プロセスマイニングはRPAのキラーコンテンツとなるか

――日本に上陸したCelonis

2019年07月16日

 

■プロセスマイニングのCelonis社が日本法人を設立

 

 企業が働き方改革や生産性向上をめざす中、プロセスマイニングに注目が集まり始めた。プロセスマイニングは、企業が持つERP、CRM、SFAといった業務システムのイベントログデータを使って、業務プロセスを再構成。それらをもとに手戻りが多い業務を可視化・分析し、業務プロセスを最適化できる。

 導入は欧州で先行している。プロセスマイニングツールはいくつかあるが、国内で利用可能なものでは、Celonis社*の「Intelligent Business Cloud」やCognitive Technology社*の「myInvenio」がある。特にCelonis社は同分野でグローバルリーダーと認識されている。同社は19年2月に日本法人を設立。担当者は日本を「重要で魅力的な市場」と話す。国内では大手企業、特に基幹システムとしてSAPを採用している企業を中心に導入が進んでいる。販売パートナーは、主にコンサルティングファームやRPAツールベンダー。今後はSIerにまで広げていきたい考えだ。

 

*Celonis SE(本社:ドイツ ミュンヘン、Co-CEO:Bastian Nominacher、Alexander Rinke)

*Cognitive Technology Ltd(本社:イタリア エミリア=ロマーニャ州/CEO:Massimiliano Delsante)

画像①:Celonis社のIntelligent Business Cloud(IBC)

 

 

■国内でも導入が始まる

 CelonisのIBCは主に①スマートコネクター、②プロセスディスカバリー、③プロセスアナリティクス、④アクションエンジンの4つで構成される(画像②)。スマートコネクターは、業務システムからイベントログを吸い上げるためのコネクターで、多くの業務システムパッケージに対応している。現状、国内ベンダー独自の基幹システムや手組のシステムには未対応だが、「ログ収集のコネクターを作るのは大きな手間にはならない」と担当者は話す。既に国内ベンダーが構築した業務システムを利用する大手通信事業者に、IBCを導入した経験もあるという。②プロセスディスカバリーはイベントログを活用して、業務プロセスを再構築し、可視化できる機能。この可視化をもとに、③プロセスアナリティクスで業務効率やコストパフォーマンスを算出していく。設定次第では、業務自体がでコンプライアンス上問題があるプロセスはどれか、どの企業との取引に時間をとられているかといった分析までできる。ここまでは他のプロセスマイニングツールでも存在する機能だが、Celonisは「アクションエンジン」を開発している。アクションエンジンは、これまで蓄積されたログから、企業固有の業務のクセを学習し、アラートを出す機能。例えば、「繁忙期のXX番の部品調達に遅れが多い」というクセがある場合、「本日、XX番の部品発注業務を進めないとオンタイムデリバリーできなくなります」というアラートを出す。

 

画像②:IBCの基本機能

 

 

■プロセスマイニングでRPAの効果を高める

 

 プロセスマイニングが注目を集める理由のひとつに、RPAの急速な普及がある。MM総研が実施した調査では、たった半年間で導入率*が10%増えている。業種問わず導入が進んでいるのも特徴だ(画像③)。一方で、ユーザー企業から「思ったほど効果が出ない」「もっと効果を出したい」という声を聞くこともある。事情は企業ごとに異なると考えるが、1つはRPA適用業務・プロセスの選定に問題があるのではないだろうか。個人のデスクトップ作業をいくら自動化しても、効果は限定的。会社全体を見渡し、多くの人が手作業している業務を見つけ自動化することで、大きな効果を上げられる。

画像③:RPAの導入率(2019年1月時点と2018年6月時点の比較)

*導入率:年商50億円以上の企業を対象としたWEBアンケート調査から社数ベースで算出。テスト・部分活用の企業も含む。

 

 しかし、会社全体を平等に見渡せる人は少ない。業務プロセス1つとっても、複数の担当者や管理者にまたがるものが多く、どの業務に適用すべきか判断しにくい。会社によっては、部門をまたいだ連携をしにくいケースもあるだろう。こういったケースでプロセスマイニングを適用できれば、客観的にRPA適用業務を洗い出せる(画像④)。

一方で、コスト面での課題が残る。Celonis社の従来のライセンス体系では最小で数千万円のコストがかかる。そのため、中堅中小企業にはハードルが高い。これに関しては「現在、新しいライセンス体系を構築中」とのことだ。また、RPAベンダーやコンサルティングファームが、業務選定サービスとして、スポットでIBCを利用できるケースもあるようだ。RPAの文脈で、中堅中小企業が利用するには安価な利用方法の確立が必要となるだろう。

 

画像④:業務プロセスの可視化とRPA適用