世界で比較した日本のPixel販売価格は安価でシェア急拡大

「世界のPixel販売価格調査」(2024年8月)

2024年08月27日

■日本のPixel 9の販売価格は世界22の国・地域で2番目の安さ

■日本のPixel指数は小さい順で19位の2.83%、販売価格は平均賃金に対しては高い

■Pixelの躍進はAndroid OSの救世主となるか

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、世界22の国・地域(以下、国と記載)※1を対象に米グーグルのスマートフォン「Pixel」の販売価格を調査し、その結果を発表した。本調査では2024年8月13日(現地時間)に米国で発表したPixel 9シリーズを中心に、各国のグーグルオンラインストア(以下、グーグルストア)の価格を比較分析した。対象モデルはPixel 9シリーズからPixel 9 128GB(以下Pixel 9)、Pixel 9 Pro 256GB(以下Pixel 9 Pro)、Pixel 9 Pro XL 512GB(以下Pixel 9 Pro XL)、Pixel 9 Pro Fold 256GB(以下Pixel 9 Pro Fold)の4モデル、加えて2024年5月に発売したPixel 8a 128GB(以下Pixel 8a)、2023年10月に発売したPixel 8 128GB(以下Pixel 8)の計6モデルとした。比較分析はグーグルストアでの直販価格に各国通貨と円の為替レートを用いた円換算ベースの金額とした。

調査の結果、Pixel 9シリーズの日本での販売価格は、Pixel 9(128,900円)、Pixel 9 Pro(174,900円)、Pixel 9 Pro XL(212,900円)、Pixel 9 Pro Fold(257,500円)で、Pixel 9は22カ国の中で台湾に次いで2番目に安く、Pixel 9 ProとPixel 9 Pro XLは3番目に安く、Pixel 9 Pro Foldは最も安い国となった。Pixel 8a(72,600円)は最安、Pixel 8(112,900円)は2番目に安かった。
※1:モデルや時期によって販売国・地域は異なる

Pixel 9は日本が2番目の安さ

2024年8月発表のPixel 9の販売価格は128,900円で日本は2番目に安い国だった。最安は台湾(120,409円)、3番目はグーグルが本社を構える米国(129,838円)、4番目はシンガポール(134,719円)、5番目はオーストラリア(134,900円)となった。日本を除いた21カ国の平均販売価格は145,197円で日本での販売価格よりも約16,300円高く、最高値のノルウェー(156,806円)は日本より約27,900円高くなっている。

Pixel 9 Proの販売価格は174,900円で日本は3番目に安かった。最安はスイス(163,621円)、2番目は台湾(168,136円)、4番目は米国(178,588円)、5番目はシンガポール(179,663円)の順となった。日本を除く平均は181,938円で日本よりも約7,000円高く、最高値のノルウェー(192,917円)は日本よりも約18,000円高い。

Pixel 9 Pro XLの販売価格は212,900円で日本は3番目に安かった。最安は台湾(199,955円)、2番目はスイス(203,276円)、4番目はイタリア、オーストリア、オランダ、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー(212,951円)の順となった。日本を除く平均は216,308円で日本よりも約3,400円高く、最高値の英国(230,577円)は日本よりも約17,700円高い。

グーグル初の二つ折りスマートフォンPixel Foldの後継モデルとしてPixel 9シリーズに加わったPixel 9 Pro Foldの販売価格は257,500円で日本は最も安かった。2番目は台湾(259,045円)、3番目はシンガポール(269,551円)、4番目はオーストラリア(269,900円)、5番目は米国(292,338円)の順となった。日本を除く平均は304,040円で日本よりも約46,500円高く、最高値の英国(336,346円)は日本よりも約78,800円高い。

4モデルとも日本での販売価格は22カ国の中でも1~ 3番目の安値だった。日本を除く安値の国はグーグルが本社を構える米国、加えて台湾、オーストラリア、シンガポールといった東アジア・オセアニア地域となっていることが明らかとなった。一方、最高値はノルウェーや英国などの欧州の国になった。

Pixel 8aは日本が最安

Pixel 8aの販売価格を、Pixel 8aが発売された2024年5月の価格と、Pixel 9シリーズが発表された2024年8月での価格で比較した。日本が最安であることは変わらず、為替相場の影響によって他の国との価格差が小さくなった。

Pixel 8aは2024年5月時点では20カ国で販売され、2024年8月時点では22カ国に販売エリアを拡大している。日本での販売価格は、いずれの時点も72,600円で最安だった。日本を除く平均は2024年5月(91,992円)では日本よりも約19,400円高く、2024年8月(89,494円)では約16,900円高かった。最高値は2024年5月では英国(97,843円)、2024年8月ではPixel 9シリーズ発表から取り扱いを開始したチェコ(96,600円)だった。

 

