CP+2018が開幕

――人工知能、VRなど最新技術によるカメラの楽しみ方を提案

2018年03月02日

 一般社団法人 カメラ映像機器工業会(CIPA)主催のカメラに関する総合展示会CP+(シーピープラス)2018が3月1日、開幕した。人工知能を使った最新AF技術や、360度カメラとVRゴーグルの楽しみ方、外装のカスタマイズなど――、カメラメーカー各社が独自に写真撮影や鑑賞の楽しみ方を提案する。会期は4日(日)まで、会場はパシフィコ横浜。

 

CP+2018での完成品メーカーの展示を概観すると、①高機能ミラーレスカメラへの注力度増、②撮影技術の高機能化、③撮影した画像データの工夫や愛機のカスタマイズ――などが挙げられる。

 

■EOS Kissシリーズに初のミラーレス機を投入―キヤノン

 キヤノンブースでは、人気シリーズEOS Kissシリーズ初となるミラーレスカメラ、EOS Kiss Mのタッチアンドトライブースを大きく設けた。今回満を持して2月26日に発表したEOS Kiss Mは女性層や初めて一眼カメラを持とうとしているユーザに対し、小型軽量、簡単、高画質という価値を提供する。またスマートフォンやタブレットなどのスマート端末を持っていればアプリをインストールするだけで、カメラと端末がWi-Fi接続し、即座に撮影した高画質な画像をSNSなどでシェアできるようにしている。

 キヤノン広報によると、「一番の売れ筋であるEOS Kissシリーズにミラーレスカメラを採用した理由は、ミラーレスカメラにキヤノンも注力するというメッセージです」とミラーレスカメラ市場で拡販を行う姿勢を示した。

EOS Kiss M

EOS Kiss M

 

 

■ハイスペックではなくこれがソニー標準―ソニー

 ソニーブースでの注目機種は、2月27日に発表した中上級者向けのα7 III。本機種はα7シリーズの標準モデルだ。しかしながら、α7R IIIやα9で人気を博した瞳AF(オートフォーカス)に追従性を追加し、機能拡充を行ったほか、高感度ISO204800対応、1,693点の像面位相差検出AF、連射枚数最高約10コマ/秒など、最上級機にも匹敵する仕様の機種。タッチアンドトライコーナーでは、最新の瞳AFの追従性を試すことができ、まず顔を検出し、ある程度瞳が認識できるようになると顔の向きを選ばず合焦点する最新技術を体験できる。

 ブースの担当者によると、「高機能化小型化はソニーの得意とする技術、それに加え瞳検出や追従性追加は、技術を惜しまずにより良いカメラで撮影のおもしろさを提供したい。ハイスペックではなく、これがソニーの標準です」と自信をのぞかせた。

SONY α7 III

SONY α7 III

 

 

■深層学習を使ったAF技術を最上級機に搭載、総合電機の強みを訴求―パナソニック

 パナソニックは、動画撮影に対応した最上位機種「GH5/GH5S」と静止画撮影での最上位モデルの「G9 PRO」を展示。タッチアンドトライコーナーでは、オリンピック競技の体操や空手といったスポーツ選手たちの実演を被写体に撮影できる。中でも「G9 PRO」に搭載されているAF技術は最新の深層学習で培った技術を応用。これまでのAF技術に加え、人間の認識と顔認識を組合せた。合焦時間は約0.04秒かつ追従モードにも対応し、秒間20コマの高速連写が可能、一瞬を逃さない仕様になっている。ブースの担当者によると「総合電機メーカーのパナソニックだからこそでき、ビデオカメラ技術で培った技術を結集した機種がこのG9 PROです」と自信を見せた。

G9 PROでの深層学習を利用したAF技術

G9 PROでの深層学習を利用したAF技術

 

 

■技術も遊び心も手を抜かずに、カメラの楽しさを考える―オリンパス

 オリンパスは、OM-D E-M1 Mark IIやPEN/OM-Dの二機種のミラーレスカメラを中心に、カメラを通した楽しさを訴求。なかでも、「外装カスタマイズの楽しさをカメラにも」というコンセプトの元、エイジング加工やレトロ加工を通じたカスタマイズ製品を参考展示した。全て実機で動くようになっており、「カスタムカーという分野があるなら、カメラにも当てはまるはずだ」という社内の遊び心を示したという。

