MVNOネットワーク品質調査結果

「回線スピード」に代わる新測定基準を導入

2018年10月11日

■ 本調査では初めて通信速度以外の5項目を測定基準として採用した

■ 動画については調査対象にした全15サービスがいずれも遅延なく再生可能だった

■ 動画再生時のギガ消費を抑え、コストパフォーマンスが高いのは楽天モバイル、IIJmio、BIGLOBEモバイル

 MM総研(東京都港区、所長・中島 洋)は10月11日、国内におけるMVNOの独自サービス型SIMの主要10事業者、サブブランド2事業者、MNO3事業者を対象にネットワーク品質に関する調査を実施し、結果を発表した。
 調査は2018年7月30日(月)、31日(火)、8月29日(水)、30日(木)の4日間。計測時間帯はいずれも帯域の奪い合いを考慮して、各日とも8時30分前後、12時30分前後、19時30分前後に実施した。計測用のデバイスはApple製SIMフリースマートフォン「iPhone8」をSIMと同数台使用。

 多くの事業者が独自サービス型SIMを提供しており、ユーザーはどのMVNOを選択すればよいのか頭を悩ますのが実情だ。まず、MVNO選定の際の最も有力な基準として通信速度がある。MVNOが浸透してきたことにより「混雑時の速度低下はやむをえない」とするユーザーの理解も広まりつつある。そのような中、MVNOサービスの関連業界からは「速度が速いというだけで評価してよいのだろうか」との声もあり、実際、速度が出ていても動画再生をした際に遅延や停止が発生するなど快適に再生できない場合もある。また、「高品質」をうたう結果、不必要にデータ通信量を消費するなど毎月限られたギガの“無駄遣い”も問題になっている。そこで調査では、通信速度以外で実際に利用した際の『快適さ』を比較する指標として以下の基準で回線品質を評価した。

 ①動画再生(動画再生時の遅延、動画再生途中での停止・画質)
 ②ギガ消費(動画再生時のザッピングをした際のデータ消費量)
 ③Web表示の快適さ
 ④マップ表示の快適さ
 ⑤アプリダウンロード

 評価指標、評価基準の策定は、ユーザーアンケートおよび、東京大学の中尾彰宏教授ほかネットワーク制御システムベンダー、MVNO事業者で構成する「有識者会議」の場で測定方法や基準値に関して議論した。

 各項目を5段階で評価し、ストレスなく利用できる品質を3(基準値)に設定。各基準値は事前計測結果、アンケート結果および有識者会議により決定した(図表1)。動画再生では、アンケート結果よりスマートフォンでは「画質360p以上で視聴したい」という回答者が過半数を超えることから基準値を画質360pかつ遅延なしに設定した(図表2)。(p=プログレッシブ:画質を表す単位で、多いほど高画質)

 このほか、
 ①ギガ消費ではこれまでの事前調査結果から基準値を60MB未満と設定した。
 ②Web表示、マップ表示はアンケート結果より10秒未満を基準値とした(図表4)。
 ③アプリダウンロードも同様にアンケート結果、事前調査より基準値を設定。
  今回調査では約80MBのアプリをダウンロードしたため基準値を120秒と設定した(図表5)。

 調査結果は事業者(サービス)ごとにレーダーチャートで表した。

スムーズな動画再生が可能

 動画再生で遅延の有無、再生停止の有無、再生時の画質を調査した。YouTubeアプリで4分10秒の動画を再生し終了時点の時間を計測する。これにより通信速度比較ではわからない使用時の快適さが評価できる。計測は動画視聴が最も多い夜の時間帯に実施した。
 今回調査した12事業者(15サービス)では再生遅延や途中停止がなくスムーズに再生できた。
 しかし、各サービスで動画再生時の画質に変化がみられた。YouTube動画では再生途中もネットワーク状況等により画質が変化する。

