2022年度のFTTH純増数は大きな落ち込み

「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2023年3月末時点)

2023年06月08日

■2023年3月末のFTTH契約数は3800万件で2022年度の年間純増数は109.8万件

■ワイヤレス契約数は500万件で、固定ブロードバンドの1割を初めて超える

■FTTHのサービスブランド別シェアではNTTドコモが首位

■2023年度のFTTH年間純増数は前年度をさらに下回る見込み

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2022年度通期(2022年4月~2023年3月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2023年3月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は3800万件で、年間で109.8万件の純増(成長率は3.0%)となった(データ1)。2020年度以降、コロナ下のテレワーク需要の急拡大を背景に好調な伸びを見せていたが、需要が一巡したことにより純増数は2018年度水準まで大きく落ち込んだ。無線を利用するワイヤレス市場は2023年3月末時点で500万件(年間成長率は12.3%)となり、固定ブロードバンド市場の10.1%と1割を初めて超えた(データ6)

2023年度も同様の傾向が続き、FTTH市場の純増数は102.5万件と成長鈍化を予測。一方で、各社が純増数確保を目指し、FTTH間の乗り換えが一層増加するとみられる。高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込む。

【データ1】 FTTH契約数の純増数推移

NTT東西のシェアは徐々に低下、NURO光は拡大が続く

FTTH事業者の契約件数シェア(2023年3月末)では、NTTの光回線(フレッツ光およびコラボ光)契約数が東西合計で2357.5万件(シェア62.0%)となった(データ2)。2022年3月末の63.0%から1ポイント減とシェアは徐々に低下している。

事業者がNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2023年3月末の総契約数は1680.9万件でFTTH市場全体に占める割合は44.2%、NTTの光回線に占める割合は71.3%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモが725万件でシェア首位を維持。また、サービスブランドシェアでも19.1%と首位を維持している。

光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。今年に入り宮城県でエリアを拡大し10Gbpsサービスの訴求に注力した「NURO光」のシェアは3.7%(前年同期比0.4ポイント増)。市場全体の純増数が大きく落ち込むなかで、高品質大容量の回線を提供し積極的な販促施策を展開している。

アルテリア・ネットワークスは、主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が継続的に進み、2023年3月末にシェア1.9%を維持。近年注力する賃貸物件向けも引き続き好調であることに加え、10Gbpsをはじめとする高品質サービスの訴求で新築分譲物件への導入案件を安定的に獲得している。

【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2023年3月末)

※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる

FTTHのサービスブランド別シェアはドコモ光が首位を維持

2023年3月末のサービスブランド別のFTTH契約数では、NTTドコモの「ドコモ光」が725万件で首位を維持した(データ3)。2021年8月から提供を開始したワイヤレスホームルーター「docomo home5G」の影響もあり光回線の契約数は横ばい傾向となっている。

2位のフレッツ光はコラボレーション光への転用が進み減少傾向。3位のSoftBank光はモバイルとのセット販売により純増傾向である。その他NURO光、コミュファ光、ビッグローブ光が契約者数を伸ばしシェアを上げている。

【データ3】FTTH契約数・サービスブランド別シェア(2023年3月末)

※auひかりには沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)が含まれる
※NURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectの件数が含まれる

FTTHのISPシェアはソフトバンクが首位を維持

2023年3月末のISP事業者のFTTH契約数では、ソフトバンクが件数を伸ばし首位を維持した(データ4)。2位はNTTレゾナント、次いでNTTドコモとNTTグループが続く。「NURO光」が好調なソニーネットワークコミュニケーションズのほか、ニフティも堅調に顧客を増やした。なお、NTTレゾナントは2023年7月のNTTグループの事業再編によりNTTドコモとなり、ぷららとドコモnetとの合算となる予定。

【データ4】FTTH契約数・ISPシェア(2023年3月末)

※NTTレゾナントにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

固定ブロードバンド市場全体ではソフトバンクがシェア首位を維持

固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場では、ソフトバンクがシェア首位を維持(データ5)。モバイルとのセット訴求を行う「SoftBank光」と「SoftBank Air」で契約数を伸ばした。
*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

【データ5】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2023年3月末)

※NTTレゾナントにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

FTTH市場は成長鈍化、ワイヤレスは拡大継続

固定ブロードバンド市場は緩やかに成長が続き、2023年度中にも5000万件を超える見込みである。サービス終了予定のADSLや光化が進むCATVアクセスが減少していく一方で、FTTHやワイヤレスの市場が継続的に拡大。固定ブロードバンド市場の2023年3月末から2026年3月末までの年平均成長率は2.3%と予測する(データ6)

【データ6】固定ブロードバンド契約数の推移・予測

※2024年3月末以降は予測値。2021年および2022年の数値は一部遡及修正している
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

2023年度(2023年4月~2024年3月)のFTTH市場は年間102.5万件の純増を予測する。在宅通信需要の一巡で、2022年度の純増数をさらに下回ると分析している。一方で、各社が純増数確保を目指し、FTTH間の乗り換えが一層増えるとみられる。高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込む。中期的にはCATVインフラの光化や集合住宅の全戸一括型導入、ワイヤレスからの移行需要を中心に継続的な成長がみられ、2023年度以降の3年間の年平均成長率は2.4%と予測する。

ワイヤレス市場は2023年3月末に契約数が500万件となり、前年同月末比12.3%増と2ケタの成長となった。固定ブロードバンド契約数の10.1%を占め、初めて1割を超えた。2023年度以降の3年間の年平均成長率は9.1%で、若干の鈍化はみられるものの引き続き拡大が続くと予測する。ワイヤレス利用者がより安定的な通信を利用するためにFTTHなどへ移行する動きが一部で見られ、ワイヤレスサービス提供事業者は引き続き5G対応のホームルーター端末の普及やエリアの拡大をはじめ、より高品質な通信サービスが求められている。


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