国内MVNO市場規模の推移・予測

2013年09月18日

■ MNO(移動通信キャリア)でもあるMVNOの回線占有率は50%に迫る状況。今後の更なる
成長に向けて競争環境の整備が必要。
■ 2012年度末( 2013年3月末)時点のMVNO回線契約数は前年度末比61.3%増の1,037万。
■ 2015年度の市場規模は2,392万回線、6,250億円と予測。個人向けSIMカード、およびM2M(機器間通信)を含む法人向けソリューションが市場を牽引。
■ NTTドコモとのレイヤー2接続の実現を背景にMVNO事業者のサービスメニューが多様化。
■ MVNOサービスの認知度は26.2%、一般層への普及に向け認知度の向上が課題に。

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は9月18日、国内MVNO市場の2012年度実績と2015年度までの予測を発表した。

◆ 2012年度末時点での契約回線数は、前年度末比61.3%増の1,037万
 MVNOサービスの総契約回線数および売上額は、2012年度末時点で1,037万回線/3,570億円となり、11年度末の643万回線/2,235億円から回線数で61.3%、売上額で59.7%増加した。
 また、13年度以降の契約回線数および売上額は、13年度末:1,394万/4,450億円、14年度末:1,853万/5,275億円、15年度末:2,392万/6,250億円となり、12年度末~15年度末までの年平均成長率は契約回線数で32.1%、売上額で20.5%になると予測する。

 

◆ 回線種別では携帯電話(3G/LTE)とBWA(WiMAX/AXGP)がシェアを2分
 12年度末時点の契約回線数を回線種別に分類すると、携帯電話(3G/LTE)が500万(シェア48.2%)、PHSが25万(同2.4%)、BWA(WiMAX+AXGP)が512万(同49.4%)となり、携帯電話とBWAがシェアを2分している状況にある。
 携帯電話カテゴリにおいては、NTTドコモがMVNO事業者向けに対し、MVNO事業者が独自のサービスプランを高い自由度で構成する事が可能な「レイヤー2接続」のメニューを提供している。12年度にはLTE網を利用したレイヤー2接続を開始しており、多くのMVNO事業者が通信量・通信速度・料金・その他付加価値メニューで差別化を図ったサービスを提供している。
 BWAカテゴリでは、主にUQコミュニケーションズが提供するWiMAXサービスが契約回線数を伸ばしている。同サービスは、親会社であるKDDIやISP(インターネットサービスプロバイダ)、家電量販店がMVNO事業者としてサービスを販売する。13年7月に2.5GHz帯の新たな帯域が割り当てられたことを受け、TD-LTE互換の「WiMAX2+サービス」を10月以降に開始すると発表した。当初は下り最大110Mbpsでのサービス開始を想定、来年度には220Mbpsまで高速化する計画だ。現行のWiMAX同様、積極的にMVNO事業者へ回線を提供する方針。

◆MNO(移動体通信キャリア)でもあるMVNOの回線占有率は50%に迫る状況。今後の更なる成長に向け競争環境の整備が必要。 
 12年度末時点の総契約回線数1,037万に占める「MNOでもあるMVNO(KDDI・ソフトバンクモバイルなどの移動体通信キャリアがMVNOとして他の移動体通信キャリアの回線を提供する形態)」の回線占有率は46.4%と、過半数に迫る状況。MVNOユーザーがよりメリットを享受できる市場を形成する為には、MNOでは無いMVNO各社の健全な競争環境を創出する必要性がある。
 特にKDDI・ソフトバンクに関しては他社と比較してMVNO事業者の数が少なくなっており、MVNOの参入障壁は未だ高いと言わざるを得ない。今後はMVNOに対してより積極的な姿勢が求められる。

◆中期的には個人向けSIMカードおよびM2Mを含む法人向けソリューションが市場を牽引
 MM総研では15年度末時点の総契約回線数を2,392万回線と予測した。中期的には、キャリアのサービスと比較して通信量・通信速度・料金・その他付加価値メニューで差別化された個人向けSIMカードの販売が市場を牽引すると考えられる。通信量・通信速度を市場別にマネージメントし、最適な料金プランを顧客に提案できるという自由度の高さは、M2M(機器間通信)向けサービスでもMVNO事業者の優位性が強く発揮できる分野である。将来的にマルチキャリア対応(複数のMNO回線をまとめて提供)が実現すれば、M2Mを含む法人向けソリューションで市場が拡大していくと予想する。

