中古スマホ販売台数は過去最高の212万台
2021年度 中古スマートフォン市場規模の推移・予測
2022年07月26日
■2021年度の中古スマートフォン販売台数は212万台(前年度比14.6%増)で過去最高
■値引き競争激化によりiPhoneの新品未使用品が中古市場に大量流入
■2022年度以降も円安や製造・部材費高騰に伴う新品価格の値上げで拡大基調が続く
■2022年度は241万台(13.7%増)、2026年度には342万台(6.9%増)に拡大と予測
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称 MMRI、東京都港区、関口和一所長)は7月21日、中古スマートフォンの国内市場規模の推移・予測を発表した。市場規模は、Webアンケートによるユーザー調査と中古端末販売事業者への取材などに基づき、MM総研が推計した。主要な取引チャネルの一つであるオンラインフリーマーケットサービス(以下、フリマサービス)のデータは、中古スマートフォンのECサイト「にこスマ」を運営する伊藤忠商事グループの株式会社Belong(東京都港区、井上大輔代表取締役社長、以下 Belong)のデータを参考にMM総研が推計した。
◆新品未使用のiPhoneが中古市場に大量流入
調査結果によると、2021年度の中古スマートフォンの販売台数は過去最高の212万台で前年度比14.6%増となった(データ1)。大手通信事業者によるiPhone値引き競争の激化に伴い、1円などで販売されたiPhoneが、そのまま新品未使用品として中古市場に流れたことが市場活性化につながった。また、用途に応じて端末を使い分ける複数端末利用の増加や、オンライン会議用など法人利用増加も市場拡大をけん引した。MM総研では、2022 年度の市場規模を241 万台(13.7%増)と予測、その後も拡大基調は続き、2026 年度には342 万台に拡大する見込みである。
【データ1】中古スマートフォン販売台数の推移・予測
中古スマートフォン市場の拡大要因としては、大手キャリアによるiPhoneの値引き販売競争によるところが大きい。2021年夏から2022年春頃にかけて、大手キャリアは回線契約に紐づかないかたちでiPhoneの本体価格を大幅に下げた。さらに他社からの乗り換えや新規契約などには値引きを追加するなどの施策を展開したことで、最安では一括1円での販売も行われた。この行き過ぎた値引き競争の結果、国内の中古市場で新品未使用のiPhoneが数多く販売されるようになっただけでなく、海外中古市場にも多くのiPhoneが流出したと分析する。
Androidスマートフォンでは低価格端末の需要が拡大しており、2万円から3万円台のモデルが人気を集めている。しかし、端末購入費は抑えつつスペックの高いスマートフォンを利用したいという理由から、これまで中古スマートフォンを購入してこなかった層が、選択肢として視野に入れるようになったことも中古スマーフォン市場の拡大につながっている。
他の市場拡大要因としては用途に応じて使い分けたい、あるいは契約している複数の回線ごとに端末を分けて利用したいと考えるITリテラシーの高いユーザー層への浸透が進んでいると分析する。大手キャリアのオンラインプラン、サブブランド、楽天、MVNOなど価格を抑えた料金プランと中古スマートフォンの親和性は高い。不慮の端末故障や紛失、通信障害などのリスクに備えた複数端末利用や複数回線需要は更なる拡大も予測される。また法人による中古端末利用も徐々に増えている。オンライン会議での利用や従業員への端末貸与、小売りでのレジ利用、ウーバーイーツなどの宅食サービスに対応するための飲食店利用などの用途が挙げられる。システム開発やアプリ開発会社が、試験用に中古スマートフォンを購入するといった例もある。
中古スマートフォンの買取・販売チャネルはオフラインからオンラインにシフトしつつある。中古端末取扱い事業者の自社ECサイトや外部のECモールのほか、フリマサービスを利用した取引も引き続き好調だ。Belongが発表した「2021年度(2021年4⽉〜2022年3⽉)中古スマートフォン取引実績調査レポート(フリマ市場)」によると、製造番号(IMEI)が記載されているスマートフォンの取引件数は2020年度で44.1万件に対し、2021年度は36.2万件で前年度比18%減となった。IMEIの記載有無は、ネットワーク利用制限やアクティベーションロックの状況確認に必要なため、スマートフォンリテラシーの高い層は取引においてIMEIを明示するケースが多い。2021年度実績は取引件数としては減少したが、これはスマートフォンリテラシーの比較的高くないライト層による出品が増えたことで、IMEI記載比率が減少したと考えられる※1。今後もフリマサービスやECを活用した取引は増えていくことが予想される。
※1:Belongの調査レポートを基に、製造番号(IMEI)未記載分の取引件数も考慮し全体の販売台数を分析した。また、中古スマートフォンの取引件数1件あたり1台と仮定した(MM総研による)。
◆円安・端末コスト増・物価高騰や複数端末利用などで中古市場拡大の追い風が強まる
急激な円安の進行により2022年7月にはiPhoneの従来モデルが値上げされた。今秋の発売が想定される最新モデルは機能進化に伴う部材費や製造費、物流費のコスト増が加わることで、もう一段高くなることも予測される。Androidスマートフォンも同様の理由でコスト増の影響はさけられず、既存モデルの値上げや今後の新モデルの価格設定に反映される可能性が高い。日々の生活における物価高騰も高額な新品スマートフォンへの購買意欲を下げ、中古スマートフォンのニーズを高めるだろう。用途に応じた端末の複数利用、複数の契約回線ごとの端末利用などに加え、法人利用も引き続き増加していくと見ており、2022年度以降も中古スマートフォン市場は拡大していくものと予想する。
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