MVNOの「通信品質」とは

――速度調査に「快適」さの視点を

2017年09月27日

 2017年3月末の国内独自サービス型SIMの回線契約数は810万回線となり、前年比50.2%増を記録、携帯電話(3GおよびLTE)契約数に占める独自サービス型SIMの契約数比率は現時点で5.0%に高まった。MVNO市場は成長フェーズに差し掛かったと言っていいが、それだけに問題点も見えてきた。

 格安スマホは大手携帯電話事業者(MNO)と比べて1/3程度の通信料金でスマホが持てることから市場が拡大した。しかし、事業者間では値下げや割引キャンペーンなどすでに過当競争を迎えており、格安スマホ事業者の間では淘汰の時代に入っている。楽天が9月26日、「FREETEL」ブランドで展開するプラスワンマーケティングのMVNO事業買収を発表したが、今後同様の再編劇も避けられない。 

 

 

 楽天のFREETEL買収は再編淘汰の第一弾か

 

 MVNO事業者は既存のMNOから通信回線を借りることでサービスを提供している。回線を借りるための接続料は一律で決まっており、一部の事業者が他社よりも圧倒的に安い料金でサービスを提供することは困難である。支払うべき接続料を安く抑え、多くのユーザーに提供すれば、激安料金プランも実現可能だが、その“代償”として、安定した回線品質を提供できず、利用者から「速度が遅い」などとクレームを浴びかねない。結果、節度ある事業者はユーザー数に見合った接続料を支払いマネージする。

 

 

 「格安スマホ」の選択基準とは

 

 それでは、価格で差がなくなってきている中、ユーザーは何を基準として事業者を選べばよいのか。

 一つ目は、自分がすでに他サービスの利用者として登録している事業者かどうかだ。例えば固定回線を利用していれば、まとめて支払いが出来るほか、割引になるケースもある。また、ポイントを貯めたり使ったりと活用することも出来る。

 二つ目はオプションサービス。最近では特定サービスの通信量をカウントしないゼロレーティング(カウントフリー)オプションも充実してきており、自分に合ったオプションを見つけることで事業者を選定できる。

 三つ目は速度である。速度はスマホを利用するうえで重要な指標だ。ここで言う速度は使い手が実感する「体感速度」(体感品質)である。MVNOの比較サイトでは毎週のように各社の速度を計測し掲載しているサイトもあり、とても比較しやすい。しかし、それらの計測アプリで速度ランキングが高い事業者を選び、SIMを実際に利用してみると動画が止まったり、Webサイトの表示に時間がかかったりするケースがある。

 逆にそれほど速度は出ていないが、動画をストレスなく視聴出来たりすることもある。これは、事業者が最適な回線品質を提供するためにトラフィック制御を行っているからである。これは、ストリーミング再生でもユーザーにとって“お得”な制御だと言える。

 ネットワークのスループットをモニタリングし先のスループットを予測する技術や、端末バッファ残量を把握する技術も登場した。これらの新技術を使えば配信流量を動的に制御できる、無駄なデータ通信を減らしつつスムーズに再生することが可能だ。動画視聴を途中でやめてもその少し先の通信量までしかカウントしないためギガの無駄遣いをしなくて済む。

 限られた帯域の中で、技術によってネットワーク品質を維持し提供している事業者のサービスは、料金も安く品質も安定している。今後はこれまでの速度比較だけではなく、実際に利用した際の『快適さ』が重要となるだろう。そのための指標策定が急務である。MM総研としても実際に利用した際の『快適さ』を比較しわかりやすく発表していきたい。