アクセンチュアが描く「デジタルツイン・エンタープライズ」の世界

―――生成AIを用いて

2023年11月06日

生成AIを活用した経営術・仕事術 最新動向勉強会の様子

(出典:アクセンチュア)

 

 アクセンチュアは11月2日、生成AI(人工知能)の将来像に関する勉強会を開いた。勉強会では、生成AIの最新動向とアクセンチュア社内での実践事例、今後の展望について紹介された。

 

生成AIの最新動向

 

 米OpenAIの対話型生成AI「ChatGPT」が公開されて約1年が経った。最近では、11月1日にMicrosoftの「Microsoft365 Copilot※1(以下 Copilot)」が一般公開された。生成AIが現在どのような状況にあるのか、勉強会の冒頭で紹介された。

 

※1 OpenAIのGPT-4をベースにした大規模言語モデル(Large Language Models、以下LLM)をTeams、Word、Excel、PowerPoint、Outlookなどの各Officeアプリケーションに組み込み、組織内のチームやメンバーの生産性の向上や業務効率化を改善するためのツール

 

 まず、公開されたばかりのCopilotの機能が一部紹介された。チャットやビデオ会議ができるコミュニケーションツールである「Microsoft Teams」でCopilotを用いると、会議の内容をまとめてくれたり、アクションアイテムをリスト化してくれたりする。また、電子メールソフトウエア「Microsoft Outlook」では、書きたい内容の返信メールを英語や日本語で作成してくれたりする。

 こうした最新の生成AIのユースケース(活用事例)だけでなく、どの程度社会に必要とされているのかといった視点も今後の動向を知る上で重要だ。アクセンチュアによると、企業の経営幹部を対象に調査した結果、AIが投資の最優先事項であると回答した割合は日本以外の国で75%、日本では77%だった。ただし、実際に多額の投資をしている日本企業は3割程度と少ない。ただ、今後2年間でAIへの投資をより拡大する予定の企業は、日本では99%、他の国でも軒並み100%に近い値となった。AIへの投資は企業にとって喫緊の課題であり、同時に、生成AIのユースケースがまだまだ少ない中で、どういった方法で企業活動に組み込んでいくのかが問われている。

 

アクセンチュア社内での実践事例

 

 生成AIのユースケースが少ない中で、アクセンチュアでは積極的に生成AIを使ったシステムを開発して社内でのユースケースを生み出しているようだ。勉強会では、①会議で意見を述べるAI②セールス活動を支えるAI――が紹介された。

 会議で意見を述べるAIは、議論を聞いて、内容をまとめてくれるだけでなく、意見を追加で出してくれるシステムだ。アクセンチュアの知見も学習しているので、過去の事例や話の文脈も含めて提案してくれる。

会議で意見を述べるAIのデモンストレーション(左画像)及び表示画面(右画像)の様子

表示画面では会議をまとめたものがリスト化されている。また、白点は、AIから提案された意見

(出典:アクセンチュア)

 

 セールス活動を支えるAIでは、例えば、BtoB営業において、企業研究に役立つ資料の要約、顧客への提案内容、トークスクリプトの作成をしてくれる。チャットを用いてAIとのロープレもできる。

 

今後の展望について

 

 ここまで個々の仕事における生成AIのユースケースを紹介してきたが、より広範囲の企業活動でも生成AIを活用していこうとしている。より広範囲の企業活動とは、①経営者が個々の業務を確認し、直接指示を出す②個々の業務システム(営業、製造、財務など)の連携③株主、顧客、従業員の声の業務への直接的な反映――だ。これらの活動は、組織を横断するだけでなく、多くのステークホルダーが関わるため、全体の最適化が難しかった。しかし、生成AIを用いることで、全体最適を実現する世界が見えてきている。アクセンチュアが描く「デジタルツイン・エンタープライズ※2」を実現した世界である。

 

※2 企業活動をデータ化し、デジタル上に再現することで、AIにより最適化し、実際の事業活動に反映させること

(出典:アクセンチュア)

 

 デジタルツイン・エンタープライズを実現するための要素として、勉強会では2つのシステムが紹介された。①経営者が個々の業務を確認し、直接指示を出す②株主、顧客、従業員の声の業務への直接的な反映――で使われるシステムである。

 まず、①では、「経営者が直接対話できる企業システム」が紹介された。

 経営者がチャット形式で質問を投げかけることで、KPI(重要業績評価指標)の表を用いて数字や図を示しながら、対話形式でアドバイスをしてくれる。また、アドバイスについての深掘りもできる。

 

企業が直接対話できる企業システムの使用画面

右側にチャット機能がある。AIは、左側の図や数値を色などで強調して示しながらアドバイスをくれる

(出典:アクセンチュア)

 

 ②では、「株主との対話のサポート」が紹介された。株主の想定質問を生成したり、返答を用意したりする際に、具体的な数値を盛り込んで話をつくったり、言葉のニュアンスを優しくしたりすることができる。仮想人格を作ることで様々な人になりきることができる生成AIが得意とする分野であると言える。

(出典:アクセンチュア)

 

 さらに、これらのシステムを用いて、アクセンチュアは「AI HUBプラットフォーム」を構築している。このプラットフォームは経営者がチャット入力した経営上の実行したい内容を生成AIが判定する。次に判定された意図を実現できる最適なタスクを判断し、既存システムにフィードバックすることで、経営者の意思を現場にダイレクトに反映させる。さらに、その結果を見て、再度シミュレーションし、その結果から経営者が次の経営判断をしていく。アクセンチュアは、AI HUBプラットフォームを使ってデジタルツイン・エンタープライズを実現させていくようだ。

(出典:アクセンチュア)

 

(井上)