官民連携し、通信維持が喫緊の課題に

――外出自粛で急増するネット利用

2020年05月12日

 

 新型コロナウイルスの拡大後、世界のインターネットトラフィックが急増している。欧米の一部地域では通信トラブルも発生しており、ネットワーク帯域の逼迫に対する懸念が広がっている。米アカマイ・テクノロジーズが2020年3月23日に公表した内容によれば、世界全体の1~3月のピークトラフィックは前年同期の2倍以上となる160Tbps強を記録したという。企業の在宅テレワークや学校の一斉休校などで、ビデオ会議や動画視聴、ゲーム、SNSなどの利用が大幅に増えているためだ。ビデオ会議アプリ「Zoom」は1日の会議参加者が昨年12月から4ヵ月で30倍の3億人に拡大した。日本でも同様に、全国の小中高が一斉休校となった3月2日以降、継続してトラフィックが増加。特に平日昼間の時間帯で顕著な傾向となっている。

 

■国内の平日昼間の通信量、1.5倍に

 

 OCNの名で国内に約720万のインターネット接続利用者を抱えるNTTコミュニケーションズが開示したデータによると、コロナ感染拡大の影響が出る前の2月25日の週と比べ、緊急事態宣言が発令された4月6日の週の平日9~17時の時間帯で光回線のインターネットトラフィックは最大28%増、翌週は最大39%増、5月7日の週では最大50%増となった。一方、土日や通常時のピークとなる夜間帯は同7日の週でも13~17%増にとどまり、それほど増えていない。NTT東西各社が開示した光回線のトラフィックデータもほぼ同様の傾向を示し、これは日本の状況を表しているといえる。

 

 国内のトラフィックは年々増加傾向にあったものの、1年間で2割程度増のペースだったことを考えると、たった数週間でそれと匹敵するトラフィック量となった。

 

 昼間に増加したトラフィックはそれでも夜間帯のピークトラフィックには至っておらず、NTTコミュニケーションズとNTT東西は現状ではネットワークに十分な余裕があるとしている。ただし今後も同様の増加が続けば、利用環境によっては固定インターネット通信のトラブルが起きかねず、予断を許さない状況だ。

 

【OCN 平日トラフィック】

※ダウンロード通信の合計トラフィック量を時間毎に平均

出所:NTTコミュニケーションズ https://www.ntt.com/about-us/covid-19/traffic.html

 

 

■ライフライン維持に知恵絞る

 

 総務省は4月10日に29社・団体と立ち上げたインターネット品質維持・向上を目的とした「インターネットトラヒック流通効率化検討協議会」で、今回の新型コロナによる通信維持についても対応を協議するという。

 

 動画サービス各社も対策に動き出している。米ネットフリックスは、欧州を手始めに再生画質を帯域幅に応じて調整できる「アダプティブストリーミング(最適化配信)」技術を応用し、25%のトラフィックを削減。米ユーチューブは、世界各地で「標準画質(SD)」での動画再生を基本設定に変更した。

 

 新型コロナウイルス感染拡大の収束見通しが立たない中、経済・社会活動を支えるライフラインとしての固定インターネットの重要性はますます高まる。緊急事態宣言が延期となった5月以降も企業のテレワークがさらに進むほか、学校での遠隔授業も本格化するとみられ、トラフィックの増加は必至だ。通信の障害が起これば経済活動が制限され、オンライン学習も難しくなる。遠隔医療も必要に迫られている。生活面ではECをはじめ、動画・ゲームなどの娯楽も必要だ。

 

 官民が協力体制を構築して通信インフラを維持する対応策を早期に検討し、実行に移すことが求められている。