教育ICT市場で外資ベンダーが存在感を示す

「小中GIGAスクールにおけるICT環境のベンダーシェア分析」

2023年10月12日

■Googleが1人1台端末のOSおよび汎用クラウドツールでシェア1位を獲得
■OEMメーカーではChromeOS端末でLenovo、Windows OS端末でNECがシェア1位
■学習eポータルではNTTコミュニケーションズがシェア1位を獲得
■校務支援システムではEDUCOMがシェア1位を獲得

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、GIGAスクール構想実現に向けたICT環境について、端末やソフトウェアのベンダーシェアを分析した。全国1,741自治体(市区町村に設置された教育委員会)を対象に、2021年1月~2023年5月にかけて6回にわたり電話アンケート調査をした結果を突合分析している。

分析結果から、端末メーカーや汎用クラウドツール(※1)においては外資ベンダーがシェア上位を占め、存在感を示した(データ1)。GIGAスクール構想以前の児童生徒3人に1台の端末やPC教室に配備された端末では、国内ベンダーが主流であった。この数年で勢力図が大きく変わった形である。

学習eポータル(※2)や校務支援システムにおいては国内ベンダーが高いシェアを維持している。

※1 GIGAスクール構想を契機に学校教育で利用されているクラウドツール。コミュニケーションなどの汎用的な機能を備えている。主にGoogle WorkspaceとMicrosoft 365の教育市場向けの製品を指す
※2 1人1台端末を通じてデジタル教科書・教材などを利用した学習データをより効率的に活用するためのデジタル学習プラットフォーム。主な機能として①学習の窓口機能、②連携のハブ機能、③文科省システム(MEXCBT)のアクセス機能の3つを有する

【データ1】小中GIGAスクールにおけるICT環境のベンダーシェア
 

1人1台端末のOSシェア1位はGoogle

GIGAスクール構想を契機に配備された児童生徒1人1台端末(以下GIGAスクール端末)の稼働台数についてデータを突合し、約902万台を分母に分析した(データ2-1)。OS別シェアは、1位がGoogleのChromeOSで42%を占めた。2位はMicrosoftのWindows OSが29%、3位は2位と僅差であったが、AppleのiPadOSが29%となった。

GIGAスクール構想は、高速インターネットを通じてクラウド活用を進めることで公正に個別最適化された学びの環境整備をめざしている。ChromeOSがトップシェアとなった理由は、最もクラウド活用に適したOSと教育現場が評価したためとMM総研は分析している(GIGAスクール端末の選定における3OS評価と活用課題の調査、2020年11月、MM総研)。

【データ2-1】GIGAスクール端末のOS別稼働台数シェア(n=902万台)


Windows OSとChromeOSにはOEMメーカーが存在するため、OSごとの稼働台数をベースとしてメーカーシェアを分析した(データ2-2)

ChromeOS端末(分母の稼働台数は約382万台)では、1位がNECで30%を占めた。次いでLenovoが23%、HPが14%となった。Windows OS端末(分母の稼働台数は約261万台)では、Lenovoが26%、dynabookと富士通が22%であった。Windows OSでは、ChromeOSと比べ、シェア5%未満のメーカーが多く、その他の占める割合が大きくなっている。

GIGAスクール端末全体をメーカー別にみれば、Appleがトップシェアであり、2位は2つのOSで高いシェアを占めたLenovo、3位はChromeOSでトップシェアのNECとなっている。


【データ2-2】GIGAスクール端末のOS別稼働台数シェア

汎用クラウドツールのシェア1位はGoogle

GIGAスクール構想を契機に学校教育で利用されている汎用クラウドツールについては、自治体数をベースに、1,666団体を対象として分析した(データ3)

導入率は94%とほぼ全ての自治体が導入している。この製品は1自治体で複数導入するケースがあるため、複数回答となるがGoogleが62%とトップシェアとなった。次いで、Microsoftが44%となった。

GoogleとMicrosoftはGIGAスクールを契機に教育向けの製品を用意し、無償でも利用できるようにしているため、導入が進んだ。Appleには表計算など個々のアプリはあるものの、汎用クラウドツールに相当するものがない。そのため、iPad採用自治体では汎用クラウドツールやその他のクラウドツールを利用している。

【データ3】汎用クラウドツールの導入状況

 

学習eポータルのシェア1位はNTTコミュニケーションズ

学習データを活用するためのプラットフォームである学習eポータルについては、自治体数をベースに、1,578団体を対象として分析した(データ4)

