ドローンが警備業界の主役に

――【連載第3回】警備業界の最新動向

2020年12月01日

 

(MM Report 12月号より)

 警備業界におけるドローン活用の主な取り組みを過去5年間についてピックアップすると、大手を中心に多くの実証実験が実施されてきたことが分かる。

(図1)警備業界での主なドローン活用の取り組みに関する時系列表

 

 まず「不審なドローン」を検知し、警備体制を組むというサービスから始まり、2016年ごろからドローンを警備に活用する方向に転じる。現在は、通信ネットワークやAI、飛行位置特定技術などを組み合わせた実証実験に関する発表や記事が目立つようになっていく。
 業界の活用事例は大きく2つのパターンがある。無人化・省力化による人手不足対策、および革新的なサービスの開発だ。

■ALSOKやセコムが相次いで実証実験

 無人化・省力化の代表例は、ALSOKが2020年7月に東京スカイツリーや東京ソラマチなどで実施した「完全自律飛行ドローン」による巡回警備実験。ドローンが施設内を巡回飛行して撮影した画像を警備員室から遠隔で確認するというもの。専用ポートから警備ドローンを離陸させ、異なるフロア間の移動、飛行中の映像リアルタイム配信、AIによる人物検知などに成功した。 

 セコムが2019年8月に花園ラグビー場(東大阪市)で、KDDI、KDDI総合研究所と共同で実施した5G活用スタジアム警備の実証実験は、これまでにない警備サービスの提供をめざしたものだ。上空の4K映像を5G回線で伝送し、画像をAI解析して異常の早期発見につなげる。数万人規模のイベントにおける警備と運営のかたちを、ドローンが大きく変えることになるかもしれない。

■中小警備会社のドローン活用は待ったなし

 中小警備会社でも、設備投資額が比較的低いドローンを警備業務に取り入れたいというニーズが高まっている。警備契約先の敷地内や建物外周の画像を上空から撮影し、警備員の巡回業務を置き換えようというものだ。「福島ロボットテストフィールド」(福島県南相馬市)でも2020年5月に『警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン』を公表している。
 中小警備会社の課題は、施設警備とドローン操縦の知識を兼ね備える人材の確保だ。目視外飛行や夜間運用は飛行経験豊富な操縦者がいなければ運用そのものが難しい。
 最近は、事前設定されたルートを自律飛行し撮影できる、定時巡回警備のような業務に適したドローンソリューションが開発されている。簡単に運用できる廉価なソリューションが登場すれば、警備業界全体でのドローン導入が一気に加速する可能性もある。

※ 詳細は会員限定調査情報誌「MM Report」2020年12月号をご覧ください。

(狩野翼)