単価上昇で出荷台数の伸び悩み続く

「2023年度上期 国内パソコン出荷台数調査」

2023年11月30日

■2023年度上期の出荷台数は前年度同期比2.7%減の537.9万台で、3年連続の減少

■平均出荷単価は11.5万円と、コロナ禍前と比較し約2.5万円の上昇

■出荷台数が増加に転じるのは2024年度以降となる見通し

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年度上期の国内パソコン出荷台数を調査し概要をまとめた。2023年度上期(2023年4~9月)の国内パソコン出荷台数は537.9万台(前年度同期比2.7%減)となり、3年連続で減少した(データ1)。コロナ特需の消失、急激な円安による製品価格の上昇、Windows10の2025年10月のサポート期間終了を前にした買い控えなどが出荷台数の主な減少要因として挙げられる。メーカーシェアでは、NECレノボが123.5万台でシェア首位を維持したが、ノートブックの出荷が伸びず0.2ポイントシェアを落とした。製品出荷価格は11.5万円とコロナ禍前と比較し2.5万円近く上昇し、買い替えの鈍化要因となっている。

【データ1】国内パソコン出荷台数シェア(2022年度上期/2023年度上期)

※詳細データは補足データを参照

【補足データ】国内パソコン出荷台数シェア詳細(2022年度上期/2023年度上期)

 

個人向け出荷は価格高騰を受け5.9%減

個人向け出荷台数は174万台、前年度同期比5.9%減となった。アップルは品不足を解消して以降、デスクトップ・ノートブックともに好転し、シェアを3.2ポイント上げ2位となった(データ2)。市場全体としては円安による製品価格の上昇に加え、コロナ禍での特需の消失により2023年度通期の需要は大きくは伸びない可能性が高い。各社とも年末年始向けのモデルの値上げも余儀なくされ、買い控えの要因になると予想される。

【データ2】個人向け出荷台数

法人向け出荷はGIGAスクールを除くと3%増と回復傾向

法人市場は、GIGAスクール特需の反動が若干残り、前年度同期比1.0%減の363.9万台となった(データ3)。GIGAスクール需要を除くと3.0%増とプラスに転じた。Windows10の延長サポートが2025年10月に終了することを受け、2023年下期以降は買い替えによる需要増が続くと予測する。一方で、GIGAスクールは2024年度から2026年度にかけて端末の更新を控えており、需要増が見込まれている。

【データ3】法人向け出荷台数 

平均出荷単価が11.5万円まで上昇

半期ごとの平均出荷単価は、2023年度上期で11.5万円と、コロナ禍前の2019年度上期と比較し2.5万円近く上昇した(データ4)。デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)の進展を背景に、ハイスペックPCへの需要の高まりに、円安による製品価格の高騰も加わり、平均単価が上昇している。特に在宅勤務が増えた現在では、効率的に業務を行えるよう価格の高いハイスペックなモバイルノートやノートブックへの需要が高い。

【データ4】パソコンの平均出荷単価の推移

2023年度通期は1095.9万台と3年連続の減少と予測

2023年度下期もパソコン需要の好転は期待できず、通期の出荷台数は前年度同期比2.4%減の1095.9万台となる見通し。価格上昇の影響は、2023年度下期も続き、個人を含む市場全体の買い替え需要による台数増が期待できるのは2024年度以降だろう(データ5)。ただし、出荷金額は上期時点で6,205億円と前年度同期比3.2%増加している。

単価上昇局面でも、在宅勤務の広がりやDX推進でパソコン選びは高性能品へのシフトが続くだろう。加えてDX推進に不可欠なクラウドサービスの活用に伴いセキュリティ対策が必要となる。ユーザーはAI活用に必要な性能とセキュリティ対策を両立するパソコン選びが重要となる。ベンダーはユーザーの購入から維持管理にかかわる総保有コスト(TCO)を抑制して端末投資に資金を回せるように、パソコンのライフサイクルマネジメントを提案することが求められる。

【データ5】国内半期別パソコン出荷台数推移と予測

 

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