FTTH市場は緩やかな成熟期へ

―ブロードバンド回線事業者の加入件数調査 (11年3月末時点)―

2011年06月08日

■ 震災は、3月のFTTHの純増にも大きな影響を与える
■ ISPではYahoo! BBのFTTHが約70万件の大幅増加
■ FTTHがブロードバンド全体の6割を超える

FTTH加入件数 2,028万件 (11年3月末時点)  243万件の増加 (10年3月末比)
ADSL加入件数 821.5万件 (11年3月末時点)  154.5万件の減少 (10年3月末比)

 MM総研(東京都港区、所長・中島 洋)は6月8日、11年3月末時点でのブロードバンド回線事業者の加入件数を調査し、結果をまとめた。

 FTTH(光接続サービス)の加入件数は2,028万件となり、10年3月末より243万件の増加となった。09年度に比べるとFTTHの年間純増数は39万件少ないが、東日本大震災の影響で回線事業者が営業を自粛したことにより、3月の純増数が大きく落ち込んだことも要因となっている。FTTH事業者間の競争は激化しており、各事業者は解約抑制に向けた取り組みや新規需要の掘り起こしに動いている。ADSLは821万5,000件で10年3月末より154万5,000件減少した。

 ブロードバンド接続サービス(FTTH、ADSL、CATV接続)に占めるFTTHの割合が初めて6割を超えた。


■ FTTH市場、KDDIが順調にシェアを伸ばす

 11年3月末のNTT東西合計の加入件数は1,505万9,000件となり、シェアは合わせて74.3%となった。10年度のNTT東西の年間純増数は180万8,000件となったが、前年度の純増数211万7,000件と比較すると、純増ペースはやや鈍化している模様だ。一方KDDIは順調に加入件数を増やし、徐々にシェアを伸ばしている。

 KDDIグループは、11年3月末190万1,000件(シェア9.4%)で、10年3月末から38万8,000件の増加(シェアは0.9ポイント増加)となった。10年度は、4階建て以上の集合住宅向けにも1Gbpsサービスを開始し、本格的にギガサービスを展開した。KDDIグループでは12年3月末までにFTTH契約数を240万件、年間純増数で約50万件を目標としており、引き続き価格訴求と新規エリア拡大により獲得を増やしていく。

 関西地域を中心に展開するケイ・オプティコムは、11年3月末で118万件となった。順調に契約数を伸ばし、シェアは5.8%となった。10年12月に「eoモバイル WiMAX」を開始し、モバイルブロードバンドサービスの拡充を図った。光ネット、光電話、光テレビおよびモバイルサービスをあわせたクワトロプレイでサービスを一体的に提供する。

 迎え撃つNTTでは、利用者の継続利用を促す施策を積極的に展開。NTT東日本の会員制プログラム「フレッツ光メンバーズクラブ」が、11年2月に150万会員を突破した。1Gbpsサービス「エクスプレスタイプ」の開始(西日本)や、スマートフォン・タブレット端末の普及拡大による宅内外での無線LAN接続ニーズに対応したモバイルWi-Fiルータ「光ポータブル」(東・西)の提供開始など、サービス拡充を進めた。遠隔で問い合わせに対応する「リモートサポートサービス」は、NTT東日本で10年11月に200万契約を突破している。またNTT東日本は、インターネット未利用者やノンPC層を対象にした二段階定額制プラン「フレッツ 光ライト」を6月1日から開始し、光回線ユーザーの裾野を広げる。

 UCOMは、11年3月末で51万2,000件と10年3月末からやや純減だが、一部ブランド名の一新やモバイルサービス、マンション全戸一括ギガ帯域サービスの積極投入で着実に足場を固める。

 今後は各事業者ともユーザーの継続利用や新規顧客開拓に向け、価格やサービス・サポートのより一層の強化を図る。

■ ADSL市場、ソフトバンクBBとイー・アクセスが奮闘

 ADSL回線事業者で首位は、ソフトバンクBBのYahoo! BB ADSL。11年3月末のシェアは、ソフトバンクBBが38.3%、2位のイー・アクセスが23.5%となった。各社とも大幅な純減傾向で、厳しい環境にさらされている。

 イー・アクセスは、10年7月1日付でイー・モバイルを完全子会社化したことで固定通信とモバイル通信の融合を進める。


■ Yahoo! BBが躍進、BIGLOBEが200万件を突破

 ISP事業者のFTTHシェアでは、OCNが10年3月末から46万3,000件の純増。引き続き首位を維持したものの、10年3月末からシェアをわずかに落とした。2位のBIGLOBE は11年3月末で契約数が200万件を突破した。

 ソフトバンクBBは、09年2月から開始した「Yahoo! BB 光 with フレッツ」が11年3月末で93万2,000件となり、10年3月末から69万5,000件の純増と急激な伸びを見せている。引き続き会員獲得に注力する。

 各事業者は、高速モバイルサービス(3G、WiMAX、LTE)へ本腰を入れ始めており、固定と無線の両方を提供することで利用者の利便性を一層高める。また、接続環境設定のサポートサービス拡充でARPU向上を図りつつ、利用者の継続利用に向けたサービスを強化する。

■ ブロードバンド契約者数のうち、FTTHが6割を超える

 11年3月末時点のブロードバンド契約者数は3,310万件となり、回線種別ではADSLが822万件、FTTHが2,028万件、CATVが460万件となった。ブロードバンド契約者数を回線種別比率でみると、ADSLが24.8%、FTTHが61.3%、CATVが13.9%となり、FTTHが固定系ブロードバンド回線で初めて6割を超えた。

 FTTH市場は12年3月末に2,270万件、13年3月末には2,485万件まで拡大し、13年3月末以降のFTTHのブロードバンドに占める割合は7割を超えると予想される。ADSLの減少やFTTHの伸び率鈍化はあるものの、14年3月末にブロードバンドサービス全体で3,630万件と契約数は伸びるものと予想される。

 

 


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