個人向けサービスで新規参入が活発化、法人IoTと両輪で成長軌道へ

「国内MVNO市場調査」(2025年3月末時点)

2025年07月03日

■2025年3月末の独自サービス型SIM回線契約数は1363.5万回線(前年同期比4.1%増)

■首位のインターネットイニシアティブはIoT向けが好調でシェアを拡大

■携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの比率は6.0%で変化なし

■2026年3月末の回線契約数は1530万回線と予想(前年同期比12.2%増)

概要

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は国内MVNO(仮想移動体通信事業者)市場の2025年3月末時点での実績をまとめた。独自サービス型SIM※1の回線契約数は1363.5万回線で前年同期比4.1%増となった。IoT向け用途や対面販売を重視する個人向けMVNOの伸長により微増となった(データ1)。携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの契約数比率は、2024年3月末から引き続き、横ばいの6.0%で推移した(データ2)

2025年3月末時点での事業者シェア1位は「IIJmio」などを提供するインターネットイニシアティブ(以下IIJ)。ネットワークカメラ・GPS(全地球測位システム)デバイスなどIoT用の法人向けで回線数を伸ばした。2位は関西電力グループのオプテージ(大阪市)、3位はNTTドコモ※2、4位はJCOM(東京都千代田区)で、5位はイオンリテール(データ3)

MM総研では2026年3月末の独自サービス型SIMの回線契約数を1530万回線(前年同期比12.2%増)と予測する。ネットワークカメラなどの法人向けIoT用途のSIMが主力になっていき、引き続き市場が拡大すると予想する(データ4)。

※1独自サービス型SIM : MVNOがSIMカード(契約者情報記録カード)を活用して独自の料金プランで提供する回線サービス(プリペイドは含まない)

※2 NTTレゾナントは2023年7月1日、事業再編によりNTTドコモに吸収合併されたため、本調査ではNTTレゾナントが提供していたOCNモバイルONEおよびNTTコミュニケ―ションズが提供する一部法人回線を含んでNTTドコモ提供分として定義する

サブブランドの拡大が続く中、独自サービス型SIM市場も新規参入で活性化

2025年3月末時点の携帯電話(3G、LTE、5G)契約数は2億2575万回線。独自サービス型SIMの回線契約数は携帯電話市場全体からみると、構成比は6.0%と横ばいで推移(データ2)

MNO(移動体通信事業者)のサブブランド(ソフトバンクの「Y!mobile」、KDDIの「UQ mobile」)はメインブランドからの移行ユーザーを効率よく獲得しており、回線数は引き続き増加した。2025年3月末時点のサブブランドの契約比率は携帯電話(3G、LTE、5G)契約数の10.3%(前年同期比1.0ポイント増)まで拡大した。また、MNO各社のオンライン専用プラン(NTTドコモの「ahamo」、KDDIの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」)の契約数比率も4%強にまで拡大し、独自サービス型SIMの対抗軸となるサービスが好調で、MVNO市場は横ばいを維持する結果となった。

こうした中、新規参入としてカブ&ピース(東京都港区)、メルカリ、「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、日本航空(JAL)など多様な企業が市場に加わり、独自サービス型SIM市場の活性化に寄与している。さらに、2025年3月にはIIJが既存プランのデータ増量と値下げを実施し、オプテージ(mineo)も50GBプランの追加データ無制限プランの拡充、割引キャンペーンを展開するなど、各社が増加するデータ通信需要に応える形でサービスの競争力を強化している。これらの動きが独自サービス型SIM市場の成長を活性化させている。

首位のIIJは法人IoTとギガプラン強化でシェア拡大

2025年3月末時点で独自サービス型SIM市場の事業者シェア1位は「IIJmio」「BIC SIM」などを提供するIIJ。2位は「mineo」を提供するオプテージ。3位はNTTドコモ。4位は「J:COM MOBILE」を提供するJCOM、5位は「イオンモバイル」を提供するイオンリテール。

シェア1位のIIJはネットワークカメラやデバイス接続などの法人向けのIoT関連需要が活況で、回線数を1年間で70万以上伸ばした。個人向けは「ギガプラン」のデータ増量や月額料金割引キャンペーンが好調で、堅調に契約数を伸ばした。

2位のオプテージは法人向けモバイルが好調で、クラウドカメラやスマートホームIoTを軸に回線数を着実に積み増した。個人向けモバイルサービス「mineo」では必要な通信容量を選択できるプラン「マイピタ」が主軸で、2024年10月から12月にかけて実施した月額料金割引及び通信容量増量の「トク増し割」キャンペーンが一定の訴求効果を発揮し、回線数が純増した。

3位のNTTドコモは2023年7月に吸収したNTTレゾナントが提供していた「OCNモバイルONE」の新規受け付け停止により、ドコモの低価格プランである「irumo」などへユーザーが流出した影響で、独自サービス型SIMのシェアは2024年9月末に比べわずかに低下した。

4位のJCOMは「J:COM MOBILE」利用者の9割がケーブルテレビや固定回線をセットで利用した場合にスマートフォンのデータ容量を増量する「データ盛」の適用者で、ケーブルテレビや固定回線利用者の獲得が好調だった。訪問販売などで対面によるサポートを受けられる点が利用者に好評で回線数が純増し、シェアは2024年9月末に比べて増加した。

5位のイオンリテールは全国のイオンモバイル店舗で対面契約やサポートが受けられる強みや、イオンカードで通信費の支払いをすると電子マネーWAONポイントが貰えるキャンペーンなどを実施し、イオン経済圏を活かした戦略で契約数を伸ばした。2024年4月に60GB~200GBの大容量プランを拡充し、大容量プランの契約データ容量を家族でシェアする「シェアプラン」でファミリー層にアプローチした結果、回線数が純増した。

MVNO市場は、MNOとの価格競争の影響を受け、依然として厳しい状況が続いている。MNO各社のオンラインプランやサブブランドの台頭により、個人向け市場は苦しい状況だ。一方で、法人向けのIoT回線が市場をけん引している点は明るい材料だ。

近年、ahamoなどMNOのオンライン専用ブランドやサブブランドが料金据え置きで通信容量を増量する実質値下げの動きを見せているほか、MVNOでも価格を引き下げる動きが一部見られ、それが他社にも波及して全体的な価格競争が加速している。そのため、MVNO各社は価格以外の部分で差別化しようとする動きも活発だ。例えば、JCOMのように独自の営業スタイルを展開する企業や、プランの拡充、キャンペーンの強化など、各社の戦略に違いが出てきている。2025年3月末時点ではMNOによる本格的な料金見直しはまだ表面化していなかったが、ドコモやKDDIなどのMNOが相次いで料金プランを改定し、ARPU(1契約あたりの月間平均収入)改善に向けた動きを明確にしている。今後、MVNOにとっては「低価格」という競争優位性が市場の中で一層際立つこととなり、それを武器にしつつ、今後は通信品質やサポート、端末ラインアップなどの付加価値をいかに提供できるかが、市場拡大の鍵を握ることになるだろう。

IoT向けSIM回線比率は今後60%を超える見込み

2026年3月末時点の独自サービス型SIM市場は1530万回線になると予測する(データ4)。ネットワークカメラなどの法人向けIoT用途のSIMが主力になっていき、2028年3月末時点のIoT向け回線比率は65.9%に達すると予測する。

■注意事項

1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析から一部または全部を抜粋したものです。
2. 報道機関が引用する場合は、出典を「MM総研」と明記してください(MMは全角)。
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株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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