マイクロソフト ヘルスケア分野でDX推進

――クラウド成長率 対前年比1.5倍

2019年10月09日

 マイクロソフトは10月8日、ヘルスケア分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の最新状況、取り組み事例について発表した。

 

業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・制約営業統括本部長 大山訓弘氏

 

 同社の注力分野は、「医療現場の働き方改革」「医療の質の均てん化」「ヘルスケア連携」の3点だ。

 

 「医療現場の働き方改革」として、生産性向上と新しい働き方を推進するため、社内チャット、ビデオ会議、ファイルストレージなどが使えるグループウェア「Microsoft Teams」を中核に推進している。データ共有がマルチデバイスで対応できるため、医者や看護師、技能士など多職種との連携に活用されている。今年はTeamsと基幹アプリケーションとの連携に注力し、現在20社のパートナー企業と話を進めている。その企業の一つTXP Medical株式会社(本社:東京都中央区、園生智弘 代表取締役)と進めているのは、救急カルテシステム「NEXT Stage ER」だ。

 通常、救急病院に運ばれてきた患者が一般病院に移る場合、症状や処方などを医療従事者が文章を作成、病院へ転送される。この手順をTeamsと連携することで「Next Stage ER」に書かれたカルテ情報が、Tamsに搭載されたAIにより必要情報のみ抽出、自動的にTeamsで救急病院から一般病院へ送られる、という仕組みが検討されている。

 

 「医療の質の均てん化」として、AIやMixed Reality(ホロレンズ)を活用した最先端テクノロジーにより実現を試みている。同社はアステラス製薬株式会社と共同で、Mixed Realityを使用した医師と患者のコミュニケーションツールを開発。現在、骨粗しょう症などの一部病気において、「治療に対する理解不足」「服薬意義の理解不足」から服薬をやめてしまう人がいるが、ホロレンズを活用することリアルな説明が可能になり「能動的な治療を望む」意識養成の一助となる。2019年は4件の実証実験からスタートし、2020年に50医療機関、2022年末までに1000医療機関での導入をめざしている。

 

 

 国立がん研究センターとは、手術映像を用いて医師の暗黙知を可視化し定量的な医療評価の実現に取り組みを行っている。現在、手術映像をAzureに保存し、デジタル化、データベース化している。将来的には「術野で何が起きているのか」をAIに機械学習させ、手術支援機器・手術評価システムなどを視野にいれている。

 

 

 「ヘルスケア連携」においては、現在賛同パートナーとして45社の企業がいる。このうち、今年1年で増えた企業は13社だ。

 

 

 同社は、2018年度から3年間で同分野におけるクラウド売上を2.5倍に拡大することを目標としている。1年の実績として、対前年比で1.5倍を達成している。医療業界における各種規制や法令順守などのセキュリティレベルも担保しながら、今後も更なる拡大・普及に努める。