Pixel 8はセールの実施で順位が変動

Pixel 9シリーズが発売されたことで型落ちモデルとなったPixel 8 は、発売時の2023年10月とPixel 9シリーズ発売の2024年8月のどちらも112,900円で2番目の安さだった。日本を除く平均は2023年10月(122,524円)では日本よりも約9,600円高く、2024年8月(115,728円)では約2,800円高かった。2023年10月の最安値はオーストラリア(109,000円)、最高値はスウェーデン(129,595円)で、2024年8月の最安値はスイス(106,724円)、最高値はシンガポール(123,483円)だった。

発売から約1年の間に各国セールによって価格が変動しており、日本の販売価格の順位(安い順)にも以下のような変動があった。為替による影響で順位変動があるものの、3位内での推移が目立つ。日本でも新生活キャンペーンと題して割り引きをしているのと同様、各国でキャンペーンを実施している。その影響で2024年4月には日本の順位は11位まで後退した。各国のオンラインストアでの直販の比較対象としては、アップルのiPhoneが代表といえるだろう。グーグルは上記の通り割引を実施しているのに対して、アップルでは実施していないという違いがあるようだ。

 

日本のPixel指数(Pixel 9価格÷平均賃金)は2.83%

国や地域で価格設定が異なるPixelの購入のしやすさを比較するため、それぞれの国のPixel 9の販売価格が年間の平均賃金に占める比率をPixel指数として算出した。なお、平均賃金はOECD(経済協力開発機構)によるデータを参照(出典1)。OECD加盟国以外はIMF(国際通貨基金)による1人当たりGDPを代替データとして活用した(出典2)。同指数は値が小さいほどPixelが購入しやすいといえる。

日本のPixel指数は2.83%で、22カ国のうち指数の小さい順で19番目、大きい順では4番目と購入しやすさでは下位にランクされた。最も小さいのはシンガポールで0.7%、2番目はスイス(0.85%)、3番目は米国(1.09%)の順となった。最も大きいのはポーランドで4.91%、2番目はチェコ(4.29%)、3番目はポルトガル(4.18%)の順となった。

Pixelシリーズの躍進はAndroid OSの救世主となるか

日本のスマートフォン市場は50%超がアップルのiPhoneであり、世界有数のiPhone人気国といえる。グーグルのPixel事業の目的は端末ベンダーとしての売り上げ・利益にとどまらず、Android OSのシェアを拡大させることで、プラットフォーマーとしての広告やコンテンツ事業を発展させていくことが狙いであろう。そうしたなか、日本市場は人口も減少傾向でスマートフォンの新規ユーザー獲得も困難になってきているため、目的達成のためにはiPhoneユーザーを獲得することが重要となるだろう。2022年度と2023年度のシェアを比較すると、確かにグーグルのシェアは大幅に上昇したが、Appleのシェアも2.1ポイントと微増している。3位から5位のシャープ、サムスン電子、ソニーのシェアはそれぞれ微減しており、シェアのみを見比べるとグーグルが他のAndroidメーカーからシェアを奪ってしまっているともいえる。しかし、グーグルの拡大がなかった場合にはアップルのシェアがさらに上昇していた可能性も否定できないため、短絡的に結論づけるのは難しい。グーグルはPixel 9シリーズではProのラインアップをPixel 9 Pro(画面サイズ6.3インチ)、Pixel 9 Pro XL(6.8インチ)の2モデルに拡大している。これはアップルが通常のiPhoneに加えて、ProとPro Maxを展開しているのと同様であり、日本人がコンパクトハイエンドを好む傾向があることを意識したと発表するほど、日本市場に注力していることがうかがえる。Pixelの躍進はAndroid OSにとっての救世主となるか。今後のOS及びメーカー勢力図の動向に注目していきたい。

■調査手法
「販売価格」:グーグルストアでの直販価格
      (消費税などの税金を含む。米国はニューヨーク州、カナダはオンタリオ州として計算)
「為替」:各Pixelの発表~発売時点
「対象国・地域(全22)」2024年8月のPixel 9販売価格が安い順(”/”は同額の意)
 台湾、日本、米国、シンガポール、オーストラリア、カナダ、スイス、ドイツ/オーストリア/フランス/スペイン/オランダ/イタリア/ベルギー、ポルトガル/アイルランド、スウェーデン、デンマーク、チェコ、英国、ポーランド、ノルウェー。 

出典1:OECD(経済協力開発機構)「平均賃金」
https://www.oecd.org/en/data/indicators/average-annual-wages.html
現地通貨による平均賃金に2024 年8 月15 日時点の為替をかけて算出

出典2:IMF(国際通貨基金)「一人当たりGDP」
https://www.imf.org/external/datamapper/PPPPC@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD
一人当たりGDPの購買力平価(PPP)換算の米国ドル金額に2024年8月15日時点の為替をかけて算出 

参考1:MM総研「2023年度通期 国内携帯電話端末の出荷台数調査」
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=624 

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