豊かな森林資源の把握にドローンを活用

――【連載第六回】実用化の動きが急加速する森林測量

2021年04月01日

 

(MM Report 4月号より)

 林野庁が所管する国立研究開発法人 森林研究・整備機構の研究機関である「森林総合研究所」。北海道支所・北方林管理研究グループの古家直行グループ長は、人工林の維持・管理に必要な情報を収集して経営判断につなげるため、広域の資源量把握や動態モニタリングの方法を研究している。近年では、上空からデータを取得するためドローンの活用を模索する。

 

■三次元モデルの精度を向上

 国産材需要の高まりが期待される日本の林業では、ドローンやICT活用が業務効率化と競争力向上のために重要となっている。森林情報をデジタル化し、共有化する取り組みが進むが、その一環としてドローン測量にも期待がかかる。これは、ドローンを使うと① 樹木の分布、② 災害時の倒木・被害状況、③ 地形、④ 樹木の高さ・生育状況、⑤ 森林所有者の境界を確定するための情報といった、森林の現状把握や林業経営者の意思決定に必要な画像データを簡単に収集できるためだ。

 また、必要なタイミングで撮影できるためオンデマンドの状況把握が可能となる。5年に一度程度の航空写真に頼っていた時代には得られない、リアルタイムの画像を手軽に入手できる。

 さらに、ドローン空撮の最大のメリットとして、地上・樹木の画像解像度が数センチレベルになる点があげられる。衛星写真ではこの解像度は実現しない。画像から伐採計画などに活用される三次元モデルが作られる。高解像度の画像を使えばモデリング精度を高めることができるのだ。

 

(画像1)ドローン画像から作成した森林データの例(古家氏提供)

 

(画像2)詳細な地形を表す陰影図(古谷氏提供)

 

  ドローンを林業分野で本格的に活用するには技術的な課題も多い。山林では通信インフラも整備されていない。効果的な運用方法の確立と、林業経営者が簡単に利用できるドローンソリューションの登場が待たれる。

 

■苗木運搬で林業経営者を支援

 人の作業を置き換えるための新しいドローンの使い方も検討されている。有望なのは苗木や資材の運搬用途だ。現地での人力作業に頼る苗木の植え付けや、食害防止のためのシカ柵用資材の運搬は大変な重労働だ。8㎏程度を積載できるドローンがあれば、1回あたり40本以上の苗木輸送が可能となる。

 「林業は田畑のように頻繁に行ける場所ではなく、足場の悪い山地での作業が中心だ。苗木運搬などで造林作業にドローンを本格活用できれば、林業事業体の直接的なコスト削減に貢献できる」と古家氏は期待を寄せる。

(狩野翼)

 

※ 詳細は会員限定調査情報誌「MM Report」2021年3月号をご覧ください。