MM総研は10月14日から17日までの4日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC 2025」の協力団体となり、「次世代モビリティ」をテーマにセミナーを開催しました。
開催日時
2025年10月16日(木)13:30 - 14:30
日本語のみ

SkyDrive 代表取締役CEO 福澤 知浩 氏
大阪・関西万博で飛行デモを実施した。万博会場の西側にある、オリックスが設営したポートから出発し、海を一周して戻ってくるフライトを約1ヶ月間、毎日1〜2回繰り返した。私たちの機体は、上部に12個のプロペラを持ち、モーターの回転数を制御することで飛行する。座席は3席、後部には一般的な自動車用と同程度の容量のバッテリーを搭載している。このデモでは、人を乗せずに遠隔操作と自動運転で実施した。
特筆すべきは、このエアモビリティ業界において、日本が「世界で初めて一般の人が多く集まる場所で複数の機体がデモフライトを実施した」という点だ。万博のデモフライトでは、延べ数万人に実機を見てもらい、展示施設の「空飛ぶクルマステーション」全体では140万人にアピールできた。現在、エアモビリティの分野で、日本は米国や中国、一部中東に次ぐ「先進国」という地位を築いていると認識している。
スペックについては、ヘリコプターと比較すると、騒音や価格は約3分の1、重量は約2分の1程度になるのが大きな強みだ。その代わり、航続距離は15〜40km以内がメインとなり、ラストワンマイルの活用が中心になると考えている。騒音軽減と軽量化のメリットは大きく、例えば、都内のビル屋上にあるヘリポート約70カ所のうち、日常的にヘリコプターが着陸できるのはごく僅かだが、私たちの機体であれば300〜500m離れれば騒音はほとんど気にならなくなり、イオンモールのような屋上駐車場でも耐荷重的に利用可能と見込んでいる。日本全国に約1万カ所あるヘリポートなどを活用し、騒音に悩まされずに日常的に空を飛べる世界を目指したいと考えている。
現在、世界で約200社あるエアモビリティ企業のうち、安定飛行を達成し、グローバル認証を進めているのは5社程度であり、SkyDriveも今年その仲間入りを果たした。私たちは、比較的コンパクトな機体での短距離移動でどこでも止まれるものに特化しており、将来的には日本の軽自動車のような強みになるのではないかと見ている。
機体はこれまで5種類ほどバージョンアップを重ねており、直近の機体開発ではスズキと協業している。安全性確保のため、数千項目に及ぶテストを実施。航空機の認証では、「数億時間飛んでも一度も墜落につながらない故障が起きないこと」を保証する必要があり、日本と米国で様々な試験を進めている。プロペラが2~3個停止しても飛行を継続できる冗長性を持たせ、プロペラの配置やバッテリーなども冗長化している。緊急時には、近くのポートへ安全に着陸できる運用も組み込んでいる。認証プロセスは5ステップほどで、現在は国土交通省と「どのような試験結果が出れば認可されるか」をすり合わせている段階だ。日本と米国の当局と認可プロセスを共有できれば、世界的に通用する見込みで、2018年の政府の官民協議会発足以来、実装に向けたサポートをしてもらっている。
現在、アジアや米国を中心に8カ国で400機以上のプレオーダーをいただいている。日本では、JR九州さんと連携し、別府~湯布院間のような観光地間の移動を、車や電車で40〜60分かかるところを15分で結ぶ遊覧移動として展開予定だ。当初の料金は数万円台からだが、将来的にはタクシーレベルを目指す。
大阪では、ベイエリアと新大阪駅を結ぶルートを想定しており、大阪メトロや大阪市と連携し、ポート設置のシミュレーションも行っている。顔認証によるシームレスな搭乗プロセスなども検討中で、大阪や九州、関東で事業開発を進めている。大阪や九州地域では、2028年のサービス開始を目指している。
アジアの特に渋滞が深刻な地域ではニーズが顕著だ。例えばジャカルタでは、空港から都心部への移動に1〜2時間かかるため、ヘリタクシーが始まっているが高額。私たちの機体であればコストを下げられ、エアタクシー事業の本格化が期待できる。
SkyDriveからドローン事業を分社化し、子会社にてドローン事業も展開している。山間部での荷物運搬など、安全性基準が航空機ほど厳しくない領域ですでに実績があり、能登半島地震でも灯油缶の運搬などに協力した。
最終的なゴールは、地上も走行して空も飛ぶモビリティの実現。現在の機体は幅が約10メートルだが、これを公道走行可能な約2m幅のコンパクトサイズにすることが目標だ。この「空の道構想」も、今年から天竜川などで実証が始まっている。高度な自動運転と通信技術が前提となるが、日本と米国政府の連携の下、2030年過ぎには、誰もが空を安全かつ快適に移動できる世界を実現すべく、引き続き邁進していく。
「日本発!次世代モビリティ~新技術に挑むベンチャー経営者に聞く」をテーマとしたパネルディスカッションには、SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEO、ティアフォーの新海正史執行役員CSO、ROBO-HIの谷口恒代表取締役社長が登壇し、MM総研の関口和一代表取締役所長がモデレーターを務めた。
司会:みなさんはどういう思いで会社を作られたのか。
福澤 氏:会社設立前の6年間、有志で集まって多くのアイデアを出し合い、空飛ぶクルマが楽しいのではとなった。初期は手のひらサイズから始め、サイズ拡大に伴う制御の不安定性を4~5年かけて克服し、有人飛行可能なサイズを実現した。インフラが道路や線路に限定されている現状を打破し、空も活用したいという構想から資金調達を経て、2018年に事業をスタートさせた。

