日米におけるウェアラブル端末の市場展望

――日米消費者調査の結果から

2013年12月25日

■ ウェアラブル端末の知名度は日本27.9%、米国83.4%
■ 期待する企業は日米ともにグーグル、アップル。日本ではソニーも上位に
■ 重視するデザインは日本では周囲に溶け込むもの、米国は個性的なもの
■ 日本の市場規模は2014 年度111 万台、2020 年度に604 万台に拡大すると予想

 MM総研(東京都港区 代表取締役所長:中島洋)は12 月25 日、身に着けるコンピュータ「ウェアラブル端末」について、消費者調査や企業へのインタビューをもとに、日本および米国の市場展望をまとめた。消費者調査の結果、米国は日本よりもウェアラブル端末および各製品の知名度が高かった。さらに、ウェアラブル端末で重要とされるデザイン性について、日本では周囲に溶け込む自然なもの、米国では周囲にアピールできる個性的なものが好まれることが分かった。スマートフォン、タブレット端末に次ぐ「次世代のデバイス」として注目されているウェアラブル端末については、日米の市場環境の違いが浮かび上がった。

 今回の調査はグーグルが開発しているメガネ型端末「Google Glass」など、米国発の動きが活発化する中で、日米の消費者のニーズを比較するために実施。ウェアラブル端末の購入対象者として想定される日米のスマートフォン所有者を対象に、メガネ型端末や腕時計型端末の現状の機能などを説明したうえで、ウェブアンケートを実施した(知名度に関しては説明前に実施)。回答数は日本1,000 人、米国500 人。

■ウェアラブル端末の知名度は日本27.9%、米国83.4%
 調査に当たってはウェアラブル端末を「身に着けることができるコンピュータ」で、「ネットワークに接続できる機器(スマートフォンなど他の通信機器と連携するものも含む)」と定義。ウェアラブル端末の知名度について、「よく知っている」「知っている」「名前は聞いたことがある」「知らない・分からない」の4 段階で尋ね、「よく知っ
ている」「知っている」「名前は聞いたことがある」の合計数値を「知名度」として算出したところ、日本は27.9%、米国は83.4%となり、米国が日本を大きく上回った。
個別の製品についても、グーグルのメガネ型端末「Google Glass」の知名度は日本で49.2%、米国で77.0%。

 ソニーモバイルコミュニケーションズが既に発売している腕時計型端末「SmartWatch」の知名度も日本37.1%、米国70.2%で、個別製品についても米国が高い。「Google Glass」が注目を集めるなど、米国で新たな動きが目立っていることが日米の知名度の差に影響している可能性が高い(データ1)。

■期待する企業は日米ともにグーグル、アップル。日本ではソニーも上位に
 ウェアラブル端末の開発、製品化で期待する企業を複数回答で尋ねたところ、「本命」とされるメガネ型端末については、日本ではグーグル(30.5%)、アップル(29.2%)、ソニー(26.6%)に対し、米国ではグーグル(59.6%)、サムスン(40.0%)、アップル(35.4%)の順だった。日米ともにグーグル、アップルが上位に立っているが、日本ではソニー、米国ではサムスンに対する期待も高い。

 既に各社から端末が発売されている腕時計型については、日本ではソニー(34.7%)、アップル(27.7%)、カシオ(19.8%)、米国ではサムスン(46.4%)、アップル(39.2%)、ソニー(37.4%)の順だった(グーグルについては、現段階の動向を踏まえ、発表済みのメガネ型のみ選択肢に加えた)。

■メガネ型端末の利用シーンは「ルート検索」が日米ともにトップ
 メガネ型端末で利用してみたい機能について、現段階で想定されるものを提示して複数回答で尋ねた結果、「地図を表示してルート検索をしたり、道案内をしたりする」が日本47.2%、米国55.2%で、ともにトップだった。このほか日本では「駅の中で乗り換えの時間だけでなく、場所の案内もしてくれる」(38.9%)、「視線の先にあるものの名称や関連情報が表示される」(30.5%)、米国では「目の前にある風景を撮影して、SNS で共有する」(52.0%)、「自分の求めている商品がある場所まで案内してくれる」(50.2%)が上位だった。日本は利便性に関する項目が上位に来る一方、米国はコミュニケーションに関する項目が比較的高い(データ2)。

 自由回答で、ウェアラブル端末でやってみたいことについて尋ねたところ、日本では、「子供の育児日記をつける」「一日の生活のすべてを録画する」などのライフログの記録や、「食材を見て、どんな料理が作れるかを瞬時に判断してレシピを出してもらう」「会っている人のプロフィールを照会する」など、生活を便利にする使い方が挙げられた。一方、「便利になりすぎると世の中がおかしくなりそう」「自分で調べることや考えることができなくなってしまうようで怖い」といった意見もあった。

