国内稼働台数は約32万台、前年度から19%増

「2022年度通期 国内電子黒板稼働台数調査」

2023年08月16日

■国内の電子黒板稼働台数は2022年度で9万台(前年度比19%増)
■GIGAスクール構想を受け、文教領域が9万台(同22%増)と成長をけん引
■成長が期待される民間企業は導入率が1割に満たず、需要喚起策が必要

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年4月から5月にかけて教育委員会、大学、民間企業にアンケート調査を実施し、国内における電子黒板※1の稼働台数を推計した。小中高・大学の文教領域ではGIGAスクール構想によるICT環境整備を受け、導入が加速した。民間企業ではコロナ禍を経てデジタル活用やハイブリッドな働き方の機運が高まり、徐々に導入が進んでいる。

◆国内の総稼働は約32万台、文教領域がけん引

調査結果から、国内における電子黒板の稼働台数は2022年度末時点で31.9万台と推計された。このうち、文教が約24.9万台であり、全体の78%を占める。民間企業では約7万台が稼働している(データ1)。文教・民間企業とも稼働台数は増加傾向にあるが、ここ数年では文教の伸びが特に大きい。2020年からスタートしたGIGAスクール構想が主な要因であり、政府による交付金や地方財政措置により、導入が進んでいる※2。大学においても政府支援を利用しながら、新型コロナ対応として2020年ごろに導入が進んだ。ただし、教育ICT化の機運が落ち着き、政府支援がなくなるとリプレースサイクルが長期化するなど、市場が急激に冷え込むリスクを抱えている。

【データ1】国内の電子黒板稼働台数推移

文教での主な用途は、授業中の資料投影や資料への書き込みである。電子黒板を黒板の脇に置き、教員が作成した資料を投影するほか、児童生徒が1人1台端末で作成したものを一覧表示する。また、Web会議と組み合わせることで、オンラインからの授業参加や外部との交流にも利用されている。

※1 電子黒板は、パソコンの画面に表示した資料や写真などを投影し、画面の映像に書き込みや拡大縮小などをするなど変更を加えられるディスプレイ型もしくはプロジェクター型の製品である。

※2 例えば以下のような政府支援を組み合わせて活用している。
・学校のICT環境整備に係る地方財政措置(2018年度~2024年度、各年度1805億円)
・デジタル田園都市国家構想交付金(2022年度は約1800億円、今年度も同程度の見込み)
・新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(2020年度~現在までで総額約18.3兆円)

◆民間企業では会議用途が半数以上を占める

民間企業では約7万台が稼働している。主な導入目的は「コミュニケーションの円滑化、情報共有」や「Web会議の質の向上」で、それぞれ半数以上を占めている(データ2)。また、設置場所では「中・小会議室」、「大会議室」がそれぞれ63%、58%を占め、民間企業では会議での活用を中心に、電子黒板の導入が進んでいることがわかる(データ3)。

一方で、少数ではあるが、製造業や建設業では遠隔地から現場の様子を確認し、図面などの書類を共有しながら指示を出す、小売業ではオーダーメイド製品のデザインを店舗に設置した電子黒板の画面上で作成するといった業種固有の使い方も出てきている。

【データ2】民間企業における電子黒板の導入目的(n=600)※3

※3 電子黒板導入経験がある600社でIT機器やオフィス什器の購入決裁者または決裁者をサポートする立場の人を対象とした

【データ3】民間企業における電子黒板の設置場所(n=600)※3


◆会議を円滑にするオールインワン型が33%と需要が高まる

民間企業ではWeb会議で複数の場所を繋いで利用することが多いため、OSを搭載し、マイク・スピーカー・カメラも電子黒板に組み込まれたオールインワン型が伸びている。稼働台数ベースの構成比をみると、コロナ禍以前の2019年はオールインワン型が11%だったのに対し、2022年には32%にまで伸びている(データ4)。一方、文教ではオールインワン型の比率は10%程度にとどまる。Web会議用途よりも、授業で大きな画面に表示して、共有する使い方がメインのためと考えられる。

【データ4】民間企業における電子黒板のタイプ別構成比(稼働台数ベース)※4

※4 オールインワン型はOSを搭載し、マイク・スピーカー・カメラも電子黒板に組み込まれた製品を指す。従来型はオールインワン型を除いた電子黒板を指す。 

◆生成AIとの組み合わせ事例など、民間企業の需要喚起策が必要

稼働台数の伸びをけん引してきた文教(小中高、大学)だが、今後は大きな伸びが期待できない。文部科学省によれば、小学校・中学校・高校において電子黒板やタッチ機能のないモニターやプロジェクターを加えた「大型提示装置」の普及率は2021年度時点で84%である※5。今回の調査結果も踏まえると2022年度ではより高い割合になっていることが想定される。大学は国内に約800校とそもそもの数が少ないほか、大半を占める私立大学の4割が赤字に陥っており、大きな伸びは見込めない状況だ。

民間企業では導入率が9%にとどまるが、検討者も15%ほどいることから、今後の伸びしろは大きい。ただし、電子黒板が発売されてから10年以上経つことを考えると、これまでと同様の会議用途での訴求だけでは急激な伸びは期待できない。例えば、「業種や業務ごとの個別用途を見つけ出し個々に訴求を強めること」「業務効率化でも注目を集めるChatGPTなど対話型AI(人工知能)のインターフェースのひとつとして利用すること」など、起爆剤となるような新たなニーズを掘り起こす必要があろう。特にChatGPTと電子黒板の組み合わせは、議論をよりクリエイティブにすることや、議事の進行・取りまとめをスムーズにする目的で試験的に利用されはじめている。市場拡大にはこうした事例を積み上げ、横展開していくことが求められる。

※5 文部科学省「令和3年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」

【データ5】電子黒板の導入・検討状況(n=11,839)


※6 民間企業11,839社でIT機器やオフィス什器の購入決裁者または決裁者をサポートする立場の人を対象とした

 

 レポート発刊のお知らせ
本調査結果を掲載したレポートを発刊いたします。詳細については担当(高橋)までお問合せください。


■調査概要
以下3つの調査(実施時期/対象/有効回答件数)を組み合わせて稼働台数を推計している

・教育委員会調査(2023年5月/全国自治体1,741団体を対象/有効回答件数1,246団体)
・大学調査(2023年4月/国公立および私立の802団体を対象/有効回答件数342団体)
・民間企業調査(2023年5月/民間企業でIT機器やオフィス什器の購入決裁権者もしくはサポート担当者/有効回答件数11,839社)

■調査方法
教育委員会及び大学は電話アンケート調査、民間企業はWebアンケート調査

■電子黒板の定義
パソコンの画面に表示した資料や写真などを投影し、画面の映像に書き込みや拡大縮小などをするなど変更を加えられるディスプレイ型もしくはプロジェクター型の製品を指す。ディスプレイ型のうち、OS搭載し、マイク・スピーカー・カメラなどを一体化している製品をオールインワン型と定義した(メーカーによってはインタラクティブホワイトボード(IWB)とも呼称)。

■報道に際しての注意事項
1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。
2. 出典を「MM総研」と明記して下さい(MMは全角)。
3. 数値などは表ではなくグラフ化して掲載して下さい。
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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