SkyDrive 代表取締役CEO 福澤 知浩 氏
新海 氏:創業者の加藤真平代表取締役執行役員CEOの思いを話すが、優れた技術を社会実装するためには、多くの人に関わってもらう必要があるということで、オープンソース化してエコシステムを構築してという思いで進めている。これは、クローズドにして競争優位性を保つのではなく、あえて自動運転の基幹技術をオープンにすることで競争優位性を壊し、後発の不利を克服する上で、ティアフォーだけではなく、周りの人を巻き込んだ成功に持っていき、周辺ビジネスを巻き込んでもっと大きな社会変革をもたらすことができる。
谷口 氏:以前はインターネットの会社をやっていて、インターネットを超えるものをやりたかった。それは物理的に動くものや動かすもの。今は「フィジカルAI」という文脈で世界での話題になっているが、それを25年くらい前に自分でやりたいと思って起業した。
司会:日本の持てる競争力や強み、あるいはみなさんの会社が持つ特別な技術はなんでしょうか。
新海 氏:日本の自動運転開発は、スピード競争ではなく、利用者に安心と安全をしっかりと説明できる開発など、「信頼性」と「社会適合性」を重視すべき。国内の自動車メーカーが持つハード面の優位性を土台に社会実装とプロセスの信頼性を重ねることで、今は先行されていても、5年、10年先には世界に誇れる日本版の自動運転車を世に出していければ、世界で戦えるものになるはずだ。

ティアフォー 執行役員CSO 新海 正史 氏
谷口 氏:私は2001年頃からヒューマノイドロボットをホンダやソニーと共に手掛けていたが、当時はなかなかビジネスにならず一度やめた。しかし今、再びロボット開発が活発化し、各社が勝ち筋を見極めている。過去と同じ轍を踏まないためにも、AIによるソフトウェアの進化を活かした、明確な勝ち筋が見つかれば日本企業も再び力を発揮するはずだ。私は、低価格なロボットで海外と競争しても仕方がないため、OSを作ることに注力すべきと考える。ハードウェア端末は海外製でも構わないが、優れた日本企業と独自のインフラ連携を強みとし、AppleやGoogleのようにプラットフォームを抑えた上で、端末も強化していく戦略を取りたい。
福澤 氏:エアモビリティへの投資が活発なのはほぼ米中で、中東は実装が早いという構図。それらの企業のレベルに劣っていないが、日本の課題は、終身雇用による人材流動性の低さなどもあり、優秀な人材がベンチャーに来にくい点、そして魅力的なベンチャーが少ない点だと感じている。私たちは、その中でリソースが少なくても作りやすい小型機体に注力し、海外展開、特に先行実績のあるアジア市場をまず押さえ、そこからグローバル展開を目指す戦略。欧米よりアジアの方が話が早く進むのは、日本の産業界の先代の方々のブランディング実績のおかげだと実感している。
司会:新しい技術を投入することにより、どんな社会課題が解決できる、あるいは解決しようとしているのか。
新海 氏:ドライバー不足で移動手段が狭まる危機を懸念し、私たちは単なる交通産業の維持ではなく、テクノロジーを活かして「生活産業」などの幅広い価値提供を目指している。そのためにはティアフォーだけではできず、エコシステムとして多くの企業と協力したい。私たちの取り組みへは様々な企業に賛同をいただき、自動運転が暮らしに豊かさをどうもたらすのか、新しい価値創造の取り組みを、ぜひみなさんと一緒に広げていきたい。
福澤 氏:課題解決というのは基調講演で触れたため、どんな未来になるかの視点で言うと、車の稼働率は低く、9割が遊休状態という説もあるが、自動運転が普及すれば駐車場も不要になり、自家用車の台数が1/10になると思う。その空いたスペースも活用し、空飛ぶクルマが縦横無尽に飛び回る未来がやってくる。イメージとしては10年後、スマホアプリで無人の空飛ぶクルマを呼び出し、目的地に着いたら自動で充電基地に戻るようなオペレーションが構築されるはずだ。これにより、これまでの道路や鉄道インフラ前提の移動の苦痛がなくなり、移動が早く楽しくなる。
谷口 氏:人手不足というより人材確保が困難になってくる。ビルや施設の清掃などの管理業務では高齢化が深刻だ。そこで、私たちはロボットやモビリティを活用した新しい施設管理業務を推進している。コールセンターみたいな、ロボットに指示を与える「モビリティオペレーションセンター」が立ち上がりつつあり、これは新しい産業として注目すべき分野だ。

