全戸一括型マンションISP、2020年度は過去最高の増加

「全戸一括型マンションISP シェア調査」(2021 年3 月末)

2021年08月31日

■ 2021年3月末の全戸一括型マンションISPの提供戸数は365.6万戸
■ 2020年度(2020年4月~2021年3月)の増加戸数50.5万戸は過去最高
■ 事業者シェアでは、つなぐネットコミュニケーションズが4年連続で首位
■ 在宅勤務、オンライン授業の浸透で市場拡大に追い風

ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2021年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)のシェア調査結果を発表した。本調査は、集合住宅の全戸にインターネット接続サービス(光回線ベース)を一括で導入・提供する事業者を対象とし、任意加入方式は含まない。市場シェア(データ1)は2021年3月末時点のサービス提供戸数を対象とし、OEM提供分を除いている。

2021年3月末時点の全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数は365.6万戸で、前年同月末比で50.5万戸の増加となり(データ2)、2014年の調査開始以来、過去最高を記録した。在宅勤務やオンライン授業などで固定インターネット回線の重要性が増すとともに、通信品質に対する需要が高まり、主に既築賃貸物件への導入が進んだ。コロナ感染拡大が深刻化するなか、マンションISP大手各社は➀既存顧客のフォロー・設備増強を図りつつ、➁通信・サポート品質の高さを武器とした新規導入――の両面で顧客開拓に取り組んだ。事業者別シェアでは、つなぐネットコミュニケーションズが21.6%となり、4年連続で首位となった。2位は13.5%のファミリーネット・ジャパン、3位は11.4%のD.U-NETと続く。前年から上位9事業者の順位に変動はなかった。


【データ1】全戸一括型マンションISP シェア(2021 年3 月末のサービス提供戸数)

 

 

【データ2】全戸一括型マンションISP によるサービス提供戸数の推移

 

 

市場動向

シェア1位のアルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが展開する「UCOM光 レジデンス」および「e-mansion」は、2021年3月末の提供戸数が79.0万戸(前年同月末比7.4万戸増)となった。在宅勤務の増加により高速・高品質なインターネット接続サービスの提供が奏功し、2019年度(2019年4月~2020年3月)の6.9万戸増を上回る好調ぶりだった。得意とする新築分譲で堅調に数を伸ばすとともに、賃貸物件は次世代ネットワーク方式IPv6 IPoE※1を採用した「UCOM光 レジデンス Five.A(ファイブ・エー)」の提供が奏功し獲得が進んだ。通信品質の高さが評価されたとみられる。

 今後については、2021年8月にオプションとして提供開始したSD-WAN※2を活用した「Connectix(コネクティクス)」の効果が注目される。同サービスは利用者ごとに接続するための優先ルートを用意することでスムーズな接続環境の提供を可能にしており、在宅勤務やオンライン授業、動画視聴、オンラインゲームなど高速・大容量の通信ニーズに対応する。

 「CYBERHOME(サイバーホーム)」を提供するファミリーネット・ジャパンは、2021年3月末の提供戸数が49.4万戸(同4.4万戸増)でシェア2位。新築分譲物件をメインに提供する同社は、在宅時間の増加が追い風となり、マンション向けIoTサービス「rimoco(リモコ)」や、共用部玄関を解錠して玄関前まで配達する「玄関前配達サービス」の導入が奏功した。スマートフォンやスマートスピーカーから住宅設備や家電を制御するrimocoは、床暖房はじめ住宅設備で多く見られる有線接続機器と、テレビやエアコンといった赤外線家電の双方に対応できるよう今秋に本体機器を刷新。さらなる利便性向上をめざす。

大和ハウスグループのD.U-NETは、2021年3月末の提供戸数は41.5万戸(同6.2万戸増)でシェア3位。コロナ禍で訪問営業が厳しい状況が続いているが、安定したインターネット環境の重要性が認識され、既築賃貸市場で堅調に数を伸ばす。インターネット通販利用者の急増や非対面での商品受け取り需要を受け、宅配ボックス「D-room BOX(ディールームボックス)」も好調だ。こうしたIoTサービスやAIを活用した防犯カメラなどの組み合わせにより、さらなる獲得をねらう。

ファイバーゲートは2021年3月末の提供戸数が30.4万戸(同7.8万戸増)と、昨年に続き4位となった。賃貸向けにマンションWi-Fi入居者無料サービス「FGBB」を提供する同社は、昨年に続き地方の小規模賃貸アパートの導入が好調で、調査対象事業者の中で年間増加数ではトップとなった。今後は導入余地が大きい北海道や東北地方も強化していく方針。自社開発する壁埋め込み型Wi-FiやホームIoT「FG Home IoT」などを強みに、導入からサポートまでワンストップで提供する。

 ギガプライズは、本調査では同社の提供戸数に含まれないOEM提供分を含めると2021年3月末時点の提供戸数は74.5万戸(同18.0万戸増)と飛躍的に伸びた。OEM先からの受注が好調で新築、既築物件共に獲得が増えた。既存電話線を用いた集合住宅向けISPサービス「SPES(エスピーイーズ)」や脱着式Wi-Fiアクセスポイント「PWINS(ピーウィンズ)」、ならびに専用線型・優先ゲート方式インターネット接続サービスなどの豊富なサービスラインアップと迅速なサポートが評価された。

※1 IPoEは「Internet Protocol over Ethernet」の略で、イーサネットを使用してIPパケットを伝送する通信方式。一般的に従来型のPPPoE方式より高速なインターネット通信ができる。

※2 SD-WANはSoftware Defined Wide Area Networkの略で、物理的なネットワーク機器で構築したWAN上に仮想的なWANを構築し、ソフトウェアを用いて管理する技術。

 

市場動向

賃貸・分譲共に新築集合住宅の供給は2021年に入ってやや回復の兆しがみられるものの、大幅な増加は見込めない状況にある。コロナ禍の長期化による下振れの可能性もあることから、新築物件への全戸一括型インターネット導入は一定規模にとどまるとみられる。一方、賃貸を中心に未導入が多い既築物件での固定インターネット設備の需要は根強く、同セグメントにおける全戸一括型インターネット導入が増加すると予測する。

マンションISP大手各社の戦略にも変化がみられる。新型コロナ感染拡大が始まってから当初1年ほどは、”既存顧客のフォロー・設備増強“と”新規顧客の獲得”の両面に注力していた。2021年に入り、各社は新規顧客の獲得にウェイトを置いた取り組みにシフトし始めている。新規案件の獲得には、テレワーク等で求められる通信品質をいかに担保できるかが鍵を握る。安定かつ高速大容量の通信に対応するため、優先ルートでインターネットに接続できる新たなサービスの提供も始めている。また、インターネット回線の輻輳を回避すべくIPoEサービスの導入や複数の回線事業者からの分散調達、10Gbpsサービスの提供にも力を入れている。

さらに、感染拡大防止の観点から非接触の需要を取り込む宅配ロッカーやIoTサービス(インターホン、ホームIoTなど)の付加価値サービスも導入数を伸ばしている。こうしたオプションはインターネットとの親和性が高く、セット提案により2021年度の全戸一括型マンションインターネットは前年度を上回る伸びとなる見通し。

本件に関するお問い合わせ先

(株)MM総研

担 当 : 加太、小野寺

所在地 : 105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー

連絡先 : 03-5777-0161

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