サービス提供戸数は443万戸に拡大、増加数は過去最高を更新

「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2022年3月末)

2022年09月06日

■2022年3月末の全戸一括型マンションISPの提供戸数は442.7万戸
■2021年度(2021年4月~2022年3月)の増加数61.0万戸は過去最高
■事業者シェアでは、つなぐネットコミュニケーションズが5年連続で首位
■全戸一括型の導入では、より高品質な回線を求めるニーズが高まる

ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2022年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)のシェア調査結果を発表した。本調査は、集合住宅の全戸にインターネット接続サービス(光回線ベース)を一括で導入・提供する事業者を対象とし、任意加入方式は含まない。市場シェア(データ1)は2022年3月末時点のサービス提供戸数を対象とし、OEM提供分を除いている。

2022年3月末時点の全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数は442.7万戸で、前年同月末比で61.0万戸の増加となり、過去最高を更新した2020年度を上回る増加数となった(データ2)。2021年度(2021年4月~2022年3月)も在宅勤務などによる固定インターネット回線の堅調な需要を背景に、賃貸物件を中心に全戸一括型での導入が進んだ。事業者別シェアでは、つなぐネットコミュニケーションズが19.7%となり、5年連続で首位となった。2位は12.0%のファミリーネット・ジャパン、3位は10.4%のD.U-NETと続く。


※集計数値の見直し等により、2021年3月末以前の提供戸数については遡及修正をしている

事業者動向

つなぐネットコミュニケーションズ
シェア1位のアルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが提供する「UCOM光 レジデンス」および「e-mansion」は、2022年3月末の提供戸数が87.1万戸(前年同月末比8.2万戸増)となった。2021年度(2021年4月~2022年3月)は賃貸物件の獲得が好調だった。賃貸向けの提供戸数は24.5万戸で全体に占める割合は3割程度だが、純増数は分譲向けを上回っている。小規模な賃貸物件では次世代ネットワーク方式IPv6 IPoEを採用した「UCOM光レジデンス Five.A(ファイブ・エー)」の提供が奏功し獲得が進んだ。大規模物件では、構内光配線方式を採用した「マンション全戸オールギガ光配線タイプ」や「マンション全戸一括 10Gタイプ」などの高速・高品質な通信サービスが増加傾向にある。住戸ごとにインターネット接続を優先制御する「Connectix(コネクティクス)」も好評だ。今後は新築賃貸物件の獲得にも注力していくほか、分譲向けでは他社が提供する全戸一括型サービス導入物件の切り替えも狙う。

ファミリーネット・ジャパン
「CYBERHOME(サイバーホーム)」を提供するファミリーネット・ジャパンは、2022年3月末の提供戸数が53.2万戸(同3.8万戸増)でシェア2位。東京電力グループとしてインターネット×エネルギーを強みに堅調に数を伸ばしている。同社は2020年にVNE事業へ参入。高品質なインターネット接続環境を提供するために順次IPv6 IPoEへの切り替えを進めている。また、世界的に環境配慮への意識が高まる中、環境先進マンションをキーワードに太陽光発電や再生可能エネルギーを活用し、全戸一括インターネットを基盤とするサービスを展開する。付加価値サービスのマンション向けIoTサービス「rimoco+(リモコプラス)」は、マンション専有部内の住宅設備や家電間をインターネットで繋ぐ。2022年7月には分譲物件向けに「アプリStation」の提供を開始し、rimoco+の操作をはじめマンション棟内の施設予約や問い合わせ対応などデベロッパーや管理会社の業務効率化を支援する。

D.U-NET
大和ハウスグループのD.U-NETは、2022年3月末の提供戸数が45.9万戸(同4.5万戸増)でシェア3位となった。高品質なインターネットを求める顧客層を堅調に取り込み、大和リビングの管理物件を中心に既築賃貸市場で安定した伸びを見せた。インターネットとセットで提供する付加価値サービスでは、インターネット通販利用者の増加やフリマアプリなどの個人間取引の普及により、宅配ボックス「D-room BOX(ディールームボックス)」の導入が好調だ。AIを活用した防犯カメラやIoTサービスも引き続き導入を進める。付加価値サービスと安定した高品質なインターネットのセット提案のほか、即日対応エリアの拡大などのサポートを武器に導入を進めていく。今後は大和ハウスグループ外の物件にも積極的に提案を進める方針だ。