 ブース担当者は、「カメラの技術水準は飽和しかけており、撮影後の楽しみや愛機をカスタムするなど様々な“楽しみ方”があるのではないかというメッセージを発信している。もちろん技術でも手を抜いているわけではなく、個人差によるが画角が600mm相当でも手持ちで20秒くらいはブレないくらいの手ぶれ補正技術やAF精度向上など簡単に良い写真を撮れるようになってきている」と撮影を基準としつつも遊び心を持ったカメラ作りに意欲を示した。

デザイナーがハンドメイドでカスタマイズしたPENシリーズ(参考展示)

デザイナーがハンドメイドでカスタマイズしたミラーレスカメラ(参考展示)

 

 

■D850で楽しんでもらいたい―ニコン

 ニコンは2017年9月発売以来2度の供給不足を発表し、未だ品薄状態が続くD850を中心に展示。相談カウンターやタッチアンドトライコーナーでブースを埋め尽くし、実機を触れられる顧客接点を強化した。ポートレイト撮影会などに有効画素数4575万画素で最高約9コマ/秒を誇るD850を試せる内容となっている。ブース担当者は、「品薄が続きご迷惑をおかけしている。未だに予約を多方面から頂いており、順次真摯に対応させていただきます」と改めてユーザに品薄状態を謝罪した。

品薄が続くD850を体験できるニコンブース

品薄が続くD850を体験できるニコンブース

 

 

■ユーザの為を思えば他社がやらないことも実行するリコーイメージング

 リコーイメージングは、最新の旗艦機種PENTAX K-1 Mark IIや360°カメラRICOH THETAを中心に展示。最新モデルのタッチアンドトライを随所で楽しめるブースづくりを行っている。特筆すべきはPENTAX K-1 Mark IIで型落ちするPENTAX K-1の基盤アップグレード。これはただのファームウェアアップデートではなく基盤そのものを変更するプログラム。ブース担当者によると、「PENTAXユーザは長く大切に使っている往年ファンが多いこと、今回旗艦機種としてはアップグレードスパンが早いことやお客様のニーズをくみ取った結果です。またお客様に長く使ってもらうためには、他社がやらなくても我々がやってみるのは文化になっている」とユーザ第一の視点を示した。本サービスは2018年5月より開始する。

基盤サービスの詳細も展示を行うリコーイメージングブース

 

 

■AIで良い写真を選別・レイアウト、写真を撮った後も楽しめるように日々最新技術を研究

 富士フイルムは、APS-Cミラーレスカメラの最上級機種でシリーズ初のボディ内手ブレ補正機能搭載した新製品「X-H1」をはじめ、中判ミラーレスシステム「GFX」などの上級機種を展示する中、フィルムメーカーの富士フイルムならではの写真を撮った後の楽しみ方である、プリントアウトサービスやフォトブックサービスを展示。中でもフォトブックサービス「イヤーアルバム」は、写真の選定に自社での機械学習を使った写真選定のアルゴリズムを開発。構図や笑顔、複数人でいるなど富士フイルムが定義をする“良い写真”を学習させモデル化し、写真選定技術に採用しているという。気に入らない写真やレイアウトもレコメンド定時後自由に修正ができ、最新技術が写真を撮った後の楽しみを支える。

AI技術が支える富士フイルムのフォトブックサービス

AI技術が支える富士フイルムのフォトブックサービス

 

 

 以上のようにCP+2018を概観すると随所にICTの新技術が採用されており、それらが撮影の楽しみ、撮影後の楽しみを支えていることが随所で見られた。また、ミラーレスカメラへの本格参入や上級シリーズでもミラーレス化が随所で起こっており、AIや通信技術を取入れた第二世代のカメラのデジタル化ともいえる波が体感できるイベントとなっている。

 

CP+2018 オフィシャルサイト

 http://www.cpplus.jp/