10周年迎えた日本市場の重要性を強調 「Box AI」で生産性向上を目指す

――Box Japan創立10周年アーロン・レヴィCEOに聞く

2023年09月12日


Box Japanの創立10周年を祝し、BoxグローバルCEOのアーロン・レヴィ氏と、MM総研所長の関口和一が対談した。急成長した日本市場での成功や今後の方針、近くリリースする予定の「Box AI」などについて聞いた。

 

 

 

創立10年 の日本、急成長を評価

――Box Japanの創立10周年記念、おめでとうございます。まず、日本市場での10年の節目をどのように評価していますか?


日本市場は、世界中のBoxの中で、最も成長している市場です。今後のさらなる成長がとても楽しみです。現在は、日本での存在感をより高めることに注力しています。製造業、ライフサイエンス、メディア、エンターテインメント、さらには公共分野においても、著しい成長を見せています。作業の効率化や、セキュアな環境での共同作業、人工知能(AI)を活用した生産性の向上などに、日本の企業が強い関心を示しています。その結果、Boxが日本市場で、このような成功を収めているといえるでしょう。

――日本と米国を比較した際に、企業のあり方に何か違いはありますか?

日本において特筆すべき違いは、企業が決定を下した際に、その変化が迅速かつ効率的に社内全体に波及することです。米国では、部署ごとが異なるアプローチを取ろうとし、IT施策においても実行に移すのに時間がかかります。しかし、日本では、CIOやCEOがイニシアティブを取り、全社向けのデジタル戦略を打ち出した場合、すぐに実行に移され、効果は非常に強力です。顧客訪問をしたときの印象では、同様の規模の企業なら、米国の企業よりも、日本の企業の方がAIを活用したイノベーションに積極的です。経営層がAIの重要性を認識し、ビジネスに取り入れる姿勢が見られました。

Box Japan年間新規受注高は日本の社会変化に応じ大きく増加したBox Japan年間新規受注高は日本の社会変化に応じ大きく増加した

(出典:Box記者会見資料より)

 

オープンかつセキュアなストレージで差別化

――クラウドストレージ市場において、Boxは先駆者ですが、MicrosoftやGoogleなどの大手企業も参入しています。業界のリーダーとして、これらのプラットフォームと比較した際に、どのような差別化をしていますか?


第一に、セキュリティです。企業の機密情報を保護することは非常に重要な観点です。そして、クライアントが使用するSalesforceやSlackなどの他のプラットフォームとの連携もしています。ファイルを一度保存すれば、どのアプリケーションからでもアクセスできる環境を目指しています。そうしたオープンな姿勢が、Boxの特徴ではないでしょうか。

――Dropboxは競合に当たりますが、彼らの戦略についてはどう考えていますか?

DropboxはBtoC市場と小規模企業に焦点を当てた戦略です。一方、Boxは大手企業や中堅企業に注力しています。我々はターゲットとする層の企業に向けて、引き続き競争力のある製品を提供し続けることに主眼を置いています。

 

 

AIに期待、サム・アルトマンとの良好な友好関係

――近日、Box AIのリリースが予定されています。Box AIでは、どんなことが可能になりますか?

コンテンツに対する質問の回答を得たり、企業内の情報から新しいコンテンツを作成したり、AIの力で、コンテンツを最大限に活用し、組織全体の生産性向上を目指しています。

――MicrosoftはOpenAIへの大規模な投資をすると同時に、Boxとも連携しています。Microsoftと比較した際の、BoxのAI戦略の特徴を教えてください。

AI戦略において、Microsoftとは相互に補完的な関係だと考えています。今年7月には、「Microsoft 365 Copilot」との連携を発表しました。Boxに保存しているデータに対してAIを用いることで、より効果的に活用できるようになります。我々はコンテンツ管理の分野での強みを活かして、Microsoftよりも深く進化していきます。

――今年11月にオンラインで開催する「BoxWorks 23」に、OpenAIのサム・アルトマンCEOが参加されると聞きました。

はい、BoxWorks 23で登壇していただく予定です。とても楽しみにしています。AIの未来や、働き方の未来について語りたいと思います。サム・アルトマン氏とは16年来の知り合いです。シリコンバレーで、どちらもスタートアップを創業して間もない頃に出会い、会社が大きくなった今でも、仲良くしています。

――対話型の生成AI「ChatGPT」の登場により、次世代インターネットの Web3やメタバースから、関心がそちらに移っていますが、Web3やメタバースについては、どのように見ていますか?

Web3については、あまり確信を持っていません。次世代を担うようなテクノロジーではないでしょう。メタバースも難しい局面ですが、Web3よりは肯定的に見ています。ただし、仮想世界に住むという未来は想像できないですね。人々は他の人々とのつながりを楽しんでおり、メタバースに住むことは望まないと思います。私が日本を訪れた際、皆さんにお会いできて嬉しいと思いましたが、そのような状況は仮想世界では再現できないでしょう。ただ、メタバースなどを構成する3D技術は我々も積極的に活用していこうと考えています。

――最後に、次の10年に向けて、日本市場ではどのような展開を考えていますか?

日本市場には、今後も積極的に投資を続けていきます。今後も引き続き大手企業をターゲットにするほか、ライフサイエンスや公共、金融サービスなどの業界にも注力します。Boxはすでに日本で素晴らしいパートナーエコシステムを築いているので、より強化するとともに、自社の営業人材の採用も拡大します。また、データセキュリティやワークフローの自動化など、様々な分野で革新を進めていきます。

 

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