ファイバーゲート
ファイバーゲートは2022年3月末の提供戸数が37.3万戸(同6.8万戸増)と、昨年に続き4位となった。小規模賃貸アパートをメインに、マンションWi-Fi入居者無料サービス「FGBB」を提供する。既築賃貸ではコロナ禍で2020年度に急増した通信需要はやや落ち着きを見せているが、新築賃貸では自社開発したIoT製品をフックに獲得を進める。2022年6月にはテンフィートライト(東京都中央区、相川太郎代表取締役)と協業し、顔認証インターホン「FGスマートコール」の実証実験を開始した。顔認証インターホンはファイバーゲート、専用アプリはテンフィートライトが提供する。インターホン呼び出し対応をスマートフォンで対応できるようにするもので、入居者の応答の簡略化や宅配効率の改善につなげていく。

ギガプライズ
ギガプライズは、本調査では同社の提供戸数に含まれないOEM提供分を含めると2022年3月時点の提供戸数は90万戸(同15.5万戸増)と好調に数を伸ばした。昨年に引き続き新築、既築物件共にOEM戦略が奏功した。専用線型・優先ゲート方式インターネットサービスや脱着式Wi-Fiアクセスポイント「PWINS(ピーウィンズ)」、クラウドカメラといった付加価値サービスなどを武器に新規顧客の開拓を狙う。今後はISP事業者だけでなくガス会社などの他業種との取り組みを強化していく方針だ。サービス提供戸数の増加を見据え、保守・サポートの強化を進めていく。

※ IPoE は「Internet Protocol over Ethernet」の略で、イーサネットを使用してIP パケットを伝送する通信方式。一般的に従来型のPPPoE 方式より高速なインターネット通信ができる。

市場動向

新型コロナウイルスの感染拡大当初は在宅勤務やオンライン授業、動画配信サービスの視聴、オンラインゲームなどの増加に伴い、自宅でインターネットを利用する時間が急激に増え、多くの人が通信品質の重要性を実感した。当初はマンションISP事業者の中でも「既存顧客のフォロー・設備増強」と「新規顧客の獲得」の両面に注力していたが、2021年度以降は設備増強が一巡し各社は新規開拓に力を入れる。高速かつ安定したインターネットを求める声が高まる中で、各社はインターネット回線の輻輳を回避すべくIPoEサービスの切り替えや複数の回線事業者からの調達を進めるなど迅速に対応している。また、マンション棟内光配線方式や1Gbps超のインターネット回線への需要も徐々に高まっている。これまではコスト面を重視する物件オーナーや管理会社が多かったが、多少料金が高くても品質面を重視する傾向が増えており、マンション全戸一括型インターネットに対する考え方が二極化しつつあると言える。

全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数の推移(データ2)の通り、今後も市場の拡大基調は続くものと見られる。市場の拡大が進むなかで全戸一括インターネットサービス同士の乗り換えも徐々に増えており、今後もこうした乗り換え競争が激化していくことが予想される。

インターネットとの親和性が高い付加価値サービスでは、クラウドカメラや宅配ロッカー、IoTサービス(スマートロック、ホームIoTなど)が堅調に数を伸ばしている。さらにコミュニケーションツールとして入居者と管理会社をつなぐアプリが注目されている。入居物件に関する情報配信や契約情報の確認などを共有することで、入居者の生活利便性向上と管理会社の業務効率化を支援する。インターネットは生活インフラとして欠かせないものとなっており、2022年度も引き続き付加価値サービスをフックに全戸一括型マンションインターネットの提供戸数は前年度と同規模の伸びとなる見込みだ。

本件に関するお問い合わせ先

(株)MM総研

担 当 : 加太、小野寺

所在地 : 105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー

連絡先 : 03-5777-0161

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