古河電池 先行するマクセルから事業譲渡受けドローン向けバッテリーに市場参入

――【連載第十回】空域活用の可能性の鍵を握る技術

2021年09月01日

 

(MM Report9月号より)

■「はやぶさ」向けなど特殊用途に実績

 ドローン機体を構成する部材の中で、性能の向上に期待が集まるのはリチウムイオン二次電池(以下、LiB)だ。古河電池は今年4月にマクセルのドローン用バッテリー事業を引き継ぎ、新規参入を果たした。

 自動車用鉛蓄電池を主力商材とする古河電池は1980年代からLiB開発に着手し、特殊用途で実績を積み上げてきた。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」には同社LiBが採用されている。同社はLiB事業の本格展開には慎重だったが、DRESSプロジェクトで実績のあるマクセルから事業承継し、成長分野のドローン用途で事業拡大をめざすことになった。

 現時点で、自社ブランドでドローン用LiB製品を提供しているメーカーは国内では古河電池1社のみ。高品質な「古河電池ブランド」の活用と、バッテリーおよび付随機能の開発を代行するパートナーシップ構築を重視する戦略で、業界内のデファクトを狙っている。


■成長見込める産業用を主戦場に選ぶ

 主要ターゲットは農業・インフラ点検・物流などの用途で開発を進める日本国内のドローンメーカーだ。国内の機体メーカーへの提供実績を作り、国内市場を固めた上で、顧客の海外展開に連動した海外進出を狙う。高性能に加え、最適なエネルギー利用を実現するインテリジェント機能を充実させている点が強みだ。柔軟な顧客対応力や少量生産対応力なども武器だ。

  最大の課題はバッテリーの軽量化だ。古河電池が顧客として最も有望視する物流用ドローンメーカーでも、軽量化に対する要求は特に強い。めざすは業界トップレベルの軽くて高機能な製品だ。

 「バッテリーはアナログの世界で、成長速度の速い半導体の世界とは異なる」と語る。化学電池の開発は、採算を考慮し「バッテリーの構造物を1グラムでも減らす」というわずかな改良を地道に積み重ねていく作業に尽きるのだという。

 日本のデジタル製造業の国際的な地位は大きく低下したが、化学・素材産業の競争力は依然として高い。古河電池は優れたバッテリー開発を通じ、日本のドローン産業の存在感を高めていくに違いない。

 

(狩野翼)

※ 詳細は会員限定調査情報誌「MM Report」2021年9月号をご覧ください。