FTTH純増数は緩やかな減少傾向続く

「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2024年9月末時点)

2024年12月12日

■2024年度上期のFTTH純増数は前年度同期比9.4%減の37.7万件

■NTT東西のFTTHは6.7万件の純増

■固定ブロードバンドシェアはワイヤレスを伸ばしたNTTドコモが首位を維持

■2024年度通期のFTTH純増数は前年度比9.3%減の74.7万件に上方修正

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年度上期(2024年4~9月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2024年9月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は4073.7万件で、上期で37.7万件(前年度同期比9.4%減)の純増となった(データ1)

コロナ禍による在宅勤務の広がりなどで2020年度から2年程度旺盛だったFTTH純増数は、需要が一巡し、コロナが感染症法上の5類に移行した2023年度上期にかけて大きく落ち込んだが、2023年度下期には下げ止まりの兆候が見え始めた。2024年度上期に入ってからも減少傾向は続いているが、落ち込みは軽微となった。CATVアクセスのFTTH化や集合住宅向け(全戸一括型)の安定した需要に加え、NTT東西を中心に10Gbpsサービスの提供エリアの全国的な広がりが市場を下支えした。この傾向が続いて2024年度下期も上期と同程度の純増数となり、2024年度通期のFTTH純増数は前年度比9.3%減の74.7万件と予測する。2024年6月にMM総研が発表した61.1万件の年間純増数予測から上方修正した。

【データ1】 FTTH契約数の純増数推移

NTTは東西ともに純増し首位を維持

FTTH事業者の契約件数シェア(2024年9月末)では、NTTの光回線(フレッツ光及びコラボ光)契約数が東西合計で2372.1万件(シェア58.2%)となった(データ2)。2024年3月末時点から6.7万件純増したが、シェアは58.6%から0.4ポイント低下した。

通信回線事業者などがNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2024年9月末の総契約数は1730.7万件で、FTTH市場全体に占める割合は42.5%、NTTの光回線に占める割合は73.0%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモがシェア首位を維持した。

光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。4月に福島県、山形県でエリアを拡大し、10Gbpsサービスに対応したNURO光などの純増が貢献し、シェアは3.9%(前年度同期比0.2ポイント上昇)を獲得。市場全体の純増数が落ち込むなかで、高品質・大容量の回線を前面に打ち出した積極的な販促施策が奏功した。

アルテリア・ネットワークスは主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が大型物件でも進み、シェア1.9%を維持した。10Gbpsなど高品質サービスの訴求で新築分譲物件への導入案件を安定的に獲得している。また、賃貸物件向けも継続的に注力している。

【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2024年9月末)

※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる

固定ブロードバンド市場全体ではNTTドコモがシェア1位を維持

固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場全体では、NTTドコモがシェア16.9%で1位を維持した。「ドコモ光」(FTTH)は2022年度下期より純減が続いているものの、8月下旬から開始した「10ギガ基本料金最大6か月間ワンコインキャンペーン」を実施して立て直しを図る。一方、「docomo home5G」(ワイヤレス)は2024年度上期で16万件増加し、FTTHの純減をカバーして首位を確保した(データ3)

シェア2位のソフトバンクは、モバイルと「ソフトバンク光」(FTTH)のセット販売や「10ギガ500円ではじめよう」キャンペーンにより光回線が大幅に増加した。「SoftBank Air」(ワイヤレス)も5G端末を訴求し増加した。一方、ADSLサービスの提供が2024年3月末で終了したことで、NTTドコモとの差は2023年9月末時点の0.6ポイント差から1.0ポイント差に広がった。

JCOMは、固定回線サービスを軸とした販売にシフトし回線数が増加。これまで提供してきた同軸ケーブルからFTTHへの転換も順調に進め、シェアも伸ばしている。老舗ISPのビッグローブもコラボ光を堅調に伸ばしている。

*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

【データ3】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2024年9月末)

※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

FTTHは緩やかな増加が続く見通し

固定ブロードバンド市場全体は緩やかに成長が続く見込みである。ADSLは2026年1月末にNTT西日本がサービス提供を終了するのに伴い終息に向かう。CATVアクセスはFTTH化が進み、契約数の減少が継続する。FTTHやワイヤレスの市場は継続的に拡大する見込み。固定ブロードバンド市場の2024年3月末から2027年3月末までの3年間の年平均成長率は1.7%と予測する(データ4)

【データ4】固定ブロードバンド契約数の推移・予測

※2025年3月末以降は予測値
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

2024年度(2024年4月~2025年3月)のFTTHの年間純増数は前年度比9.3%減の74.7万件を予測する。2024年6月にMM総研が発表した予測ほどの落ち込みにはなっておらず、61.1万件の純増予測から上方修正した。この背景にはCATVアクセスのFTTH化や集合住宅の全戸一括型での導入が堅調に進んでいるほか、10Gbpsサービスの提供エリアが全国的に広がり、新たな需要を創出しつつある点が挙げられる。2025年度以降もワイヤレスがFTTHの潜在需要層を取り込む流れが続く一方で、CATVの光回線化や集合住宅の全戸一括型導入、ワイヤレスからの一定数の移行が続くことで、2024年度以降の3年間の年平均成長率は1.6%と緩やかな成長が継続すると予測する。FTTH事業者間では、今後主力となる10Gbpsサービスのエリア拡大が顧客獲得競争を一層強めると分析している。2025年1月から開始する固定電話サービス提供事業者間における双方向番号ポータビリティや、同年2月から開始する光コラボレーション事業者とシェアドアクセス事業者(※)間における引込線転用(光回線再利用)スキームは、中長期的にサービスの乗り換えを促す可能性があるが、開始当初は限定的とみている。

※NTT東西の光ファイバーを利用し、1本の光ファイバーを分岐して複数のユーザーで共有するアクセス方式によって、自社サービスとして回線を提供する事業者

ワイヤレス市場は、工事不要で手軽に導入できるメリットを背景に単身世帯などのニーズを取り込み、堅調に拡大。今後3年間の年平均成長率は8.8%と予測する。


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