クラウド会計ソフトの利用状況調査(2017年3月末)

2017年04月13日

■ 会計ソフト利用者の内、クラウド会計ソフトの利用率は13.2%

■ クラウド会計ソフトの認知度は16年12月調査より3.8ポイント増の69.5%

■ クラウド会計ソフトの事業者シェアでは弥生が56.8%、マネーフォワードが19.9%

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、個人事業主(1万7,420事業者)を対象にWebアンケート調査を実施し、2017年3月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況をまとめた。本調査では、平成28年(2016年)分の確定申告を実施した個人事業主を対象とした。調査結果から、会計ソフトを利用している個人事業主は32.5%で、そのうち、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフト(※1)の利用率は13.2%となった。確定申告の直前にあたる2016年12月調査時点の9.7%から3.5ポイント増加した(図表1・2)。クラウド会計ソフトの事業者別シェアでは、「弥生」が56.8%、次いで「マネーフォワード」が19.9%、「freee」が16.9%となった(図表4)。

 IT技術を活用した金融サービスである「FinTech(フィンテック)」を代表するサービスの一つがクラウド会計ソフトである。複雑な勘定科目の自動判別機能など日々の帳簿付けから確定申告書の作成における負担軽減などクラウドならではの利便性の高さが評価され、認知が広がっている。調査結果でも、個人事業主の認知度は69.5%に拡大。2016年12月調査の65.7%から3.8ポイント増となった(図表3)。

 クラウド会計ソフトを認知しながらも、現在利用していない個人事業主(1万524事業者)に今後の利用意向を確認したところ、「今後利用したい」(6.0%)と「どちらかといえば今後利用したい」(28.5%)を合わせたクラウド会計ソフトの利用意向率は34.5%(図表5)となった。この利用予備軍を事業継続年数で分析したところ、2年未満が50%で最も多く、事業継続年数が若いほど利用意向が高い結果となった(図表6)。過去3回の調査と同様に、起業や独立をめざす比較的事業継続年数の若い個人事業主が引き続き、クラウド会計ソフト市場をけん引していていくものと分析する。

※1. クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用できるソフトのこと。
パソコンに会計ソフトをインストールしたもの、会計データのみをインターネット上に保管するソフトは含まない。

クラウド会計ソフトの認知度は69.5%に上昇

 多くの個人事業主は1月~12月の1年間の「所得」を確定させ、翌年2月から3月にかけて税務署に「申告」する、いわゆる「確定申告」を行っている。1月、2月は会計ソフトやクラウド会計ソフトを導入・変更する1年で最大のタイミングとなる。MM総研ではその前後で、個人事業主を対象にした調査を実施しており、第4回目となる今回の調査(2017年3月調査)では、2017年2月から3月にかけて確定申告を実施した個人事業主 (1万7,420事業者)を対象とした。

 上記の条件に当てはまる個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施したところ、「会計ソフトを利用している」との回答は32.5%(5,662事業者)となった(図表1)。この会計ソフト利用者に、利用している会計ソフトを確認したところ、パソコンにインストールして利用する従来型の会計ソフト(※会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が77.7%を占めた。クラウド会計ソフトを利用している個人事業主は13.2%となり、2016年12月調査時の9.7%から3.5ポイント上昇した(図表2)。クラウド会計ソフトの利用率が10%を超えたのは2015年12月に調査を開始して以来、初めてとなる。

 クラウド会計ソフトの認知度を確認したところ、「知っている」との回答は全体(1万7,420事業者)の69.5%に達し、2016年12月調査時よりも3.8ポイント上昇した(図表3)。クラウド上にデータを保管し、ネット環境さえあれば、どこでも利用でき、複雑な勘定科目を自動で判別、仕訳してくれる機能などへの認知が進んでいる。現状では会計ソフト利用者の1割程度にすぎないが、少しずつ着実にクラウド会計ソフトの浸透は進んでいるようだ。

 一方、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主は56.3%(9,807事業者)となった(図表1)。この非利用者に会計ソフトの代わりに利用しているものを確認したところ、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が41.5%、「エクセルなどの表計算ソフトに入力」が39.4%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が12.0%となった。

「弥生」「マネーフォワード」はシェアを拡大、「freee」はシェアを縮小

 クラウド会計ソフト利用者に、実際に利用しているクラウド会計ソフトを回答してもらったところ、事業者別では「弥生」が56.8%で最も多く、「マネーフォワード」が19.9%、次いで「freee」が16.9%、「全国商工会連合会」が3.2%となった(図表4)。

※対象ソフト

・弥生              ・・・「やよいの青色申告 オンライン」、「やよいの白色申告 オンライン」
・freee       ・・・「クラウド会計ソフト freee」
・マネーフォワード ・・・「MFクラウド確定申告」
・全国商工会連合会 ・・・「ネットde記帳」 

 トップシェアの56.8%を獲得した「弥生」は2016年12月調査時の52.8%からシェアを4.0ポイント上げている。シェア50%を超えてはいるが、引き続き個人事業主からの支持を伸ばしている。2位の「マネーフォワード」は、2016年12月調査時の17.7%から今回の2017年3月調査では19.9%とシェアを2.2ポイント伸ばし、「freee」を抜いて2位に浮上した。一方で「freee」は2016年12月調査時の22.3%から今回の2017年3月調査では5.4ポイント減となる16.9%と、上位3社の中で、唯一シェアを落としている。確定申告の時期を挟む2016年12月から2017年3月までは、クラウド会計ソフトを導入・変更する最大のタイミングとなることからシェアの変動も大きくなっている。

 個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場は「弥生」と「マネーフォワード」、「freee」などのベンチャー系事業者を中心としたその他事業者との争いになっている。2016年12月調査時の上位3社の合計シェアは92.8%、2017年3月調査では93.6%に拡大している。

起業準備や起業をきっかけにクラウド会計ソフトを導入

 今後の個人事業主におけるクラウド会計ソフトの導入意向を分析するにあたり、クラウド会計ソフトを認知しながらも、現在利用していない個人事業主(1万524事業者)に今後の利用意向を確認した。「今後利用したい」(6.0%)と「どちらかといえば今後利用したい」(28.5%)を合わせたクラウド会計ソフトの利用予備軍は34.5%となった(図表5・6)。

 この利用予備軍を事業継続年数で分析したところ、2年未満が50.0%、2年以上5年未満が40.5%、5年以上20年未満が33.8%、20年以上が31.3%と、事業継続年数が若いほど利用意向が高い結果となり(図表6)、過去3回の調査と同様の傾向となった。起業や独立をめざす比較的事業継続年数の若い個人事業主が引き続き、クラウド会計ソフト市場をけん引していくものと見られる。

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■調査概要
1.調査対象:平成28年(2016年)分の確定申告を実施した個人事業主
  ※申告期間:2017年2月16日(木)から3月15日(水)
2.回答件数:1万7,420事業者
3.調査方法:Webアンケート
4.調査期間:2017年3月21日~27日
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