働き方改革やセキュリティ対策で市場拡大が続く

――国内法人PC運用管理・保守サービス市場動向調査

2024年04月23日

MM総研は2024年3月に国内の法人PC運用管理・保守サービス市場を調査した。企業など組織が導入するPCの運用管理や保守メンテナンスを担うサービス市場で、働き方改革を支える情報システム部門やDX、セキュリティ対策部門の人材不足を補い成長を続けている。

 

◆運用保守BPO/LCMサービスへのシフトが進む

国内PC運用管理・保守サービス市場は、2018年度以降、年率4%の成長を続けており、2023年度に3013億円となる見通し(データ1)。今後も2025年度に予定されるOS更新に伴うパソコン本体の入れ替えに伴い市場規模が拡大し、2026年度は3668億円まで拡大すると予測する。

PC導入に加え、運用管理や保守を代行するBPOや廃棄までをサービス化するLCMサービスが大きく伸びる。一方、主流だったオンサイト保守サービスは減少が続き、運用保守BPO/LCMに包含する形で契約がシフトしている。コロナで働き方が変わり、オフィス内PCの保守から在宅勤務や持ち運びPCの運用管理、メンテナンスにサービスをフトが必要となり、ヘルプデスクや修理も遠隔や修理送付、代替機送付などの対応が必須となっている。特に大企業で続く在宅と出社を織り交ぜた働き方へにあわせてサービス内容の変化がみられる。またキッティングと呼ばれる導入時サービスや、アクシデントケアといった保険サービスも同様に成長傾向にある。

 

【データ1】国内法人PC運用管理・保守サービス市場規模と推移

 

 

 

◆大企業の需要が市場成長をけん引

法人向けPC運用管理・サービス市場は、特に大企業で活用されている(データ2)。2023年度の法人PC本体市場に占める大企業官庁の構成比は32%だが、運用管理保守サービス市場は62%を占める。資産管理だけでなく、情報漏洩やセキュリティ対策でもPCの運用管理の重要性は高まっており、大企業、官庁ではグループ会社を含め運用管理を集中化しBPOなどのサービスを活用しやすい状況となっている。

大企業の運用管理・保守サービスの需要増加は、PC調達方式の変化にもつながっている(データ3)。パソコン市場におけるリース・レンタルの利用率を調べると、レンタルの比率が上昇していることがわかった。リースはPC購入の資金調達が目的であり、保守サービスや修理、保険は本体とは別途契約が必要で管理も大企業自身が個別に行う必要がある。レンタルは保守運用管理を本体に包含して契約することが可能。修理費用などが事前に含まれるためリースより契約価格が高くなるが、運用管理に必要なサービスを事前に含むことが多く、結果としてTCOが下がる、もしくはTCOの抑制効果がある。セキュリティ対策や在宅用PCなど管理項目が多い大企業では、情報システム部門の生産性観点から、レンタルを活用したPC調達が徐々に拡大している。

 

【データ2】パソコン本体と法人PC運用管理・サービス市場構造の比較

 

データ3】国内パソコンのファイナンス方式比率 リース・レンタルの構成比

 

 

 

◆生成AIやクラウドの推進には端末の運用管理が重要

日本の情報システム部門は、業務を熟知し得る長期雇用を背景に人材育成と内製化を進めてきたが、業務でのインターネットやクラウド活用が急速に進み、セキュリティ対策やDX対応など課題が山積している。生成AIを含むクラウド活用の推進には、端末の適切な運用管理や監視が最も重要な対策となる。このような背景から、運用管理・保守市場はサービスの進化と共に今後も成長が続くと見込む。

 

【用語定義】

1.オンサイト保守サービス

事前契約によるパソコンの利用場所への出張修理を指す。予防点検等を含むことがある

 

2.アクシデントケア

 事前契約による故障以外の落下など不作為の故障への修理保険サービスを指す

 

3.運用保守BPO/LCM

事前契約によるパソコン運用(監視、不具合対応、ヘルプデスクサービスや故障時対応)および保守修理対応業務を部分的・もしくは全部業務受託するサービスを指す。利用終了時の廃棄などを部分・もしくは全部含むことがある。またこれらサービスを包含するサブスクリプション型のサービスを含む。

 

4.キッティング

PCの導入前セットアップや設置サービスを指す。なおLCMに含まれBPOとして一体提供される場合は、運用保守BPO/LCMサービスに含まれ、本セグメントには含まない。

 

5.その他修理サービス

事前契約による修理拠点持ち込みや故障品送付による工場修理など、現地修理以外のハードウェア修理全般を指す。

 

【調査概要】

調査実施期間

2023年12月~2024年2月

 

調査手法

ユーザー調査およびヒアリングによるMM総研研究員による調査分析

(中村 成希)