◆ MVNOサービスの認知度は26.2%、利用率は3.1%
 同時に実施したWebアンケートの結果では、6万件の有効回答中、通信キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルなど)以外のMVNO事業者によるデータ通信回線サービス(以下、MVNOサービス)について、「知らない」と回答した人は73.8%だった。一方、「知っているが、利用したことはなく、利用の検討もしていない」との回答が17.9%で、以下、「現在は利用していないが、過去に利用していたことがある」は1.6%、「まだ利用したことはないが、利用を検討している」が3.7%で、「現在利用している」は3.1%という結果となり、MVNOサービスの認知度は26.2%と計算できる。認知度が十分に高まっているとは言えない。

◆利用しているMVNOサービスの種類は「SIMカード単体」が44.9%、「モバイルルーターとのセット」が36.3%
 MVNOサービスの利用者に対しサービスの種類を聞いたところ、「SIMカード単体」が44.9%と最も多く、次いで「モバイルルーターとのセット」が36.3%で続いており、この2種類のパターンで80%を超える結果となっている。「スマートフォン端末とのセット」は9.7%、「タブレット端末とのセット」は5.4%とスマートデバイスとのセット販売はまだ少数派だ。
 これを主要事業者別で比較すると、日本通信、インターネットイニシアティブ(IIJ)、フュージョン・コミュニケーションズ、DTIの4事業者は「SIMカード単体」と回答した人の割合が6割を超えているのに対し、NECビッグローブ、NTTコミュニケーションズの2事業者は「モバイルルーターとのセット」の割合が「SIMカード単体」の割合を上回るなど事業者によって対照的な結果となっている。また、「ほぼスマホ」を販売しているNECビッグローブは「スマートフォンとのセット」が18.8%と比較的高い割合となっている。

◆ MVNOサービスに支払う金額は「月額500円以上1,000円未満」が24.7%と最多
 MVNOサービスに支払う金額は「月額500円以上1,000円未満」が24.7%と最も高く、次いで「月額3,000円以上4,000円未満」が16.8%で続く結果となった。「月額500円以上1,000円未満」の価格帯では、NTTドコモの回線を利用したMVNOサービスで、月額1,000円未満のサービスが今年に入って急増している。
 一方、「月額3,000円以上4,000円未満」の価格帯では、UQコミュニケーションズのWiMAX回線を利用したMVNOサービスの多くが月額3,000円台後半の料金プランを提供している。
 主要事業者別にみると、DTI利用者は「月額500円未満」の利用が72.2%と圧倒的に多い。同社のMVNOサービスは月額490円の「ServersMan SIM LTE 100」が唯一のプランとなっており、同プランの基本サービスのみの利用者が多くを占めている。
 逆に顧客単価が高くなっているのがNECビッグローブだ。「月間1,000円以上2,000円未満」が24.8%、「月間2,000円以上3,000円未満」が21.4%、「月間3,000円以上4,000円未満」が23.9%といずれも主要事業者の中では最も高い。同社のMVNOサービスはモバイルルーターやスマートフォン端末とのセット販売の割合が高い。1,000円以下の料金プランが複数登場し、早くも安値競争に陥っている感もあるMVNO市場のなかで、独自の付加価値で顧客単価を高く保っている同社の戦略は注目に値する。

※レイヤー2接続とは、ユーザー通信を直接MVNO網に収容することで、MVNO事業者が高い自由度でサービス設計する事が可能な接続方式
※BWAはWiMAX(WiMAX2+)およびAXGPサービスを指す

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■アンケート調査概要
1.調査対象  :全国の20代以上の男女
2.回答件数  :2,060件(MVNOサービスの認知度・利用率は60,000件)
※男女比   男性(74%)/女性(26%)
※年代構成  20代(9%)/30代(27%)/40代(33%)/50代以上(31%)
3.調査方法 :Webアンケート
4. 調査期間 :2013年6月10日(月)~6月11日(火)
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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