2000年度以降の上期総出荷台数として過去最少

「2023年度上期 国内携帯電話端末の出荷台数調査」

2023年11月09日

■2023年度上期の携帯電話出荷台数は1223万台(前年同期比17.1%減)

■スマートフォンは1157.8万台(17%減)、5G対応比率は99%(1145.8万台)

■通期出荷は過去最少の2961万台、うちスマートフォンは2805万台(6%減)と予測

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年度上期(2023年4~9月)の国内携帯電話端末の出荷台数を調査し、その結果を発表した。

2023年度上期の総出荷台数は2022年度上期を下回り1223万台(前年同期比17.1%減)で、2000年度以降の上期出荷統計としては最も少ない台数となった。内訳をみると、スマートフォンが1157.8万台(17%減)、フィーチャーフォンは65.2万台(18.7%減)、総出荷台数に占めるスマートフォン比率は94.7%(0.1ポイント増)となった。5Gスマートフォンは1145.8万台(14.9%減)、スマートフォン全体に占める5G対応比率は2022年度上期の96.5%から99%に拡大した。スマートフォン出荷台数が大幅に減少した要因は、①端末の値引き販売の減少②円安・物価高騰の影響による端末価格の上昇③キャリアの在庫調整――の3点と分析。フィーチャーフォンは減少の一途をたどっており、過去最少を更新した。

今後の予測として、2023年度通期の総出荷台数は2961万台(7.3%減)、そのうちスマートフォン出荷台数は2805万台と前年度比6%減と分析。大幅減となった上期とは異なり、下期は復調すると予測する。要因としては、①iPhone 15シリーズの好調②2023年内には端末値引き最大4万円に引き上げ(見込み)③2024年1月末のソフトバンク3Gサービス終了に伴う買い替え需要――の3点があげられる。

アップルが12期連続で1位を獲得

2023年度上期のメーカー別スマートフォン出荷台数シェア1位はアップルでシェア49.2%(5.7ポイント増)となった。2023年9月に発表した最新のiPhone 15シリーズは全4モデル。2022年のiPhone 14シリーズでは全4モデル中3モデルが9月発売、1モデルが10月発売だった。米国市場でのiPhone 15販売価格はiPhone 14から据え置きとなっているが、日本では値上げとなった。円安による影響と考えられ、日本市場での価格は上昇傾向にある。値上げによる影響は下期以降と想定され、シェア1位で人気のiPhoneが今後どのように評価されるのか興味深い。

2023年度上期 メーカー別スマートフォン出荷台数シェア

以下、2位グーグル、3位シャープ、4位サムスン電子、5位ソニーの順となった。上位5メーカーで87%を占める。4年ぶりにNTTドコモが取り扱いを再開したグーグルがランク外から2位に順位を上げた。Pixel 7aをはじめAndroid市場では台数が伸び悩んでいる中~高価格帯の端末で人気を集めている。シャープはAQUOS wish3、サムスンはGalaxy S23シリーズとA54 5Gがけん引した。ソニーはXperiaシリーズの幅広いランナップが多様なユーザーから支持を集めている。

2023年度通期の総出荷台数は2000年度以降で過去最少の見通し

2023年度通期の総出荷台数は2961万台(前年度比7.3%減)で2000年度以降の通期出荷台数としては過去最少になると予測する。

2023年度通期のスマートフォン出荷台数は2805万台(6%減)と予測する。5Gスマートフォンの出荷台数比率は2026年度以降100%になると予測する。

端末値引き4万円の動向と下取り制度がポイント

2022年7月のiPhone値上げにはじまり、円安・物価高騰による製造原価の上昇に伴い、すべてのメーカーの端末販売価格は値上がり傾向を示している。スマートフォンの機能・性能は進化を続けてきたことで、4万円未満の低価格モデルでも必要十分と捉えるユーザーも多く、実際にAndroid市場ではボリュームゾーンとなっている。また、昨今のスマートフォンは壊れにくく、買い替えモチベーションも沸かない状況となっているため、端末利用期間の長期化がすすんでいる。その結果、2023年度上期のスマートフォン出荷(1157.8万台)は、2015年度以降9年間の上期出荷台数として最少となった。厳しい市場環境下で注目を集めているのが、2023年内の施行が想定される、電気通信事業法の一部改正による端末値引きに関する制度変更である。物議を醸してきた1円販売を実現する端末単体販売における値引きの禁止と、端末と回線セット販売時の値引き上限4万円(現在は2万円、税別)の2点が大きなポイントである。販売価格が8万円以上の端末に限定して、上限4万円値引きが可能となる。最終的な販売価格及び値引き額は各携帯キャリアが設定するため不透明であるが、これまで2万円であった値引き額がすべての高額端末で4万円に引き上げられる可能性は低いだろう。MNP・新規獲得やコンテンツ利用などに貢献する端末に手厚く充当されると考えられる。

電気通信事業法の一部改正で、あわせてポイントになるのが端末下取りプログラムである。端末価格の高騰に対応する形で、携帯キャリアは36回や48回の割賦販売を提案している。例えば48回の場合は2年後に下取りすることで、実質端末を約半額で購入できるという制度である。しかし、2年後の下取り金額の調整により、最初の2年間で支払う割賦金額を大幅に低減させる一種のキャンペーン施策も見受けられる。こうした販売手法への規制が今後の高額端末の売れ行きに影響するだろう。

総じて今回の改正により値引き額上限が引き上げられることは、出荷減少と利益率悪化で苦戦するメーカー及び家計のやり繰りに苦慮するユーザー双方にとってプラスになるだろう。値引き額の増加は携帯キャリアにとっても中期的にはプラスに働くと分析する。日本はシェア約半数を占めるiPhoneは別として、Android市場は先進国の中で高額端末の人気が低い。5Gネットワークを本格活用するサービスや今後のさらなる発展においては、一定規模の高機能端末の普及が必須であり、過去に3Gや4Gサービスを立ち上げた時と同様のビジネスモデルの再来が期待されるためである。まずは、電気通信事業法の一部改正の正式決定を見守りたい。

 

■携帯電話出荷台数に含まれる端末
① 従来型携帯電話(以下、フィーチャーフォン。Android OSの二つ折り端末を含む)
② スマートフォン
・通信事業者別(5分類):1.ドコモ、2.KDDI(au・UQモバイル含む)、3.ソフトバンク(ワイモバイル含む)、4.楽天モバイル、5.オープン(メーカー直販やMVNO・量販店・ECサイトなどを経由して販売されるSIMフリー端末)
③ 総出荷台数(①+②) 

■スマートフォンの定義 以下を条件としてMM総研による分類
①以下OSを搭載 (Android、iOS、Windows)
②音声通話が可能 (画面7インチ以上でヘッドセット利用を想定した端末は含まない)
③アプリやソフトウェアなどのカスタマイズが可能
④OS環境として(アプリ)開発仕様が公開されていること
⑤キャリア及びメーカーがスマートフォンと位置づけている製品
※調査時点のため、今後の端末発売状況等に応じて予告なしに変更する可能性があります 

補足1:世界のiPhone販売価格調査(2023年9月)
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=598 

■報道に際しての注意事項
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株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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