RPA導入企業が活用を本格化、AI-OCR導入も約2割

「RPA国内利用動向調査 2021」(2021年1月時点)

2021年02月14日

■ 年商50億円以上の大手・中堅企業ではRPA導入率は37%、2022年度には50%へ

■ 年商50億円未満の中小企業ではRPA導入率10%と、大手・中堅企業と大きな格差

■ RPA導入企業のAI-OCR導入率は16%に

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、国内企業2000社(年商50億円以上:958社、同50億円未満:1,042社)を対象にWebアンケート調査を実施し、2021年1月時点のRPA(Robotic Process Automation)の利用状況をまとめた。RPAは主にデスクワークなどで発生する定型作業を、パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが代行・自動化する技術だ。国内で利用されている主なRPA 18製品(※1)を対象に導入率推移、各種満足度、今後の利用意向などを分析した。

年商50億円以上の企業で新規導入は停滞も、導入済みでは活用を本格化

調査結果によると、年商50億円以上の導入率(※2)は37%と前回調査時点(19年11月)から大きな変化は見られなかった(データ1)。新型コロナウイルスの流行を受け、企業は直近1年のIT投資をWeb会議、グループウェア、ネットワーク再構築、セキュリティなど在宅勤務の環境構築に振り向けた。そのためRPAを新規導入した企業数は増えなかったとみられる。準備中・検討中企業の割合も9ポイントほど下がった。一方で、既に導入している企業でのRPA活用度合いは上がっている。導入率37%の内訳は「本格的に活用している」が16%、「テストまたは部分的に活用している」が21%であり、前回調査よりも本格活用が5ポイント増えた。

【データ1】RPA導入率の推移(年商50億円以上の企業) 

また、以前はRPAを複数利用する企業が半数を占めたが、今回は3割ほどに減少した。複数利用の主な目的であった比較検討・テストが終了し、活用本番に移っているためとみられる。

RPAユーザーの利用促進という観点では、新型コロナウイルスはポジティブな影響を与えている。活用部門数や業務数の変化を聞くと、「増えた」が47%で、「減った」は14%に留まった。コロナ禍で、限られた従業員での業務遂行や在宅での効率的な作業実現のためにRPAを活用するケースが増えているためとみられる。

年商50億円未満のRPA導入率は10%で大手・中堅企業と格差も、2021年度から普及期へ

今回は従来よりも調査範囲を拡張し、年商50億円未満の企業についても調べた(※3)。2021年1月時点の導入率は10%で、50億円以上の企業とは大きな差が見られた(データ2)。また、準備中・検討中企業は25%、未検討の企業が64%となった。この構成は年商50億円以上における2017年の中頃の状況と酷似している。同じようにRPAの認知やユースケースが広まれば、導入率も大きく伸びる可能性がある。

【データ2】RPA導入率(年商50億円未満の企業、n=1,042)

調査結果をもとに、2022年度までの導入率を予測した。2022年度末時点での導入率は、年商50億円以上の企業で50%、年商50億円未満では28%とみる(データ3)。予測には各セグメントでの導入率、準備中・検討中企業の導入予定時期や、企業のIT投資の変化などを活用している。企業のIT投資については、2021年度に「前年よりも増やす」と回答した企業が約3割おり、「減らす」企業は約1割であった。また、RPAに対する投資を「増やす」企業は約4割いることがわかっている。

 このほかにも導入を押し上げる要因のひとつに、クラウド型RPAなど安価に利用可能なツールや、自動化ニーズの高い特定業務をRPA化したパッケージ製品などの登場で、導入しやすくなっていることがあげられる。さらに、2021年度には政府がDX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制を創設する予定だ。これにより企業はクラウドを基本としたシステム投資や自動化の活用をさらに加速させる可能性がある。こうしたDXに向けた取り組みによりできあがった新規システムと既存システムのつなぎ目としてRPAが活躍することも想定される。

【データ3】RPA導入率の推移

利用拡大に向け、推進部門設置やAI-OCR導入が進む

RPA導入企業(年商50億円未満を含む)では利用拡大意向を持つ企業が8割と高く、その取り組みのひとつとしてRPA推進部門を設置している。設置率は46%と半数近くに達し、推進部門の役割は開発・運用のルール作成、活用事例発信、ユーザー部門の教育などが挙げられる(データ4)。さらなる活用を進めるにあたって、RPAユーザーは「従業員の理解」を一番の課題としてあげる。推進部門にはユーザー部門も巻き込み、ニーズを拾い上げやすい仕組みを構築することが求められるが、現状では情報システム部門が主要メンバーになっていることが多い。ユーザー部門などを巻き込んだ混成チームを組めている企業はまだ1割ほどである。

【データ4】RPA推進部門の設置有無と役割

また、自動化範囲を広げる取り組みとして、RPAユーザーはAI関連のソリューションを組み合わせている。代表的なもののひとつがAI-OCRだ。AI-OCR自体の導入率は21年1月時点で7%と少ない。しかし、RPA導入企業に限れば導入率は15%で、まもなくキャズムを超える。このことを裏付けるように、検討中企業も50%とかなり多い。AI-OCRの市場はRPAをテコに広がりを見せることになりそうだ。

AI-OCRは多様なブランドが存在するが、シェアはAI inside社の「DX Suite」が21%で1位となった。次いで2位のNTT東日本の「AIよみと~る」で13%、僅差で3位がキャノンITソリューションズの「Capture Brain」で12%となった。

【データ5】AI-OCRの導入率とブランドシェア

本調査の詳細については、市場分析レポートとして発売しております。

RPA国内利用動向調査2021 レポート

 

■調査概要

  1. 調査対象・件数:国内企業2000社 (年商50億円以上:958社、年商50億円未満:1042社)
  2. 調査方法:Webアンケート
  3. 調査期間:2020年12月28日~2021年1月7日

 

※1 調査対象としたRPA(18製品)

①BizRobo!

②WinActor

③UiPath

④BluePrism

⑤Advanced Process Automation

⑥Autoジョブ名人/Autoブラウザ名人/Autoメール名人

⑦Automation Anywhere

⑧PegaRPA

⑨CELF

⑩SynchRoid

⑪FUJITSU Software Interdevelop Axelute

⑫NEC Software Robot Solution

⑬Nice Robotic Automation

⑭Verint RPA

⑮ipaS

⑯RPA Express/Intelligent automation cloud

⑰Robo-Pat

⑱Microsoft Power Automate

(順不同)

 

※2 導入率の算出について

導入率は社数ベースで算出している。「導入」の判定についてはRPAを「本格的に活用している」「テストまたは部分的に活用している」と回答した企業をカウントしている。

 

※3 調査対象範囲の拡張について

従来、調査対象範囲は年商50億円以上の企業としていた。今回は年商50億円未満にも調査範囲を広げた。従来調査との比較の観点から、従来の対象と50億円未満の企業は区別して導入率を算出、分析している。

 

■報道に際しての注意事項

  1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。
  2. 出典を「MM総研」と明記して下さい(MMは全角)。
  3. 数値等は表ではなくグラフ化して掲載して下さい。
  4. MM総研の独自調査結果であり、公的機関の統計や企業の公表数値等と異なることがあります。また、作成時点におけるものであり、今後予告なしに変更されることがあります。
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■MM総研について

株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀近くにわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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