導入率は98%とほぼ全ての自治体が導入している。文部科学省が推進するMEXCBT(※3)のアクセス機能を有するため、導入が進んでいる。1位はNTTコミュニケーションズ(製品名:まなびポケット)で36%、次いで内田洋行(製品名:L-Gate)が34%、3位が文部科学省の開発委託事業を請け負ったオンライン学習システム推進コンソーシアム(製品名:実証用学習eポータル)で20%となった。

各社とも導入自体は無料であり、MEXCBTのアクセス機能以外の部分で有償のメニューを用意している。ただし、自治体の学習eポータルの導入目的はMEXCBTの利用がメインであり、有償メニューを利用しているケースはまだ少ない。

※3 文部科学省(MEX)とコンピューター・ベースド・テスティング(CBT)を組み合わせた造語。1人1台端末を利用し、オンライン上で学習やアセスメントができる公的CBTとして、文部科学省が推進している。

【データ4】学習eポータルの導入状況

 

MM総研取締役研究部長の中村成希は「ITインフラ配備の観点からみたGIGAスクール構想の要点は、高速インターネットとクラウド活用にある。これらにより地理的な条件や予算による学習環境の構築格差を減らし、持続的なIT運用が可能になる。世界で利活用が進む様々なAIモデルやデータ活用・分析環境を、OSや特定のプラットフォームに依存せずクラウド上で利用することで、今後の先端教育にも道は開ける」としている。一方で「インターネットへの接続環境整備に課題が残る。現在は、NTTが整備する光ファイバーを各学校に引き込むか、自治体が持つ専用線網を経由したインターネット接続が主流だが、帯域不足や学校内の無線LAN接続品質にトラブルが多い。通信事業者は、政府や自治体に対しエンドーツーエンドで通信品質を担保する学習環境の整備計画やネットワーク設計の強化を提言し、提案内容にも知恵を絞る必要があるのではないか。場合により固定回線だけでなくLTEや5G、ローカル5G、衛星通信などの技術を組み合わせていく提案も求められる」とコメントしている。
以上

 ■レポート発刊のお知らせ
本調査結果を掲載したレポートを発刊いたします。詳細については担当(高橋)までお問合せください。

■分析対象とした調査一覧
共通事項(①~⑥)
1.調査対象:全国自治体1,741の教育委員会(1,740団体)
2.調査方法:電話による聞き取り、一部e-mailやFAXによる調査票の送付・回収を併用

①2023年5月調査
1.架電先:教育委員会のICT整備担当
2.回答件数:1,246 団体(回収率 約72%) ※一部回答含む

②2022年12月調査
1.架電先:教育委員会の指導主事
2.回答件数:1,144団体(回収率 約66%) ※一部回答含む

③2022年5月調査
1.架電先:教育委員会のICT整備担当
2.回答件数:1,408団体(回収率 約81%) ※一部回答含む

④2021年10月
1.架電先:教育委員会の指導主事
2.回答件数:1,136団体(回収率 約65%) ※一部回答含む

⑤2021年7月
1.架電先:教育委員会のICT整備担当
2.回答件数:1,321団体(回収率 約76%) ※一部回答含む

⑥2021年1月
1.架電先:教育委員会のICT整備担当
2.回答件数:1,512団体 (回収率 約87%) ※一部回答含む

■報道に際しての注意事項

1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析から一部または全部を抜粋したものです。
2. 報道機関が引用する場合は、出典を「MM総研」と明記してください(MMは全角)。数値などは表ではなくグラフ化して掲載してください。
3. 報道機関以外が本プレスリリースの内容を引用・転載する場合は、MM総研による承諾が必要です。
4. MM総研の独自調査結果であり、公的機関の統計や企業の公表数値等と異なることがあります。また、作成時点におけるものであり、今後予告なしに変更されることがあります。
5. 本データを報道以外の以下用途で無断利用することを固く禁じます。
 -プロモーション(広告・販売促進資料・ホームページ掲載・チラシなど外部に発信する資料・データ)
 -セミナー・講演会
 -その他、営業目的・営利目的での使用
6. 調査の詳細、研究員コメント、データ利活用などについては、担当者までお問い合わせ下さい。

 ■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

本件に関するお問い合わせ先

(株)MM総研

担 当 : 中村、高橋、正置

所在地 : 105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー

連絡先 : 03-5777-0161

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