e-ガバメント時代のICT検査とは

――会計検査院の役割を聞く

2020年01月30日

 デジタルトランスフォーメーション(DX)やクラウドバイデフォルトの呼び声のもと、政府自体のデジタル化が進む中で、会計検査院のICT検査はどうあるべきか。「e-ガバメント」時代の会計検査院の役割について、同院の 業績検査計画官 兼 情報化統括責任者(CIO)補佐業務担当の土肥亮一氏に取材した。

 会計検査院ではICTについては同院第5局の中の「情報通信検査課」内に「情報システム検査室」と呼ばれる専門の室を設け省庁を横断的に検査している。各国の会計検査院の検査(監査)はそれぞれ固有のものがあるが、日本では、重要性に応じて、必ず見る項目と抜粋して見る項目にわけて検査するため、より深堀りした検査が可能だ。「他国にない深い検査を前提とした事例を多く抱えるため、海外の政府関係者から意見を求められることも多い」と土肥氏は話す。

会計検査院ではさまざまな会計検査分野でのスペシャリスト育成にも注力しており、例えばIT人材の育成については官民人事交流制度を用いて、職員がITベンチャーを数年経験するといったケースも。ただし、ICTについてのスペシャリストはまだ十分とは言えず、民間からの期間限定雇用にも頼らざるを得ないものもあるため、今後もICTのスペシャリストの育成・確保に注力していく方針だ。会計検査院全体での調査官は約800人。ICTの省庁横断的検査については「情報通信検査課」の「情報システム検査室」が担当し、約20名体制で検査する。

 

適正な会計処理をしているかどうかチェックするとともに、効率性や経済性、有効性なども検査軸となる。政府はクラウド利用によるコスト削減をめざしており、そうしたKPIとの省庁全体でのかい離性なども参考にするという。また、「ICTが国民などのユーザーの利便性にどれだけ直結しているかなども重要な評価軸になる」という。

土肥氏は「ICT推進については会計検査院ではあくまで独立した立場を保持し、第三者的立場として検査を続ける方針」と締めくくった。