LINK-Jがゲノム・遺伝子解析で新産業創造をめざしイベント開催

――消費者のリテラシー強化と個別化サービス開発がカギ

2018年06月05日

 

 一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)は6月5日、「ゲノムの可能性~新産業創造への挑戦~」と題しイベントを開催した。ゲノム・遺伝子解析をいかに一般に普及させるかがメインテーマ。次世代シークエンサーの登場によるヒト・ゲノム解析コストの加速度的な低減を背景に、個別化医療や創薬、さらには食品やフィットネスなど個別化サービス開発にも可能性が出てきた。

 

画像:ゲノム解析費用の推移(米国) 

出典:National Human Genome Research Institute

 

 

 ビジネスサイドの講演では3社が登壇。最初に講演したのは、遺伝子解析データを基に個人最適化されたプロダクト開発を可能にする「Genomelink API」を米国で提供するAWAKENS Inc.の高野誠大氏。米国では既に約2,000万人が遺伝子検査を受けており、それを基にした個別化商品を開発する動きがある。特に食品やフィットネス、化粧品産業などが先行して開発を進めているという。

 次に登壇したのは、日本国内で遺伝子解析サービスを提供する株式会社ジーンクエストの高橋祥子氏。高橋氏によれば国内で遺伝子検査を受けたことがあるのは数百万人程度であり、まだまだ少ない。同社のサービス利用者を中心にエビデンスを収集しているのが現状であるという。最後に登壇したのは遺伝子解析の手法を応用し、腸内フローラ(大腸内常在細菌叢)の解析サービスを提供する株式会社サイキンソーの沢井 悠氏。個別化サービスを生み出す別のアプローチとして、細菌叢解析の可能性、同社のビジネスモデルについて講演した。

 パネルディスカッションでは米国での遺伝子解析普及の要因と日本での課題について触れられた。米国では①遺伝子検査による祖先探索のニーズが高かった②遺伝子解析のローデータを個人が所有できる③消費者はデータを他の個別化サービスに活用できる――ことが普及の要因であるという。日本国内では、健康に対する意識が高い消費者が遺伝子検査を受けているが、爆発的な普及を促す要因は今のところない。また、消費者側に結果は示すが、適正使用の観点からローデータは渡せていないという。今後の普及のために、消費者のゲノム・遺伝子解析リテラシーを上げていくこと、消費者が便利と感じる個別化されたサービス開発をしていくことが重要であるとした。

 

画像:パネルディスカッションの様子