ROBO-HI 代表取締役社長 谷口 恒 氏
司会:新しい社会を作っていく、あるいは新技術を広めるために何が必要か。国や社会などに望むことはあるか。
谷口 氏:海外の後追いは限界だと感じる。米国や中国は自動運転に既に数兆円規模の資金を投じており、それと同じ土俵で戦うのは無意味だ。日本が抱える課題に活かしたものを強みとして、アジアやアフリカなどのマーケットに目を向けていくべき。そして、そうしたビジョンを描ける人材を発掘、育成する必要がある。
新海 氏:社会課題解決のため公共交通の自動運転を進める一方で、サウジアラビアの企業から自動運転車両によるレースのようなエンターテイメントの提案も頂いている。自動運転の安全性をしっかりと担保しながら、今後は「Made in Japan」に固執するのではなく、「Co-Created with Japan」のような、世界とタッグを組んで新しい価値提供を進めていく動きが必要だと考える。
福澤 氏:米国や中国と比べて日本は常にゼロが2個くらい少ない状態だが、とはいえ日本のベンチャー数も確実に大きくなった。これにより、ベンチャーと大企業間の人材交流が増えてきており、特にオープンイノベーションの盛り上がりと相まって人材の移動がさらに進むと、社会にとって非常に良くなると考える。
司会:日本の技術はまだまだあると私は思っているが、それをあえてやらない自己抑制のようなものが、社会全体や企業、政府にあるのではと思う。それを取っ払い、もう一回、素直に自分たちの技術を見直し、それを生かすための環境整備をすれば、日本が世界の最先端技術をリードする立場になるのではないか。とりわけベンチャー企業には若い感性を持って頑張っていただきたい。

モデレーター MM総研所長 関口 和一
<登壇者 略歴>
■福澤 知浩 氏 株式会社SkyDrive 代表取締役CEO
東京大学工学部卒業後、2010年にトヨタ自動車に入社し、グローバル調達に従事。現場でのトヨタ生産方式を用いた改善活動により原価改善賞を受賞。2018 年に株式会社SkyDrive を設立し、「空飛ぶクルマ」と「物流ドローン」の開発を推進。経済産業省と国土交通省が実施する「空の移動革命に向けた官民協議会」の構成員として、「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて政府と新ルール作りにも取り組む。MIT Technology Reviewの「Innovators Under 35 Japan 2020」を受賞、世界最大級のスタートアップピッチコンテスト「Startup World Cup 2022」で準優勝、Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2025」のTOP20に選出。
■新海 正史 氏 株式会社ティアフォー 執行役員 Chief Strategy Officer
大手損害保険会社に入社後、自動車メーカーやサプライヤーとの協業企画を担当。自動運転の社会実装に向けた産官学連携や実証実験を推進する中で、ティアフォーとの資本業務提携を取りまとめ、自動運転技術に対応したインシュアテックソリューションを多数リリース。2023年よりティアフォーに参画し、事業の加速的成長と持続可能な発展を目指す戦略的投資案件をリードするほか、その基盤となるアライアンス構築を担当。
■谷口 恒 氏 ROBO-HI(旧ZMP)株式会社 代表取締役社長
2001年、株式会社ZMPを創業。家庭向け二足歩行ロボットや音楽ロボットの開発を経て、2008年より自動運転分野に参入。2019年、東京藝術大学にて美術博士号を取得。感性とテクノロジーを融合したロボット開発を推進。配送ロボット「DeliRo」では、歩行者との“アイコンタクト”による共存技術で国際特許を取得。さらに、複数メーカーのロボットを統合制御するマルチベンダー・プラットフォーム「ROBO-HI」の基本設計を手がける。2025年4月、社名をROBO-HI株式会社に変更。「ロボットを社会インフラに」を掲げ、スマートシティ(高輪ゲートウェイシティ)、スマートエアポート(空港物流)、スマートホスピタル(病院内搬送)など、都市・社会の現場でロボットの社会実装を広げている。
■関口 和一 株式会社MM総研 代表取締役所長
1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。1988年フルブライト研究員としてハーバード大学留学。1989年英文日経キャップ。1990~94年ワシントン特派員。産業部電機担当キャップを経て、1996年より2019年まで編集委員。2000年から15年間、論説委員として情報通信分野の社説を執筆。2019年にMM総研代表取締役所長に就任。2008年より国際大学グローコム客員教授を兼務。1998年より25年間、日経主催の「世界デジタルサミット」の企画・運営・司会を担う。2009-20012年NHK国際放送コメンテーター、2012-2013年BSジャパン「NIKKEI×BS Live 7PM」キャスター、2015-19年東京大学大学院客員教授、2006-2021年法政大学ビジネススクール客員教授。

2025年
MM総研は10月14日から17日までの4日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC 2025」の協力団体となり、「次世代モビリティ」をテーマにセミナーを開催しました。
開催日時
2025年10月16日(木)13:30 - 14:30

2025年
MM総研大賞はICT市場の発展の一助となることを目的に2004年に創設した表彰制度です。優れたICTの技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業や団体を表彰しています。