全固体リチウムイオン電池実用化に向けオールジャパンの体制組む
――NEDO、2022年までに量産を見据えた基礎電池を開発
2018年06月18日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月15日、先進革新蓄電池材料評価技術開発第2期として全固体リチウムイオン電池の開発目標と開発体制を発表した。
全固体リチウムイオン電池は、現状の液体を電解質としたものから、固体の電解質にすることで、発火の危険性除去や、電池パックの不要化など、ユーザーの安全性やコスト低減、電池性能の高エネルギー化・安定化に繋がる。
本プロジェクトでは、委託先の技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)が幹事を務め、自動車、蓄電池、材料のメーカーなど23社、および大学や公的研究機関15法人が連携する。
プロジェクト目標は現行の量産コストと比較して①電池パックのたい積エネルギー密度を3倍の600Wh/Lに②電池パックのコストを1/3の1万円/kWh③電気自動車での急速充電時間を1/3の10分に削減――だ。
各企業から出向するエンジニアが40人、LIBTECの研究者20人で開発体制を組み、知識援助として、大学や研究機関の約100人の研究者が連携する。全固体リチウムイオン電池実用化の課題となっている素材選定、安全性、寿命、製造コスト、エネルギー密度などの要素技術を確立し、2022年に量産を見据えた第一世代の電池を開発することを目標とする。
プロジェクトマネージャーであるNEDO次世代電池・水素部の細井敬氏は次のように語る。
「全世界での全固体電池の特許数は日本が約半数を持っており、その2割はトヨタ自動車が保有している。日本は全世界的に見ても競争優位に立っている状況。お家芸としてきた蓄電池の技術力と技術資産を活かし、オールジャパンでの産学連携体制で固体電池の最適な製品基礎技術創造していく。」
NEDO次世代電池・水素部 細井敬氏
開発企業を代表し、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研研究所、パナソニックの技術責任者が
プロジェクト参画への意気込みを述べた。
―トヨタ自動車 電池材料技術・研究部 担当部長 射場英紀氏
「本プロジェクトが立ち上がったことに感謝する。弊社では長年全固体電池の研究開発に取組んでいるが、課題は山積。その中で、業界に共通する課題である共通アーキテクチャに他の自動車メーカーや電池メーカー、材料メーカー、アカデミアの一枚岩で取り組める体制を構築していただいたことは、本当にありがたく、心強く思っている。是非このプロジェクトの中で大きな技術的ブレイクスルーを乗り越え、何が何でも全固体電池を実用化させたい。」
トヨタ自動車 電池材料技術・研究部 担当部長 射場英紀氏
―日産自動車 総合研究所研究企画部 部長 森春仁氏
「日産自動車では、2010年末に100％電気自動車リーフを発売し、これまでに全世界で約33万台販売し、お客様から電気自動車の環境への優しさやランニングコストの安さ、ドライバリリティの良さなど、少しずつ電気自動車の魅力が広がってきていると捉えている。この魅力を更に大きく広げる可能性を持つ全固体リチウムイオン電池には大変大きな期待を持っている。リーフで考えた時、バッテリーの容量はそのままで大きさは2/3くらいになるのではないかと思っている。商用化では充電性能、ハイパワーで対応できるかがカギとなる。」
―本田技術研究所 常務執行役員 相田圭一氏
「弊社でもハイブリッドを中心に商品展開をしてきたが、これからはプラグインハイブリッド、バッテリー、EVへと大きくラインナップを拡大していくつもりだ。その普及のカギとなるのがバッテリーの技術だ。全固体電池の開発は個別に開発を進めているが、オールジャパンの知見を結集し、量産に向け大きく加速できると信じている。LIBTECの理事も兼務することになるが、LIBTECとしてもこのプロジェクトを通じ、実用化への基盤を作る。」
本田技術研究所 常務執行役員 相田圭一氏
―パナソニック テクノロジーイノベーション本部 資源・エネルギー研究所所長 藤井映志氏
「パナソニックは蓄電池メーカーとして、次世代の全固体のリチウムイオン電池の事業においても海外メーカーに絶対に負けることはできない。プロジェクトの中で我々は、サブプロジェクトリーダとして運営に携わっていくとともに、研究開発の製造プロセスを先導していく役割を担う。」
パナソニック テクノロジーイノベーション本部
資源・エネルギー研究所所長 藤井映志氏
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