ポイント、EC、クレジットカードで楽天がトップ QRコード決済はPayPayの独り勝ちが続く

「ポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況調査」(2024年8月時点)

2024年09月24日

  • ポイントのクロスユース率は楽天が過去最高となる74.7%でトップを維持
  • QRコード決済ではソフトバンクが55.5%と前回調査に続き半数超えで1位
  • クレジットカードは楽天が65.0%でトップ、ドコモは22.9%で2位を維持

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は15~79歳の男女3万2916人を対象にWebアンケート調査を実施し、2024年8月時点のポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況をまとめた。携帯電話利用者が、契約先の携帯キャリアが提供する各種サービスを「最も利用している」と回答した比率(以下クロスユース率)を指標とした。本調査では、①ポイントサービス②QRコード決済③クレジットカード④ECサイトーーの4領域を分析した。なお、携帯電話はメインで利用しているものを対象とした。

調査結果によると、ポイントサービス/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率は楽天モバイルが前回調査(2023年8月時点)に引き続きトップだった(データ1・2・4・5)。特に、エコシステムの要となるポイントサービスのクロスユース率は74.7%で過去最高を記録、2位のドコモ(36.6%)にダブルスコアの差をつけている。ソフトバンクはポイントサービスのクロスユース率を前回調査比で3.8ポイント増の35.5%まで伸ばし、ドコモのクロスユース率に近い割合まで追い上げた(データ2)。QRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクが55.5%(0.2ポイント増)でトップを堅持、他の3キャリアも3割前後のクロスユース率を維持しており、QRコード決済の普及が進んでいる(データ3)

※ 2023年8月分の集計から楽天モバイルは楽天MNOサービス利用者のみ集計

◆ポイントのクロスユース率は楽天が7割超でトップ、楽天以外は3割前後を維持

携帯キャリア(グループ企業含む)が提供するポイントサービスのクロスユース率は、楽天モバイルユーザーによる「楽天スーパーポイント」が74.7%で最も高く、次いで「dポイント」の36.6%だった(データ2)。楽天の74.7%は2019年9月に調査を開始してから過去最高となる比率であり、競争環境が厳しさを増すなかで2位のドコモとの差を広げている。

※2022年は調査未実施

※ソフトバンクは2021年までTポイントで集計

楽天は2023年12月にSPU(スーパーポイントアッププログラム)を改訂した。楽天モバイルの対象サービス契約者は常に通常の4倍のポイント還元率になり、モバイルユーザーが楽天市場を使うメリットが大きくなった。このようなキャンペーンの実施がクロスユース率の向上に寄与していると考えられる。 

前回調査時と比較して最も高い伸びを示したのは、ソフトバンクユーザーによる「PayPayポイント」で3.8ポイント増の35.5%。ソフトバンクユーザーによるクロスユース率は今回調査した4項目すべてで増加しており、複合的にクロスユース率を伸ばしたのではないかと考えられる。なお、ソフトバンクは2022年3月31日付で「Tポイント」との提携を終了したため、2023年8月の調査から「PayPayポイント」で集計をしている。Tポイント提携時のソフトバンクユーザーのクロスユース率は4割程度で、PayPayポイント移行後に下がっていたクロスユース率はTポイント提携時に近い水準まで戻ってきている。2023年10月から開始した「魔法のようにポイントが貯まる!」をコンセプトにした新料金プラン「ペイトク」が始まったこともあり、ユーザーへのソフトバンク経済圏の訴求が強まったとみられる。auは、2023年9月からau PAY カードやau PAY(QRコード決済)利用時のポイント還元率がアップする「au マネ活プラン」の提供をスタートしており、クロスユース率は2.2ポイント増加した。

KDDIはローソン、三菱商事との連携を強め、「Ponta経済圏の拡大などによるお客さま接点の強化」を目指している。取り組みの一例として、2024年10月から「auスマートパスプレミアム」を「Pontaパス」と改め、ローソンでスマホ決済au PAY利用時にPontaポイント還元率を0.5%上乗せするなどサービスの強化をする予定だ。

ドコモは前回調査時から3.8ポイント減となった。ドコモはソフトバンクやauの新料金プラン提供開始時期からはやや遅れるかたちで、2024年4月からd払いの還元率がアップする「ahamoポイ活プラン」を開始。さらにdカードでの買い物でdポイントが貯まる「eximoポイ活プラン」を2024年8月から開始した。ポイント重視の新たなプランの開始で、今後のクロスユース率向上に期待がかかる。

◆QRコード決済はソフトバンクが5割超で引き続きトップ

携帯キャリアが提供するQRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクユーザーによる「PayPay」が55.5%で最も高く、前回調査に引き続き50%を超えた。次いで楽天ユーザーの「楽天ペイ」が35.5%だった(データ3)

ソフトバンクはモバイルユーザー向けに提供している優待特典の「ソフトバンクプレミアム」でレストランやドラッグストアなどでのPayPay支払い時に使えるポイント還元クーポンを毎月配布しており、ユーザーのPayPay利用を促進している。2024年8月調査時と比較して最も高い伸びを示したのは楽天ペイで、4.3ポイント増加した。楽天モバイルは新規申し込み者を対象に「楽天ペイのお支払金額3.5%還元(2024年6~7月)」や「楽天ペイでのはじめてのお支払いで最大3000ポイント還元(2024年8~9月)」といったキャンペーンを月ごとに展開しており、楽天モバイルユーザーの楽天ペイ利用を促進している。一方で、auは0.1ポイント増、docomoは2.9ポイント減となった。

