には温度差があるようだ。データ4で示した今回の指導主事への調査結果と、2021年7月に実施したICT整備担当者を対象にした調査結果(※2)を突合し、分析した。すると、現場で利活用を推進する指導主事は「課題あり」と考えているが、ICT整備担当者が課題を認識していないという自治体が20%存在する(データ6)。こうした温度差を無くし、現場の声を環境整備・改善につなげていく取り組みも必要となろう。

【データ4】1人1台端末をすべてインターネット接続していく上での課題認識

【データ5】学校のインターネット接続環境を改善するための予算の確保状況 

【データ6】1人1台端末をすべてインターネット接続していく上での課題認識

(指導主事とICT整備担当者の認識に相違)

本調査の詳細については、市場分析レポートとして発売いたします。詳細についてはお問合せください。 

 

■調査概要

1. 調査対象:市区町村に設置された教育委員会 1,740団体

2. 回答件数:1,136団体(65%)

3. 調査方法:電話アンケート

4. 調査期間:2021年10月

 

■報道関係お問い合わせ先

(株)MM総研

担当:中村、高橋、原田

所在地:105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー

電話番号:03-5777-0161 ホームページ:www.m2ri.jp

 

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1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。

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■MM総研について

株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀近くにわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

 

 

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(株)MM総研

担 当 : 中村、高橋、原田

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