日本版ライドシェアの利用意向は2割以下
「日本版ライドシェアに関する調査」(2024年6月)
2024年07月29日
■「利用したい」と回答した人は18.3%にとどまる
■「タクシーよりも安い」という誤った認識が浸透
■今後の方向性は「日本版のまま普及」を望む人が最多
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、全国の15~79歳の男女1000人を対象にWebアンケート調査を実施し、「日本版ライドシェア」に関して調査した。日本版ライドシェアとは、一般ドライバーがタクシー事業者の管理の下、有償で他人を運送するサービスで、2024年4月から一部地域で始まっている。アンケート調査実施においては、前述の概要を明示した上で回答してもらった。
調査結果によると、日本版ライドシェアを「利用したい」と回答した人は、18.3%にとどまった(データ1)。移動手段の確保が難しい「交通空白地」の解消を目的として、国も普及に向けて動きを強めているが、8割以上の人が「利用したくない」とする厳しい結果となった。
【データ1】日本版ライドシェアサービスの利用意向
「タクシーよりも安い」という誤った認識が浸透
日本版ライドシェアのメリットを聞いたところ、「タクシーと比べて料金が抑えられる」が21.5%で最も多かった(データ2)。現在の運用上はタクシーと同額であるため、正しい理解が広まっていないことがわかる。「人手不足に効果的」が20.7%で続いている。
【データ2】日本版ライドシェアのメリットと考えるもの(複数回答)
同様にデメリットを聞いたところ、「犯罪などに巻き込まれる可能性がある」が31.1%と最も多かった(データ3)。「トラブル発生時の対応方針が不安」(28.5%)、「ドライバーの運転の安全管理体制が不安」(22.9%)と続いている。ユーザーに対する安心安全の担保とその周知が、より一層求められる。
【データ3】日本版ライドシェアのデメリットと考えるもの(複数回答)
今後の方向性は「日本版のまま普及」を望む人が最多
日本版ライドシェアの今後の方向性について聞いたところ、「日本版のまま広げるべき」が33.6%で最も多かった(データ4)。「日本版でエリアや時間帯もこのまま」が26.7%で続いている。「タクシー会社が運行主体にならない有償型ライドシェアサービスの全面解禁」は16.5%と、「有償型ライドシェア自体を廃止」の19.1%を下回った。
【データ4】日本におけるライドシェアのあるべき方向性
地方などにおける移動課題に対して効果的と思うものを聞いたところ、「タクシーやバス運転手の賃金や労働環境の向上」が33.5%で最も多かった(データ5)。「完全自動運転の無人タクシーやバス」が25.9%で続き、「日本版ライドシェア」は23.8%で3番目に多かった。
【データ5】地方などの移動課題に効果的と思うもの(複数回答)
あくまで移動課題解決の1つの手段という認識の共有を
今回の調査では、身の回りの生活における公共交通を10段階(1:不便⇔10:便利)で評価してもらった。日本の人口の約半分を占める人口上位8都府県(東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、兵庫県、福岡県)とその他39道府県で分けたところ※、1~5とした人が上位8都府県では40.2%だったのに対し、下位39道府県では59.6%に上った(データ6)。
高齢化が進む中、自家用車への依存度を下げていくためにも、特に地方における公共交通の「リ・デザイン」は待ったなしの状況だ。地方の移動課題は日本版ライドシェアだけで解決できるものではない。ドライバーなど交通従事者の労働環境改善などはもちろんのこと、地域全体を俯瞰的に見た中で、自動運転やAIオンデマンド交通、MaaSなどといった最新の技術やサービスも最大限活用しなければならない。日本版ライドシェアもその中の1つの柱に過ぎないという認識を共有する必要がある。
また、現在のライドシェアの議論は台数を増やすことに焦点が置かれているが、ただ単に台数を増やすだけでは、都市部での交通渋滞を悪化させる可能性もある。一部地域ではオーバーツーリズムによる交通課題が浮き彫りになっているほか、2025年には大阪・関西万博が開催されるなど、移動需要を効率的にさばく必要が出てくる。交通の「量」だけではなく、同じ目的地、方向に向かう複数組が1つの車両に相乗りするなどの「質」を高めるための議論も必須だ。
【データ6】身の回りの生活における公共交通への評価
■調査概要
調査対象:全国15~79歳の男女1000人
調査方法:Webアンケート
調査期間:2024年6月28~30日
※総務省統計局2024年4月公表「人口推計(2023年10月1日現在)」より
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2023np/index.html
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