準天頂衛星4機体制による高精度衛星測位時代の到来
――‐世界に先駆け、高精度衛星測位サービスが実現へ‐
2018年02月06日
準天頂衛星1号機の運用開始から7年目の2017年までに準天頂衛星4号機すべての打ち上げが成功した。18年4月からは準天頂衛星4機体制による世界に先駆けての高精度衛星測位サービスが実現する。これにより、現在提供されている「位置情報サービス」が大きく変わることが想定される。高精度衛星測位サービスは社会にどのような変革をもたらすのか。利用実証や先行開発事例をもとに今後を展望する。
◆高精度衛星測位サービスとは
「位置情報サービス」といえばカーナビやスマートフォンでも一般的に利用できる“ナビ機能”が代表例として挙げられ、利用は拡大傾向にある。“ナビ機能”は人工衛星が発する測位信号を利用する「衛星測位サービス」が代表的で、この技術は測量・防災等の分野でも活用されている。
しかし、日本の「衛星測位サービス」はそれほど精度が良くない。米国が運用するGPS衛星を利用しているが、カーナビやスマートフォンで受信できる測位信号の数が少ないため、安定した測位精度が得られないからだ。
これを解決するのが、4月にスタートする準天頂衛星『みちびき』による高精度衛星測位サービスだ。衛星測位のサービス環境を劇的に進化させることになる。『みちびき』は日本と経度の近いアジア、オセアニア地域でも、利用することができるため、これらの国々にも、高精度衛星測位サービスの利用が期待される。

◆高精度衛星測位による新たな位置情報サービス
準天頂衛星測位サービスは、以下の6つのサービスを主要サービスとして提供する。
1 | 衛星測位サービス | 準天頂衛星からGPSと同一周波数・同一時刻の測位信号を送信することにより、GPSと一体となって使用して測位することができるサービス |
2 | サブメーター級測位補強サービス | 電離層情報などの誤差軽減に活用できる情報を準天頂衛星から送信して、衛星測位による誤差を減らすサービス |
3 | センチメーター級測位補強サービス | 国土地理院の電子基準点のデータを利用して補正情報を計算し、現在位置を正確に求めるための情報を準天頂衛星から送信するサービス |
4 | 災害・危機管理通報サービス | 防災・危機管理等の担当機関から、地震・津波などの危機管理情報・避難勧告などの発令状況について準天頂衛星から送信するサービス |
5 | 衛星安否確認サービス | 災害時における避難所の情報を準天頂衛星経由で管制局に送信し、収集する手段として利用(検討)するサービス |
6 | SBAS(衛星航法補強システム)配信サービス | 準天頂衛星の静止軌道衛星を用い航空機などに対して測位衛星の誤差補正情報や不具合情報を提供するSBAS信号を配信するサービス |
出典:内閣府みちびきWEBサイト(http://qzss.go.jp/overview/services/index.html)より作成
各衛星測位サービスは、衛星測位信号というデータを利用したビジネスになると考えられる。つまり、「いつ」、「どこ」という測位データを使用するIoTビジネスであるとも考えられ、ビッグデータ、AI、ロボットを基盤技術として活用する第4次産業革命の一環として利用されることが想定される。
例えば、携帯電話通信企業では位置情報を含む多様なセンサー情報をスマートフォンから収集し、用途別にIoTサービスを提供する汎用プラットフォームをビジネス展開するといったことが考えられる。また、個人向け測位サービス、法人向け測位サービスといった切り分けもできる。例えば個人向けでは、スマートフォンを通じたナビゲーションサービスや位置確認サービス、位置情報サービスを高精度測位信号で提供することで精度の高い測位サービスを展開することが出来る。
法人向けでは、自動運転やロードプライシングといった自動車向けサービスや効率の良い運行情報を提供する船舶情報サービス、i-Constructionに代表される測量サービス、様々な物品の位置管理・追跡管理サービスのほか、シェアリングサービスや精密農業といったサービスなど多様な展開が想定される。
このように高精度衛星測位サービスの実現は、一般的には社会へのインパクトが大きいとされているが、4月以降のサービス開始まではどのようなサービスが出てくるかはまだ分からないことが多い。MM総研では引き続き、新たなサービス事例を紹介していく。