人工知能技術のビジネス活用概況

―― 日米独の法人比較

2017年04月25日

■ 人工知能の導入率は日本1.8%、独4.9%、米13.3%で、日本の出遅れ目立つ
■ 日本の市場規模は2016年度2,220億円、21年度には5,610億円と予測
■ 今後の日本市場成長のカギは「技術理解」,「環境整備」,「人材と業務運用ノウハウの保有」

 MM総研(東京都港区、所長・中島 洋)は「機能特化型の人工知能技術のビジネス活用」について、法人企業への調査や企業へのインタビューをもとに日本、アメリカ、ドイツおよび世界それぞれの市場概況をまとめた。
 調査の結果、日本企業が人工知能技術をビジネスに導入している割合は1.8%。業種導入率では、金融業、情報通信業が高く、他業種より先行して導入していることが分かった。国内市場規模については2016年度が前年度比約2倍の2,220億円。今後、年平均20.4%で成長し、2021年には5,610億円に拡大する見込み。米独に対し、最も市場成長率が高い結果となった。今後、国内市場成長のカギは、「利用者側の人工知能の技術理解向上」と「環境整備」、「豊富なデータを生かせる人材と業界ノウハウ」の確保とだということが分かった。

 

導入率で日本の出遅れ目立つ
 ―日本では金融業と情報通信業が導入で先行

  人工知能のビジネスへの導入率は、日本で導入済が1.8%、導入検討中が17.9%となった。ドイツでは導入済4.9%、導入検討中が22.4%、米国では導入済13.3%、導入検討中が32.9%。米国が最も人工知能のビジネス活用が進んでいる結果となった。日本は他二ヶ国に後れを取る結果となった。(Table1)
 日本市場の業種別導入率を見ると、金融業7.8%、情報通信業6.9%とこの二業種が先行して導入していることが分かった。そして製造業2.5%、運輸業1.7%、医療・介護分野1.0%と続く。(Table2)

 

2016年度の市場規模は、日本2千億円、ドイツ3千億円、米国4兆円

 日本の2016年度の人工知能ビジネス市場は2,220億円。今後、年率20.4%で成長し2021年度には5,610億円を見込む。市場区分は導入期で、2017、18年度に実証実験や導入が積極的に行われ市場は拡大するが、2019年度にはそこで見えた運用・技術両面での問題が明確となり、市場は一度縮小する見込み。

 ドイツ市場は2016年度3,260億円から年率10.3%で成長、2021年度5,330億円を見込む。市場区分は導入期。2018年度に一度ピークを迎え、日本同様に2019年度に一度市場が縮小する見込み。三ヶ国の中で年成長率が最も低い。
 アメリカ市場は2016年度3兆9,340億円。年率14.9%で成長し、2021年度には7兆8,360億円に成長する見込み。市場区分は導入期から成長期への移行期。アメリカは世界市場の約47.4%を占めており、ICT同様、牽引役を果たす。(Table3)

 

人工知能普及のカギは

 日本の主要ベンダーにヒアリングを行ったところ、普及の阻害要因として①導入または事業遂行者の知識不足、②知識不足のトップダウンによる事業開始指示、③データの有無――が挙げられた。これを受け、MM総研は、「マネジメント層の認知度と投資意欲状況」、「導入後の問題」、「提供者側の強み」を調査した。

i)マネジメント層¹ の技術理解が必須 ― 日本が1割未満、独が3割、米5割
 人工知能に投資している企業のなかで、マネジメント層が人工知能技術やサービスを詳しく知っている割合を三ヶ国で比較すると、日本7.7%、ドイツ30.9%、アメリカ49.8%だった。日本では9割以上の導入企業でマネジメント層が技術を理解しないまま人工知能に投資している状況が浮き彫りになった。マネジメント層と事業を遂行する現場員との間でコミュニケーションの断絶が起きかねないといえ、マネジメント層が技術やサービスをよく理解したうえで導入を判断し、プロジェクトの統制していかなければ、人工知能技術をビジネスに活かすことは困難だ。(Table4)

¹ 部長クラス以上、社長、会長、経営者

ii) 導入後の問題 ― 人工知能に過剰期待した米独、日本は環境整備不備が
 MM総研では導入後の問題を大きく分けてコスト、利用環境、データの所有権、人工知能への過度な期待に分けて調査をしたところ、国ごとに問題が分かれた。
 日本では、「人工知能を利活用する環境が整っていない」(31.3%)が最も多く、次いで「保守/運用コストが高い」(28.8%)となった。導入したが利用環境が整っておらず、ランニングコストがかさんでいる状況が見えた。
 ドイツでは、「想定より人工知能で解決できることが少なかった」(24.2%)、「保守/運用コストが高い」(22.0%)が上位を占め、過度な期待で人工知能を導入し、保守運用コストがかさんでいる状況が分かった。
 アメリカでも「保守/運用コストが高い」(33.6%)、「導入効果よりサービス利用コストが高い」(36.6%)、「想定より人工知能で解決できることが少なかった」(28.1%)と、過度な期待から人工知能を導入した結果、コスト問題に直面していることが分かった。(Table5)

iii)日本の事業者は市場でどう戦うべきか? ― データはある日本、伸ばすべきは人材とOT保有
 MM総研では、人工知能の競争力の源泉として「データ有無」、「人材(データサイエンティストやプログラマ)」、「業界の業務運用ノウハウ(以下Operation Technology:OT)」の三項目を重視している。この三項目について各国の人工知能提供企業に「強み」を聞いたところ、以下のような結果だった。

 

【三ヶ国比較 人工知能サービス提供者の強み】

 

 日本が米独と比較して強みとして持っているのはデータの保有のみで、人材に関しては最下位、OTはドイツに次ぐ2位だ。ここから、今後重点を置くべき課題としては人材とOT保有が浮かびあがった。今後、市場の成長・成熟期で日本企業が戦っていくためには①人工知能人材として定義されるデータサイエンティストやプログラマーをいかに保有していくか(教育/採用)、②課題解決のノウハウと人工知能を組み合わせてどのようにビジネスの課題を解いていくのか――が問われる。

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■調査概要
 1.調査対象:人工知能技術のビジネス導入済または検討企業
 2.回答件数:(日本:予備調査8,797人、本調査2,000人、アメリカ:予備調査1,071人、本調査
          500人、ドイツ:予備調査1,631人、本調査 500人)
 3.調査方法:ウェブアンケート
 4. 調査期間:2017年3月2日(木)~3月16日(木)
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*【人工知能の定義】推論や学習、認知、判断など、人間の一知能の働きを人工的に作成したプログラムまたはコンピュータ。MM総研ではこれらを「技術」と捉え、機械学習、自然言語処理、推論などの技術を「(特化型)人工知能」と総称する。いわゆる人工知能学会が分類する「弱い人工知能」をさす。現在、人工知能は、ICTサービスや製品の分析機能、認知機能などを強化する役割を担う。


■注意事項
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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