非キャリア経由の修理市場が拡大

「スマートフォン修理市場に関する調査(2022年度)」

2023年08月09日

■2022年度スマートフォン修理台数は353.1万台

■修理場所はアップル直営店や正規サービスプロバイダを含むメーカー関連が多い

■買い替えサイクル長期化で修理台数は増加傾向。2025年度には400万台超と予測

■海外市場で議論が進む利用者による「修理する権利」の動向にも注目

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、スマートフォン修理市場規模と実態を調査し、その結果を発表した。2022年度の修理台数は353.1万台となった。同じく2022年度のスマートフォン出荷台数をみると2985.1万台、2023年3月末のスマートフォン契約数は1億1000万件を突破していると分析する。よって年間スマートフォン修理市場は稼働台数の3%程度になると試算できる。2022年には円安や物価高騰によりiPhoneをはじめとしてスマートフォン本体価格も上昇した。経済情勢の変化もあり、スマートフォンの買い替えサイクル長期化は進行している。伸び悩む新品市場とは対極となる修理市場は、アップル正規サービスプロバイダ(以下正規サービスプロバイダ)や第三者修理業者の店舗網が拡大されること、手軽なオンラインでの申し込みが普及していくことで、今後も拡大していくと予測する。

スマートフォン修理市場規模

修理拠点はアップル直営店・正規サービスプロバイダを含むメーカー関連が最も多い

2022年度スマートフォン修理市場は353.1万台となった。修理拠点として申し込み経路を「①キャリア(キャリアショップ/HPなど)」・「②メーカー(メーカーの店舗/HP・正規サービスプロバイダなど」・「③第三者修理事業者・その他」に3分類するとメーカー関連チャネルでの台数・構成比が最も多くなった。

正規サービスプロバイダと第三者修理は「家や職場からの近さ」で選ばれている

スマートフォンを修理できる場所としての認知状況を質問した結果、最も認知度が高いのは「携帯キャリア(店舗・HP)」の70.5%となった。次いで「第三者修理事業者」65.2%、「メーカーHP」64.6%と続いた。iPhone・Androidを問わず確認しているため「アップル直営店」58.2%、「正規サービスプロバイダ」47.2%は他と比較して低くなった。

スマートフォンの修理場所(申し込み場所で、実際の修理場所と異なる場合を含む)ごとにみる選択理由は下記の通りとなった。携帯キャリアで修理する理由は「補償・保険サービスで無料または安く修理できる」が1位。アップル直営店では「安心感」、メーカーHPでは「オンライ・郵送・集荷で対応できる」がそれぞれ1位となった。正規サービスプロバイダ及び第三者修理事業者では「家や職場から近い」が1位となった。第三者修理事業者では2番目の理由が「修理にかかる期間が短い」、3番目の理由が「データを消去しなくて済む」となり、他とは異なる理由が上位に入った

修理場所別の認知度と選択した理由

2025年度の修理台数は407.7万台と予測。キャリア修理以外の台数・構成比が上昇

スマートフォンは登場から15年以上経過した成熟した製品となっており、利用者に過失のない初期不良や故障は過去と比較すると格段に低下している。そのため、新品市場に限らず中古市場を含めたスマートフォンのライフサイクルは長期化しており、今後の修理市場規模は増加傾向と予測する。MM総研では2023年度は361.6万台となり、2025年度には400万台以上になると試算する。

修理場所(申し込み場所)としては、携帯キャリアの台数・構成比が減少する一方で、アップル直営店、正規サービスプロバイダ、メーカーHPによるメーカー関連の台数・構成比が特に上昇すると分析する。また第三者修理事業者の中にはフランチャイズ展開を含めて出店を加速する企業も存在する。手軽で身近な場所にあるメリットを活かした同修理サービスの需要は今後さらに拡大する見通しである。

中長期的な修理市場を分析する上での興味深い点として、米国や欧州で議論が進む「修理する権利」があげられる。これは、利用者自身がスマートフォンを修理することができる権利を法律で定めるものである。現状では一部の認定企業のみしか入手できないメーカーの正規部品も、非認定企業や一般消費者が入手できるように変化していく可能性がある。一般消費者にとっては、仮に部品があったところでスマートフォンの開閉や技術的な課題をクリアする必要があるが、修理市場が大きく変動するポイントとなるかもしれない。今後も海外動向を含めて注視していきたい。



■スマートフォン修理市場の定義
①利用者が業者などに費用を支払って対応する修理
 ※補償や保険サービスの加入により実質無料で対応できるケースを含む
 ※ユーザー自身による修理は含まない(バッテリーを購入して交換など)
②故障は初期不良やメーカー保証期間内の不具合に加えて、利用者の過失による修理を含む
 ※紛失・盗難による交換サービスは含まない
③修理経路(取次対応を含む)には以下が含まれる
「キャリアショップ」:キャリアショップへの持ち込み
「キャリアオンライン」:キャリアHPで申し込み後に指定先に郵送もしくは指定業者による集荷
「Apple Store(アップル直営店舗)」:アップル社が運営する店舗(丸の内、表参道、心斎橋など10店舗)
「アップル正規サービスプロバイダ」:アップル社の認定企業が運営するアップル製品修理店舗
「メーカーオンライン」:メーカーHPで申し込み後に指定先に郵送もしくは指定業者による集荷
「第三者修理業者」:キャリア・メーカー関連以外の修理業者(登録修理業者※1の認定・不認定をどちらも含む)
 ※上記は調査時点の状況となります
 ※1:2015年に国によって導入された登録修理業者制度。基準を満たした修理事業者は総務大臣に登録申請が可能。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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