QRコード決済に関しては、各社のユーザー囲い込みが最も進んでいる。【調査結果2】②携帯キャリアとポイントサービスのクロスユース率(上位5サービス)をみると、すべてのキャリアで自社のQRコード決済が1位を獲得している。ソフトバンクは2位が楽天Payで5.8%、auと楽天、ドコモユーザーは共通してPayPayが2位だった。特筆すべきは「カード会社のタッチ決済」で、クロスユース率は数%と少ないものの、全キャリアユーザーで共通して利用率が伸び、楽天ユーザーは前回調査時の5位から3位、ドコモ、auユーザーの中ではランク外から4位にランクインし、存在感を強めている。

◆クレジットカードのクロスユース率トップは楽天、伸び率はPayPayカードがトップ

携帯キャリアが提供するクレジットカードのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天カード」が65.0%で最も高く、次いでドコモユーザーによる「dカード」が22.9%だった(データ4)

前回調査時と比較して、ソフトバンクは1.4ポイント増と伸び率はソフトバンクが最も高かった。ソフトバンクは2023年10月から「ペイトク」などの新料金プランで「PayPayカード割」の提供を始めたことで、クロスユース率が伸びたと考えられる。しかし、ソフトバンク、auユーザーが最も利用しているカードは楽天カードで、自社クレジットカードのクロスユース率を上回っている(補足2-③携帯キャリアとクレジットカードのクロスユース率)。前回調査と比較しても楽天カードを最も利用していると答えたユーザーの割合はほとんど変わらず、岩盤層化しているようだ。

◆ECサイトではソフトバンクと楽天が増加

携帯キャリアが提供するECサイトのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天市場」が59.7%で最も高く、次いでソフトバンクユーザーによる「Yahoo!ショッピング」の24.7%だった。3位はauユーザーによる「au Payマーケット」で6.6%、ドコモユーザーによる「dショッピング」は1.7%だった(データ5)

ソフトバンクは優待特典の「ソフトバンクプレミアム」でクーポンを利用すると最大で10%のポイント還元が受けられる「SUPER PAYPAY COUPON」を毎月発行しており、ECサイトの利用を促している。楽天は「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」の改訂もあり、モバイルユーザーが楽天市場を使うメリットがより大きくなった。もともと楽天市場を使っていたユーザーが楽天モバイルを使う「逆輸入」のような状況もあり、高いクロスユース率を維持していると思われる。

前回調査に引き続き、4キャリアユーザーのEC利用率トップは楽天市場だった(補足2-④携帯キャリアとECのクロスユース率)。ソフトバンクのみ、Yahoo!ショッピングの利用率がAmazonを抑え2位にランクインしているが、楽天、au、ドコモユーザーは楽天市場に次いでAmazonをよく利用していることがわかる。4キャリアで最もクロスユース率の低いドコモのdショッピングは前回調査と変わらず5位だった。ECに関する新たな取り組みとして、ドコモは2024年4月から、Amazonを利用するとdポイントが貯まるポイントプログラムを開始した。Amazonを最も利用しているドコモユーザーは32.7%と楽天市場に次いで多く(補足2-④携帯キャリアとECのクロスユース率)、その割合は前回調査比で約3ポイント上昇している。この連携は今後、ドコモ経済圏の広がりに影響していくと考えられる。

◆楽天は新規ユーザーが増加するも、引き続き高いクロスユース率を維持

楽天モバイルは前回調査時点(2023年8月)のユーザー数(500万人)から1年で200万回線以上ユーザー数を伸ばしており、1年以内の新規ユーザーの割合が高まる中でも高いクロスユース率を維持している。「楽天経済圏」にいるユーザーのモバイル取り込みに成功していることがうかがえる。

QRコード決済に関しては、2019年時点でソフトバンクを除きクロスユース率が各キャリアで1割以下だったが、2024年には各社とも3割近くまで上昇し、経済圏の拡大が進んだ。

クロスユース率に関しては楽天が圧倒的だが、この1年間でドコモやau、ソフトバンクが独自の料金プランを発表し、料金プランの改革を通じてユーザーの経済圏への参加を促している。例えば、ソフトバンクの「ペイトク」は「PayPay」での決済時に最大5%のポイント還元を提供し、ドコモの「eximo ポイ活」では「d払い」や「dカード」で決済ごとに通常たまるポイントに加え最大5%のdポイントが進呈される。auも「auマネ活プラン」を契約し、かつ「au PAYゴールドカード」を利用しているユーザーは、au PAYゴールドカードで通信料金を支払った場合の還元率を12ヵ月間最大20%に引き上げ、携帯料金以外の通常の決済時のポイント還元率も0.5%アップする。新たなプランとして提供することで、新規ユーザーや自社ユーザーでありながら他社のサービスをメインで使っているユーザーの興味を引き、結果的により多くのユーザーを経済圏に取り込む効果が期待される。

料金プランをきっかけに、ライトユーザーをヘビーユーザーへと変えることが、今後さらに強固な経済圏の構築に寄与するだろう。

以上

 

【補足1】携帯キャリアと各種サービスのクロスユース率

 

【補足2】携帯キャリアと各種サービスのクロスユース状況(上位5サービス)


■調査概要

  1. 調査対象:15~79歳の男女

  回答件数:3万2916人

(4キャリアを個人利用かつメインで利用している回答者を対象に分析。

ドコモ48.8%(1万6073人)、au 23.5%(7750人)、ソフトバンク 14.3%(4719人)、楽天モバイル 13.2%(4374人)

  1. 調査方法:Webアンケート
  2. 調査期間:2024年8月8~16日

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