■デザインは、日本は周囲に溶け込むもの、米国はアピールできるものを好む傾向
 ウェアラブル端末は日常的に着用するものであるため、ファッション性の高さを重視する好みがある一方、周囲の目を気にせずに使えるものが必要との考えもある。ウェアラブル端末について、「見せびらかしたい」「やや見せびらかしたい」「どちらともいえない」「あまり目立たなくしたい」「目立たなくしたい」の5 段階で尋ねた。
その結果、メガネ型端末について「見せびらかしたい」「やや見せびらかしたい」の合計が日本で13.5%だったのに対し、米国では40.2%だった。腕時計型についても日本は17.8%であるのに対し、米国では42.0%で、米国と比較すると、日本は周囲に溶け込む自然なデザインが好まれることが分かる(データ3)。

■日米ともに情報漏えい・プライバシー侵害が課題に
 ウェアラブル端末は、位置情報や生体情報、画像・動画などを取得することがスマートフォン以上に容易に
なる。スマートフォンでも問題になっている情報漏えいやプライバシー侵害などについて、「不安に感じない」「あまり不安に感じない」「どちらともいえない」「やや不安に感じる」「不安に感じる」の5 段階で尋ねたところ、事業者から個人情報が漏れることに関しては、「不安に感じる」「やや不安に感じる」の合計が、日本では81.2%、米国では69.0%にのぼった。さらに、ウェアラブル端末を利用していない場合でも、端末所有者から盗撮や追跡をされることがありうるが、その不安は日本が82.6%、米国が71.0%で両国とも高く、普及に向けた課題となりそうだ(データ4)。

■業務利用は「ハンズフリー」に期待、導入可能性は運輸、金融業などが高い
 今回の調査対象者のうち会社員、自営業、公務員、専門職を対象に、メガネ型端末の業務利用についても尋ねた(日本634 人、米国279 人)。業務利用のメリットを複数回答で尋ねたところ、日本では「手を使わずに機械の操作ができる」が60.6%で他を大きく上回り、「ハンズフリー」であることへの期待が高いことが分かった。

 一方、米国では、「仲間と連絡が取りやすくなる」が55.2%でトップだった(データ5)。

 また、自らの業種の現場で今後導入の可能性があるかどうかを尋ねたところ、日本では運輸、金融、学校・教育、米国では建設、通信・IT関連、製造の順で高かった。
 業務利用で役に立つ場面を自由回答で質問すると、日本では、「物件を確認するときに、価格や賃料が表示される」、「荷物の伝票読み取りや追跡ができる」、「生徒の情報が画面に出る」、「患者の情報をその場で確認できる」などが挙げられた。現在、製造業ではヘッドマウントディスプレイを活用して、手を使わずにマニュアルを読むことや、作業工程の指示を受けることが実用化されているが、今後は製造業以外でも業務利用が進
んでいくと考えられる。

■2014年度は111 万台、2020 年度に604 万台に拡大すると予想
 消費者調査とウェアラブル端末事業者の動向を踏まえ、市場規模(販売台数)を予想した。現段階では、身体データを収集して健康状態を確認できるリストバンド型の端末や、頭部に装着して周辺を撮影できるウェアラブルカメラと呼ばれる製品が中心だ。2014 年度以降はアップルが開発中とされている腕時計型端末や、グーグルも「Google Glass」を発売することが想定され、16 年度にかけて市場が飛躍的に拡大する可能性が高い。日本の市場規模は2014 年度に111 万台、2020 年度に604 万台に拡大すると予想する(データ6)。

(14年1月7日追記:世界販売台数予測)

(14年4月8日追記:世界101社130製品の装着部位別分類)

 

【ウェアラブル端末の定義】※身に着けることができるコンピュータであり、ネットワークに接続できる機器
(スマートフォンなど他の通信機器と連携するものも含む)

(調査の詳細な分析とCES2014の会場報告を加えたレポート「ウェアラブル端末に関する日米動向調査」を2014年1月30日に発刊予定)

■ウェアラブル端末解説セミナーを開催決定
「ポストスマホの本命か――ウェアラブル端末解説セミナー」
日時:2014年2月19日(水)午後3時~午後4時30分
会場:芝公園フロントタワー2階会議室(東京都港区芝公園2-6-3)
講演者:MM総研代表取締役所長中島洋ほか弊社研究員


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■ 調査概要
1.調査対象:日米のスマートフォン所有者(個人所有)
2.回答件数:日本1,000 人、米国500 人
3. 属性:日米ともに男性50%女性50% 、15~59 歳
4.調査方法:ウェブアンケート
5. 調査期間:2013 年11 月22 日(金)~12 月5 日(木)
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

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