管制技術でドローンの安全飛行支えるベンチャーの挑戦

――【連載第11回】無操縦時代の安全運用に向けて

2021年10月01日

 

(MM Report10月号より)

■旅客機の航空管制システムを開発した実績

株式会社トラジェクトリーの創業者でもある小関社長は前職のNTTデータ時代に旅客機の航空管制システム、特に軌道予測モデルの開発リーダーをしていた。航空管制を原因とする航空機のニアミスや事故の多くはヒューマンエラーに起因している。小関氏が開発した軌道予測モデルはシステムの判断に基づく最適な管制業務の実現に貢献している。

「この軌道予測モデルを用いて、離陸前に飛行コースを計算しリモートで飛ばすという考え方は、ドローンの運用にとても合致する」と小関社長。2018年3月に現在の会社を設立した。

同社はドローンの管制ソフトウェアの開発が主力事業。AIによる飛行ルート策定と遠隔操縦技術に強みとし、AI管制プラットフォーム「TRJX」が代表的なサービスだ。海外製ドローンの輸入も手掛け、これらを組み合わせることで、銀座のオフィスから、インターネット回線で宮崎県の日南海岸に設置したドローンポートにつなぎ、遠隔飛行する実験に成功している。日本では法制度上まだ実運用はできないが、「TRJX」で安全な飛行ルートを事前計算した上で、多数の機体を遠隔飛行させることは同社保有技術ですでに実現可能となっている。

 

■3Dマップ作成事業を通じた地域への浸透

地方自治体が委託するドローン画像を使った都市3Dマップの作成にも取り組む。防災や都市計画が主な用途だが、高精度3Dマップのデータは管制システムの運用上、不可欠だ。DXに注力する石川県加賀市など顧客自治体に拠点を開設し、地域でドローンの仕事をつくりながら、住民との関係醸成にも励む。

自治体開拓に注力する理由は、各地の3Dデータた飛行履歴データをプラットフォーム化し、民間のドローン運用事業者に使ってもらうビジネスを狙っているためだ。安全飛行のためのプラットフォームとして、いわば「空港利用料」のように使ってもらう。「日本の3分の1くらいの自治体を当社でカバーしたい」と小関社長と話す。

日本で管制プラットフォームを開発する企業は通信事業者が多い。現時点では競合関係にあるが、管制システム間のデータ交換が実現すると、各システムの配下にいるドローン同士が協調して飛行できるようになる。そうなれば、同社のミッションステートメント「誰もが空の恩恵を享受できる世界を実現する」が現実味を帯びてくる。

 

(狩野翼)

※ 詳細は会員限定調査情報誌「MM Report」2021年10月号をご覧ください。