ドローンは日本の物流を救えるか?

――【連載第2回】過疎地物流の危機を無人化技術で緩和するドローン

2020年11月02日


(MM Report 11月号より)

 日経電子版やドローン専門メディアに2020年9月までの5年間に掲載された主要記事をリストアップ。ドローン輸送の実証実験が実施された地域を白地図上にプロットしてみた(図1)。開催地を俯瞰すると大きく2つに分類できる。

(図1)ドローンによる物資輸送の実証実験が実施された地域(筆者調べ)


 1つは星印が密集する「国家戦略特区」の自治体で、新技術開発や産業創出で先端を行く。飛行規制が特区内で緩和されていたため実施時期は比較的早い。好例は福島県南相馬市。「福島イノベーション・コースト構想」の拠点で、ドローン活用の中心地として実証実験を積極的に受け入れてきた。

 もう1つは山間部や島嶼部などに分散する丸印。過疎地の物流対策としての実証実験だ。多頻度小口配送が加速する物流業界の救世主としての期待の大きさがわかる。

 貨物輸送の中核をなすトラック陸運は費用の約5割を人件費が占める労働集約型産業だ。ドローンは少量貨物であれば無人の自動配送も可能なため、過疎地の人手不足・コスト高への解決策・緩和策になり得る。わが国を代表するリーディングカンパニーが “ラストワンマイル”での活用を想定している。


■楽天、ユーザー側から物流危機に挑戦
 ドローン輸送事業を展開する楽天。同社のドローン・UGV事業部の向井秀明GMは「ドローンの活用を始めたのは、Eコマース事業の成長のためには物流危機を解決することが必要だったため」と話す。物流サービスの需給逼迫はすでに看過できない状況だ。

 楽天は2020年9月に長野県白馬村で、約1600mの高度差のある山荘へ物資を輸送する実証実験に国内で初めて成功した。ヘリコプターを飛ばすか、山道を人が登るしかない山岳輸送にドローンという選択肢を加えようとしている。「特殊な物流シーンであっても、人員やオペレーションを調整すれば採算が取れると試算している」と向井氏は自信を見せる。

 

■機体の信頼性が商用化を左右

 最大の課題は人材やノウハウをいかに地方へ集めるか。楽天では開発したノウハウを地元の業者に提供し、地域運用を浸透・定着させる方法を検討中だ。

 もう1つは「機体の信頼性」(向井GM)。商用水準に達する高い信頼性を持つ機体はまだ開発されていない。現状、機体の信頼性不足を人手で補う運用体制を組まざるを得ない。結果的に、ドローン飛行の最大の必要経費「操縦補助者の人件費」が上昇している。商用化はここに切り込むことが必要だ。

 今後の機体開発の動向が本格商用化の姿を大きく左右する。

(狩野翼)
※ 詳細は会員限定調査情報誌「MM Report」2020年11月号をご覧ください。