中小企業のDX推進における課題分析
「中小企業のデジタル化に関する調査」
2022年03月04日
ICTリサーチ・コンサルティングのMM総研(略称 MMRI、東京都港区、関口和一所長)は中小企業のデジタル化に関する調査を実施し、中小企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に必要なIT実装と運用上の課題を分析した。本調査結果は、3月17日に開催するMM総研主催の「DXフォーラム2022 ~中小企業が変わる、日本が変わる~」でも報告する予定である。同フォーラムは、オンラインイベントとして開催し、政府関係者、有識者、ユーザー、事業者を招き、中小企業のDXを加速させるための方策について議論することを目的としている(https://mm-dxforum.com/)。
発表の要旨
- 日本の労働生産性向上にはクラウド利用の拡大などを通じた中小企業のDX推進が重要
- 中小企業のクラウド利用は拡大しているが、さらなる利用に向けDX推進のためのIT環境の改善が望まれる
- 中小企業のDX推進に向けたIT環境における課題
①費用対効果の高いIT環境の実現
②専門のIT要員を必要としないIT管理負荷の低減
③DX推進に適したセキュリティ環境の実現
- 中小企業のDX推進に向け、政府によるIT環境整備支援の強化が望ましい
・中小企業のインボイス制度への対応促進支援
・生産性向上につながるクラウド利用拡大や適切なIT環境整備への支援
背景と目的
日本の中小企業は、デジタル化が進まず生産性が低い。近年はクラウドを利用する中小企業も増えているが、インボイス制度の導入を控え、更なるデジタル化の推進が期待される。本調査では、中小企業のクラウドの利用状況などを踏まえ、デジタル化推進における課題を抽出し、対応策を検討することで、中小企業の生産性向上に資することを目的とした。
調査概要
・調査手法:Webアンケートおよび文献等調査
・調査対象:全国の2000社(中小企業993社、中堅企業304社、大企業703社)
中小企業:中小企業庁の定義に該当する企業
中堅企業:中小企業に該当しない従業員数1000名未満の企業
大企業:中小企業に該当しない従業員数1000名以上の企業
・調査時期:2021年12月
日本の労働生産性向上には、クラウドを中心とする中小企業のDX推進が重要
ポイント
- 日本の労働生産性は、OECD加盟国の中でも低水準に留まる※1
- 日本の中小企業の生産性は大企業より低い
- 国内の総従業員数の69%※2が中小企業で働いており、中小企業の労働生産性改善が日本の生産性革新に重要といえる(データ1)
- 労働生産性の向上にはデジタル化の推進、特にクラウドの導入が望まれる(データ2)
※1. 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」
※2. 中小企業庁「中小企業白書2021年版」
データ1. 企業規模別従業員一人当たりの付加価値額の推移※3
※3. 付加価値額:営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課
出所:中小企業庁「中小企業白書2021年版」
データ2. クラウドの利用状況別の労働生産性の推移※4
※4. 労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数
出所:総務省「令和3年情報通信白書」
中小企業のクラウド利用は拡大しているが、さらなる利用に向けDX推進のためのIT環境の改善が望まれる
ポイント
- 中小企業のクラウド利用は拡大しているものの※5、大企業・中堅企業と比較すると利用率は低く、更なる利用拡大が望まれる(データ3)
- 現在クラウドを利用していないが、今後利用を予定、または検討している中小企業の主な懸念事項は、コストやセキュリティとなっている。クラウドのメリットを正しく理解できていない可能性があるため、クラウド運用に適したIT環境の整備が必要と考えられる(データ4)
※5. 総務省「通信利用動向調査」
データ3. 中小企業のクラウド利用状況(n=993/単純回答)
データ4. クラウドを利用していない理由
(n=368/複数回答。データ3で「クラウドを利用していない」とした回答者が対象)
中小企業のDX推進に向けたIT環境整備における課題
ポイント①費用対効果の高いIT環境
- 中小企業のIT装備率は大企業と比較して低く、中小企業は限られた原資の中でDXに適した費用対効果の高いIT環境を実現する必要がある(データ5)
- 中小企業がクラウドに接続する主要なIT端末であるPC(データ6)についても、費用対効果の高い利用に取り組める余地がある(データ7)
データ5. 企業規模別/業種別IT装備率※6
※6. IT装備率:ICT資本ストック(固定資産ソフトウェア)を従業員数で除した額
※7. 大企業:資本金10億円以上、中小企業:資本金1億円未満
出所:財務省「法人企業統計」
データ6. 市場別ICTデバイス別国内出荷割合(2011~2020年度)
データ7. 中小企業の実際のPC利用年数(n=993/単純回答)
ポイント②専門のIT要員を必要としないIT管理負荷の軽減
- 中小企業はIT人材を確保するのが難しく、今後さらに困難になると予測されるため、専門的な人材を必要とするIT管理の負荷を低減することが重要である(データ8、9)
- DXに最適な環境では、IT業務の負荷低減が実現でき、IT人材不足を解消できる(データ10)
データ8. 中小企業のIT人材の確保状況
出所:中小企業庁「中小企業白書2021年版」
データ9. 国内IT人材需給の推移
出所:経済産業省「IT人材需給に関する調査」
データ10. DXに最適な環境で低減できるIT管理業務例
出所:中小企業庁「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」
ポイント③DX環境のセキュリティ最適化
- 中小企業もサイバー攻撃の対象になっており、セキュリティ対策の強化が求められる(データ11、12)。
- 中小企業の投資水準は大企業を下回っており、中小企業のDXに最適なセキュリティ対策が求められる(データ13)
データ11. セキュリティインシデント件数推移
データ12. 中小企業へのサイバー攻撃状況
出所:JPCERTコーディネートセンター「インシデント報告対応レポート」、
IPA「中小企業向けサイバーセキュリティ対策支援体制構築事業報告書」
データ13. 企業規模別セキュリティ投資水準
中小企業のインボイス対応状況は遅れており、生産性向上の観点と併せて、クラウドの利用拡大やIT環境の課題克服に留意しながら国を挙げた支援が望まれる
ポイント
- 中小企業はインボイス制度の認知や理解、対応が遅れている(データ14、15)
- インボイス制度は2023年10月に開始を控えており、生産性向上の観点と併せて、クラウドの利用拡大やIT環境整備の課題克服に留意しながら国を挙げた支援が望まれる
データ14. 企業規模別インボイス制度の認知状況
データ15. 企業規模別セキュリティ課題
(データ14でインボイス制度の「内容を知っている」とした回答者が対象)
以上
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株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀近くにわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。
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