「国内法⼈のVDI利⽤動向及び課題に関する調査」
――VDIユーザーへのアンケート調査とインタビュを通じVDI利用上の課題と解決方法を概説
2024年07月08日
■概要
MM総研は、2024年4月から5月に国内法⼈のVDI利⽤動向及び課題に関する調査を実施し、その概要をまとめた。VDIユーザーへのアンケート調査とインタビュを通じVDI利用上の課題と解決方法について概説する。詳細は、2024年7月下旬以降に発刊予定のホワイトペーパーに掲載する予定である。
1. VDI利⽤動向と課題
- VDI利⽤状況:オンプレミスは4割に留まり6割がクラウドに
- VDI∕DaaSの課題:コストや性能に課題残る
- VDIの移⾏方針:PC回帰3割、マネージド仮想デスクトップが3割、アプリ毎に端末環境を切り分けて運⽤が2割
- VDIユーザーのアプリ仮想化への興味は⾼い
- アプリ仮想化により解決を期待する課題
2. アプリ仮想化への移⾏によるVDIコストの削減試算
- VDIのコスト負担:VDI利⽤者の4割近くが年∕台当たり20万円を超える結果どの費⽤帯でも20〜50%ほどデスクトップ端末からVDIにアクセスしている
- STUDY 1:アプリ仮想化で最⼤80%程度のVDIコスト削減を期待(建設業)
- STUDY 2:レガシーアプリ延命のためVDI∕DaaS運⽤コストの削減しモダンアプリ開発へシフト(卸小売業)
■詳細
1. VDI利⽤動向と課題
オンプレミスは4割に留まり6割がクラウドを利用
⽇本のVDIユーザー452社※1の回答結果によると、VDIを展開するインフラは、すでにオンプレミスでの利⽤は4割に留まり、6割がクラウド上に仮想デスクトップを展開していることが明らかとなった(データ1)。しかし、導入や運用の費用が高い、また性能面での課題があることも明らかとなった(データ2)。※1 社員数200-999⼈58社、1000⼈以上394社の企業組織のVDI導⼊、運⽤関与者からの回答
【データ1】VDIを展開するインフラの種類
(n=452、複数回答)
【データ2】VDI利用上の課題
(n=452、複数回答)
今後は、クラウド移行やPC回帰だけでなく、アプリにより端末運用を切り分ける選択も
多くの企業は、アプリ開発運用の過渡期にあり、モダンとレガシーアプリが混在する状況だろう。今後のVDI移⾏先をたずねると、DaaSと VDI廃⽌(PC回帰)が3割ずつで上位2回答を占めたが、3つ⽬の選択肢として、モダンアプリとレガシーアプリで端末から運⽤を切り分けていくという回答が2割におよんだ。(データ3)
【データ3】VDI移行方針
(n=323)
アプリケーション仮想化への興味
VDIユーザーにアプリケーション仮想化配信について概説し興味の度合いを尋ねると、「興味がある」「やや興味がある」という回答が80%以上を占める結果となった。VDIだけでなくアプリケーション仮想化技術を活用することが自社の課題解決につながると考えるユーザーが多いと考えられる。
【データ4】アプリケーション仮想化への興味
(n=290)
アプリ仮想化により解決を期待する課題
興味を持つVDIユーザーに解決したい課題を尋ねると、延命したいアプリを仮想化基盤ソフトウェアなどのVDI基盤のライセンス、ライフサイクルや価格変更に左右されることなく安定運用したいという意向が根強いという傾向が読み取れた(データ5)。
【データ5】アプリ仮想化による課題解決
(n=290)
2. アプリ仮想化への移⾏によるVDIコストの削減試算
VDI利⽤者の4割近くが年∕台当たり20万円を超える結果となっており、クラウドを活用していても、コスト面の課題感は高いと想定される。またどの費⽤帯でも20〜50%ほどデスクトップ端末からVDIにアクセスしているケースがみられることがあきらかとなった。研究機関や設計部門などデスクトップをよく利用する部門からのアクセスも多いことが背景と考えられる。
【データ6】VDIの具体的なコスト負担∕台∕年
(n=155)
【データ7】VDIアクセス⽤端末に占めるデスクトップ型の⽐率(VDIコスト別)
(n=155)
2つのケーススタディにみるアプリ仮想化によるVDIコストの抑制効果試算
A社は、従業員2500⼈超の準⼤⼿建設業である。業界内で相次いだランサムウェア被害を背景に更なるセキュリティ対策が必要となった結果VDIを新たに構築することとなったとしている。2023年から構築と運用を開始したが運⽤費保守費を含め年あたりの投資額が、パソコン1台当たり12万円となっているが、基盤費用や保守費の高騰でさらに支出が増える見通しとなった。
そこで、アプリケーション仮想化を適用してオンプレミスで残す必要のあるアプリを仮想化した場合、どの程度のコストダウンにつながるかを試算したところコスト削減率は最大で80%となることがわかった。
B社は、従業員9000人の卸小売業で、最終的にはクラウド環境でモダンなアプリケーション開発運⽤環境に移⾏したいと考えている。しかし現在は、まだオンプレミスで稼働するレガシーアプリが数⼗本あり
各事業ラインや店舗からの要請で思い切った廃却ができない。これらのアプリを延命しながら稼働させるためだけに仮想デスクトップやVDIを運⽤しており、コスト⾯でも課題であるとする。
現在VDIに投資している⾦額をアプリ仮想化にあててクラウドネイティブ環境に移⾏できるアプリの本数を試算したところ、このケースの場合は 16本分と試算された。IT部門200人の多くを占めるアプリ開発運用要員が、レガシーアプリの保守運用から解放されモダンアプリ開発にシフトできる。このメリットは非常に大きいと考えられる。
※インタビュ―による試算結果の詳細は、発刊予定のホワイトペーパーに掲載予定
■調査概要
国内法⼈のVDI利⽤動向及び課題に関する調査
実施機関:株式会社MM総研
調査期間:2024年4⽉〜5⽉
調査⼿法:①ユーザーアンケート調査、②ユーザーインタビュー調査
回答状況:
①⽇本企業組織に所属しVDIインフラの導⼊決裁権を持つもしくは選定に関与する452⼈
(社員区分) (業種区分)
200〜999⼈∕143⼈ 製造・卸⼩売・運輸業∕149⼈
1000〜2999⼈∕105⼈ その他業種∕303⼈
3000⼈以上∕204⼈
②上記アンケート回答者から抽出した7名
主な設問項⽬:
①予備調査16問、本調査20問
導⼊しているOS・端末・VDI基盤・DaaSサービス、VDI∕DaaSへの課題・満⾜度、プリケーション仮想化への興味など
②10問程度∕1時間
PC OSごとの業務上での利⽤実態、VDI/DaaSの利⽤状況、VDI/DaaS活⽤の課題、VDI/DaaSにかかるコスト、システム管理の課題や⼿間など
本調査は、Google ChromeOS の支援により実施した。
(中村、長尾)