クラウド会計ソフトの利用状況調査(2020年4月末)

2020年05月19日

■ 個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は2019年3月末時点の18.5%から21.3%に拡大

■ クラウド会計ソフトの事業者別シェアでは弥生が56.7%、freeeが21.1%

■ 個人事業主の約6割を占める会計ソフト非利用者の開拓が市場拡大のカギ

 MM総研(東京都・港区、所長 関口 和一)は個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施し、2020年4月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況をまとめた。本調査では平成31年(2019年)分の確定申告を実施した個人事業主(2万980事業者)を対象とした。調査結果によると会計ソフトを利用している個人事業主は33.9%を占めた。その内、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフト(※1)の利用率は21.3%で、前回調査(2019年3月)の18.5%から2.8ポイント増加した(図表1・2)。2015年の調査開始以来、初の20%台達成であり、クラウド利用は着実に拡大している。クラウド会計ソフトの事業者別シェアでは「弥生」が56.7%、次いで「freee」が21.1%、「マネーフォワード」が16.8%で、上位3社で94.6%を占めた(図表4)。

 一方で、会計ソフトを利用していない個人事業主の比率は57.1%と、個人事業主の半数以上が依然として手書きや表計算ソフトなどを利用している(図表1)。こうした層をいかに開拓していくかが、引き続き会計ソフト事業者の課題となっている。新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がる中で、会計ソフト事業者では政府等による各種支援策の情報を集めた特設サイトなどを作り、個人事業主の支援に当たっている。このコロナ危機をいかに乗り越えていくかが個人事業主にとって喫緊の課題ではあるが、電子申告や電子帳簿の導入を促す税制改正にどう対応していくかも大きな課題。会計ソフト事業者にとっては、今後も個人事業主に向けた支援情報の発信に加え、日々の記帳や確定申告における会計ソフトの利便性などを訴求し続けることが、新規顧客の開拓やクラウド利用者拡大にもつながっていくだろう。

※1. クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用できるソフトのこと。パソコンに会計ソフトをインストールしたもの、会計データのみをインターネット上に保管するソフトは含まない。

 クラウド利用は会計ソフト利用者の20%台に到達

 多くの個人事業主は1月~12月の1年間の「所得」を確定させ、翌年2月から3月にかけて税務署に「申告」する、いわゆる「確定申告」を行っている。新型コロナウイルスの影響により、今年の申告期限日は当初の3月16日(月)から4月16日(木)に変更された。そのため第8回目となる今回の調査(2020年4月調査)では、2020年2月から4月にかけて確定申告を実施した個人事業主 (2万980事業者)を対象とした。

 上記に該当する個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施したところ、「会計ソフトを利用している」との回答は33.9%(7,122事業者)となった(図表1)。この会計ソフト利用者に、利用している会計ソフトを確認したところ、パソコンにインストールして利用するPCインストール型の会計ソフト(※会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が67.7%を占めた。クラウド会計ソフトを利用している個人事業主は21.3%で、2019年3月調査時の18.5%から2.8ポイント増加(図表2)。会計ソフト利用者に占めるクラウド比率も初めて20%台に到達した(図表3)。

 個人事業主向けの市場において、クラウド会計ソフトは着実に拡大を続けており、まだまだ開拓できる余地を残している。ただ、市場の約7割を占めるPCインストール型の会計ソフトの中には、クラウド連携し、クラウド会計ソフトと同等の利便性を備えているものもある。そのため、PCインストール型の会計ソフト利用者の中には、クラウド会計ソフトにこだわらない利用者層が増えている可能性もある。

 一方、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主は57.1%(11,980事業者)となった(図表1)。この非利用者に会計ソフトの代わりに利用しているものを確認したところ、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が42.1%、「エクセルなどの表計算ソフトに入力」が35.1%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が17.9%となった。

「弥生」がトップシェアで56.7%、「freee」が21.1%で2位に浮上

 クラウド会計ソフトを利用している個人事業主に、実際に利用しているクラウド会計ソフトを回答してもらったところ、事業者別では「弥生」が56.7%で最も多く、「freee」が21.1%、次いで「マネーフォワード」が16.8%となった(図表4)。

 

 トップシェアの「弥生」はほぼ前年並みとなる56.7%を獲得。調査開始以来、トップシェアを維持しており、個人事業主から安定した評価を獲得している。2位に浮上した「freee」は、2019年3月調査時の18.2%からシェアを2.9 ポイント上げ、21.1%となった。一方、「マネーフォワード」は2019年3月調査時の21.5%から4.7ポイント減となる16.8%となり、「freee」に抜かれ3位となっている。

2020年4月調査の上位3社の合計シェアは94.6%となった。個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場は半数以上を占める「弥生」が市場をけん引し、さらに「freee」、「マネーフォワード」などのベンチャー系事業者が加わった上位3社による寡占状態が続いている。

税制改正への対応が会計ソフト導入を促す契機に

 会計ソフト利用者に占めるクラウド利用率は年々上昇し、今回の2020年4月調査では21.3%にまで拡大した。会計ソフト事業者による機能強化や操作性の向上、利用者拡大に向けた営業・プロモーション活動など様々な取り組みの成果といえるだろう。ただし、個人事業主全体でみれば、会計ソフトそのものを利用していない層が全体の約57%と過半を占めている。会計ソフトを利用しない理由としては、「事業規模が小さいので会計ソフトを必要としていない」、「会計ソフトに費用を掛けたくない」などの理由が挙げられる。だが、今回のコロナ危機は、働き方に対する意識改革をさらに強く促し、社会全体のデジタル化を加速させる可能性もある。会計ソフトを導入していない個人事業主にとっても、取引先からデジタル対応を求められる機会などが増え、会計ソフトの導入に動くことも想定される。

 政府による行政手続きのデジタル化推進もこうした動きを加速させる契機となる。行政手続きを原則、電子申請に統一するデジタルファースト法が2019年に成立。政府では2024年度中に社会保障や税務などの行政手続きの9割を電子化する方針を掲げている。2020年分(2020年1月~12月)の確定申告から青色申告特別控除の金額が65万円から55万円に減額されるが、確定申告書をインターネットで提出する(e-Tax)か、もしくは電子帳簿保存に対応したソフトを導入すれば65万円控除となる。こうした税制改正の動きやデジタル対応のメリットが広く認知されれば、会計ソフトを利用していない個人事業主もこの機会に導入に動く可能性がある。クラウド会計ソフトも選択肢に入る可能性があり、会計ソフト事業者にとっては更なる利用者拡大に向けた大きな事業機会となり得るだろう。

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 ■調査概要

1. 調査対象:個人事業主/平成31年(2019年)分の確定申告実施者

※確定申告期間:2020年2月17日(月)から4月16日(木)

※なお、国税庁では新型コロナウイルスの感染拡大により外出を控えるなど4月16日(木)までに申告することが困難であった場合、期限を区切らずに、4月17日(金)以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けている。

2. 回答件数:2万980事業者

3.調査方法:Webアンケート

4.調査期間:2020年4月20日~27日

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