新型コロナ特集-1 新型コロナ対策でWeb会議に脚光

――入社式、株主総会もバーチャル化の動き

2020年03月31日

 

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。「首都封鎖」という言葉が飛び出るほど緊迫感は高まり、全社員在宅勤務に踏み切る企業も少なくない。そんな状況で活用が一気に進んでいるのが「Web会議」サービスだ。さらに、入社式のWeb配信化、新入社員研修を含めた社員教育のオンライン化や6月末に集中開催日が来る株主総会もバーチャル化の動きが一気に加速しそうだ。

 

 新型コロナウイルスの感染爆発を防ぐため、人の移動や接触の自粛が広く求められ、多くの企業ではオフィス勤務の社員を在宅勤務に切り替えることで急場をしのいでいる。テレワーク/リモートワークと呼ばれる勤務形態はこれまでもICTを活用した「働き方改革」として普及促進が図られてきた。厚生労働省が開設しているテレワーク総合ポータルサイトでは、企業にとっての効果として①業務生産性向上②新規雇用・離職防止③社員のワーク・ライフ・バランス向上④コスト削減/節電⑤事業継続性確保(BCP対策)――の5つを挙げて導入を推進してきた。2020東京オリンピック・パラリンピックの開催時の混雑緩和のためには、総務省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省が2017年から社会実験を重ねてきた。
 だが、いまのような危機的状況ではBCP(事業継続計画)のための打ち手として、導入・活用が迫られている。(中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~、中小企業庁)

Web会議サービス各社が導入サポートや無料公開など

 そのためのツールとして活用が進んでいるのがWeb会議サービスである。会議室などに専用機器を設置する「ビデオ会議」に対し、SaaS(Software as a Service)として提供される「Web会議」はパソコン、スマートフォン、タブレット端末があれば容易かつ低コストに利用開始できるため、利用が急拡大している。Web会議の2019年の売上シェアを見てみると、1位:ブイキューブ(V-CUBEミーティング)、2位:シスコシステムズ(Cisco Webex Meetings)、3位:ジャパンメディアシステム(LiveOn)、4位:Zoom Video Communications, Inc.(Zoom Meetings)――となっている(シード・プランニング調べ)。

 

 シェアトップのブイキューブは、今年2月には新型コロナウイルス対策としてテレワーク推進ガイドラインの公開と導入相談窓口の開設を実施している。(ブイキューブ、テレワーク導入を検討する企業の支援を目的に、働き方改革・テレワーク推進のためのガイドラインを公開およびテレワーク導入相談窓口を開設、2020年2月12日)

 シスコシステムズは、チャック・ロビンスCEO名でCOVID-19 パンデミック時における事業継続計画支援」と題するメッセージを掲載し、企業や地域社会へのコミットを宣言している。

 ジャパンメディアシステムも、2月26日に新型コロナウイルス感染拡大防止のための、在宅勤務の導入支援、サポートを強化を発表、Zoomは特設サイトZoom | COVID-19感染拡大におけるサポートを開設している。

 さらに、Googleは同社のビデオ会議ツール「Hangout Meets」について、「2020年7月1日まで、G Suiteの利用者すべてに250人まで参加可能な大規模会議などの高度機能を無料で利用可能にする」と表明。

 日本マイクロソフトは事務局を務めるEmpowered JAPAN 実行委員会を通して、緊急ウェブセミナーの無料開催を始めている。

 

企業向けだけでなく、休校中の小中高校生に対する在宅学習支援や就職活動中の大学生に対する企業説明会・面接など、Web会議サービスの活用の幅は大きく広がっている。

株主総会は「ハイブリッド型」が一気に普及

 今後数カ月で顕在化する動きとしては(1)入社式のWeb配信化(2)新入社員研修を含めた社員教育のオンライン化(3)株主総会のバーチャル化――がある。

 日本CHO協会(運営:パソナグループ)が3月21日に公表した調査結果によれば、「半数以上の企業が入社式・新入社員研修を実施へ。入社式は全員を一か所に集めての集合形式を7割の企業が予定」だという。ただし、入社人数の多い大手企業ほど中止したり、Web配信に切り替えたりするケースが多いようだ。

 入社式に引き続いて行われる新入社員研修を延期・中止する企業がある一方、集合型からオンライン型に切り替えて実施する動きもある。新卒内定者・新入社員がスマホアプリやパソコンでビジネスの基礎を学べるサービスを企業向けに提供しているグロービスでは、一部コンテンツの期間限定無償化に踏み切った。

 3月決算企業にとって、多くの株主が1カ所に集まる株主総会をどう開催するかが直近の課題であり、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」という選択肢が浮上している。

法務省「バーチャル出席でも議決権容認」

 これは、経済産業省の勉強会・研究会で2018年から検討が重ねられてきた株主総会改善のための成果。「リアル株主総会を開催しつつ、当該リアル株主総会の場に在所しない株主についても、インターネット等の手段を用いて遠隔地からこれに参加/出席することを許容する株主総会」と定義付けている。ポイントは、インターネット経由のバーチャルな出席でも、リアル会場での出席と同様、質問や議決権の行使ができるということ。法務省も「会社法上認められている」としてお墨付きを与えている。

 

「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しました、経済産業省、2月26日

定時株主総会の開催について、法務省、2月28日

株主総会に関するお問い合わせについて、経済産業省、3月18日

 

 3月13日には、システム開発の富士ソフトが第50回定時株主総会でリアルとバーチャルを融合したハイブリッド型を実施した。Web会議シェアトップのブイキューブは、3月25日に開催した自社の株主総会で、自社サービス新機能のテストを実施した。

 

 今は緊急避難的に導入されているWeb会議だが、企業におけるワークフロー・働き方の見直しや制度革と相まって経営革新・生産性向上の呼び水となる可能性がある。また、教育や医療など、様々な分野での展開が進むと見られる。

 

富士ソフトの定時株主総会主会場(3月12日)
 
議決権行使は電子端末で。「インターネット出席者」11名も同様に
議決権行使は電子端末で。「インターネット出席者」11名も同様に