動画の先読み(バッファ)量を抑制することによりギガ消費を少なく

 動画再生時にザッピングを行い各社のギガ消費に関して調査した。4分10秒の動画を3本用意しストリーミング再生。30秒再生時点で2本目の動画を再生し、さらに30秒再生時点で3本目の動画を再生するという計測方法で計測した。
 高画質で動画を再生すると通常ギガ消費も多くなるが、BIGLOBEモバイル(タイプA)では、高画質720pかつギガの節約もできた。楽天モバイル、IIJも画質420pでの動画再生によりギガ消費を抑えていた。docomo、au、SoftBank(MNO)およびY!mobile、UQモバイル(サブブランド)に関しては高画質(720p)で再生していたため、ギガの消費が多くなる結果となった。

Webサイト表示は混雑時やや遅くなることも

 Webサイトによる表示状況の調査では、サンプルのサイトとしてMM総研ホームページを表示。表示完了までの時間「10秒未満」を基準値に設定し評価した。お昼の混雑時は基準値に満たないサービスもあるが、その他の時間帯ではおおむね基準値をクリアする結果となった。
 今回調査より、マップ表示も評価項目として追加した。「新宿」を検索し表示完了までの時間を計測した。マップ表示では、お昼の時間帯でも大半のサービスが基準値をクリアする結果となった。
※各調査とも調査前に履歴、キャッシュを削除し計測している。

アプリダウンロードはMNO、サブブランドが優位

 アプリダウンロードでは、約80MBのアプリをダウンロードし、アプリダウンロード完了までの時間を計測し評価した。MNOおよびサブブランドが基準値を大幅に上回る結果となり、MVNO事業者には厳しい結果となった。 

MVNOサービスは利用用途に合わせて選択を

 今回調査では、回線スピード以外の評価指標を5項目採用した。MVNOはMNOから回線を借りてサービスを提供しており、限られた帯域の中でトラフィックをコントロールする必要がある。
 Web表示、マップ表示に関しては、おおむね基準値をクリアしており問題なく利用できるレベル。
 動画再生でギガ消費を気にせずサクサク利用したいのであれば、MNO、サブブランドが優位だ。また、BIGLOBEモバイル(タイプA)は各項目で前回調査より改善がみられた。
 MVNOで動画を高画質で視聴したいユーザーには、BIGLOBEモバイル(タイプA)のほか、mineo、NifMo、LINEモバイルが推薦候補に上がる。さらに画質は基準値をクリアしたうえでギガを節約したいユーザーは楽天モバイル、IIJ mio、OCNモバイルONE、BIGLOBEモバイル(タイプA)が候補になる。
 ネットワークをモニタリングし、スループットを予測する技術や、端末バッファ残量を把握する技術を導入する事業者も増えつつある。これらの新技術を使えば配信流量を動的に制御でき、無駄なデータ通信を減らしつつスムーズな動画再生が可能になる。
 アプリのダウンロードにあたってはWi-Fi利用も多く、Wi-Fi環境があるユーザーにとってはダウンロードの負荷はあまり気にならないだろう。

 今後もMM総研では、実際に利用した際の『快適さ』をわかりやすく伝えていきたい。さらにIoT利用に適したネットワーク品質調査を予定している。 

※スループット:通信回線におけるデータ転送能力

 

図表1

図表2

図表3

図表4

図表5

調査結果

 

 

調査概要

調査期間:2018年7月30日(月)、31日(火)、8月29日(水)、30日(木)
調査時間:8時~9時、12時~13時、19時~21時
調査場所:東京都港区
調査SIM:楽天モバイル、IIJ mio、OCNモバイルONE、mineo(Dプラン)、
     mineo(Aプラン)、BIGLOBEモバイル(タイプD)、BIGLOBEモバイル(タイプA)、
     NifMo、DMMモバイル、LINEモバイル(ドコモ回線)、Y!mobile、UQモバイル、
     docomo、au、Softbank
調査端末:Apple製SIMフリースマートフォン「iPhone8」
動画再生:「YouTube」アプリで4:10の動画を再生
ギガ消費:「YouTube」アプリで4:10の動画を30秒再生後、別の4:10動画を30秒再生、
     さらに別の4:10動画を30秒再生しデータ使用量を計測(計測前にキャッシュ、履歴は削除)
Web表示:ChromeにてMM総研ホームページを表示
マップ表示:Chromeにて新宿を検索表示
速度調査 :「Speedtest by Ookla」アプリを使用し10回の中央値
※計測は同時間帯で複数回調査し、帯域の奪い合い等を考慮した計測を行った。

 


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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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